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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第238話 真琴の策略
しおりを挟む真琴が自分の飲み物に細工をしているなんてことは疑いもせず、ルアは皆とともに料理を楽しみながら飲み物を飲んでいた。
そして一先ずは何事もなく昼食を食べ終えたルア達は自分達の部屋へと一度戻り、少しゆっくりすることになった。
「では、夜まで各々ゆっくりするのだな。」
「んふふ、じゃあねぇ~ルアくん?」
怪しげに笑う真琴達と別れ、ロレットとともに部屋へと戻ったルア。その後、ロレットと何気ない会話をしながらゆったりと過ごしていたルアだったが、次第に彼の体に異変が現れる。
「はっ……はっ……。」
「ん?ルア、どうした?少し息が荒いようだが……。」
「あ、だ、大丈夫……です。ちょっと長風呂しちゃったせいだと思います。」
「そうか、少しベッドで横になったらどうだ?」
「ちょ、ちょっと外で風にあたって来ます。」
「あ、あぁ……。」
自分の中で突如として沸き上がる何かの衝動を抑えるために、ルアは部屋を飛び出した。
ルアが部屋を飛び出したあと、真琴が部屋から出てくる。そして走り去ったルアの後ろ姿を見て彼女は妖艶に笑う。
「んふふ……効果抜群。ばっちり効いとるみたいやねぇ~。」
チラリと彼女が部屋の中を振り返ると、その部屋の中では酔っ払った東雲が大の字になって眠っていた。
「東雲はんもぐっすりやし、今が千載一遇のチャ~ンス♪」
東雲が起きないようにそっと部屋の扉を閉めると、真琴は鼻唄を歌いながらルアの後を追うのだった。
旅館の外へと一人走って出たルアは、胸をきゅっと手で抑えて荒く息を吐く。
「な、なんなんだろう……これ。胸が熱い?」
外の風に当たっても一向にルアの胸の奥から沸き上がる熱は収まる気配がない。
この旅館へと渡ってきた橋の欄干に両手を置いて困惑するルア。そんな彼の背後から真琴が抱き付く。
「ルアくんつかま~えたっ♪」
「わぁっ!?」
もにゅん……とルアの後頭部に真琴の柔らかい胸が押し当てられる。そして胸の間にぎゅうっと挟み込まれた。
「んむっ!!ま、真琴……さん?」
「んふふ、ルアくんこないなとこで一人で何しとるん?」
「ふぁ……あぅ。」
胸の谷間に挟み込まれたルアが呼吸をすると、何とも言えない甘い香りがルアの鼻腔を満たす。そしてそれとともにルアの胸の奥で沸き上がる熱がより一層熱くなっていく。
とろん……と蕩けた表情になったルアを眺めて真琴は満足そうに笑う。
「あらら、どうしたん?そんなに蕩けた表情浮かべて。」
「ま、真琴さん……こ、これダメです!!」
「んん~?何がダメなんやろ?」
必死に訴えかけるルアに、悪戯に笑う真琴。まさか彼女が自分の体の異変を引き起こした犯人だとはルアが知る由はない。
モゾモゾと真琴の胸の間で抜け出そうと必死に動くルアに、真琴はわざとらしく何かに気が付いたような反応をする。
「あぁ!!あてわかったかもしれんねぇ~。」
「ぷあっ!?」
スッ……とルアのことを一度解放すると、真琴は今度はルアを背後からではなく正面から抱き締めた。
「んむっ……ふぅ~……。」
「んふふ、お風呂に入った後やからえぇ匂いする?ルアくん息が荒くなっとるよ?」
「ま、真琴さんっ!!」
「やんっ♪」
胸の奥で沸き上がった衝動のまま、ルアは真琴のことを押し倒す。当の真琴は自分から転がるように倒されたため、怪我はない。
そして自分のことを押し倒したルアのことを見て妖艶に笑う真琴は彼に向かって問いかける。
「あてのこと押し倒して、なにするつもりなんかな~?」
「あわ……わっ、ご、ごめんなさい~!!」
「あっ!?」
真琴のことを押し倒してしまったことで、ルアの心の善意が沸き上がった感情に打ち勝ち、一瞬彼は正気に戻ると、真琴に謝り顔を真っ赤にして旅館の中へと戻っていく。
その姿を見て真琴は残念そうに言葉を漏らした。
「あちゃ~、失敗やねぇ~。ちょっと薄めすぎたのが悪かったんやろか?」
真琴はゆっくりと立ち上がると、ルアに飲ませた液体を取り出した。
そんな彼女の上から声が響く。
「やっぱり最初に仕掛けたのは真琴ちゃんだったかぁ~。」
「ん?ミリアはんどすか~。見ての通り失敗どす~。」
「強い媚薬をルアくんに飲ませるって発想はよかったと思うよ~?実際結構発情してたみたいだし?」
「ほんでもまさかあそこでルアくんが正気に戻るのは予想しとらんかったどす~。」
「ルアくんは良い子だからね~。少しでも悪いことしたらって思ったら正気に戻っちゃうんだよ。」
「なかなか一筋縄ではいかへんなぁ~。」
「まぁ、簡単に堕ちるよりも難しいほうがいいんじゃん?そのぶん堕ちたときの反応が楽しみだし。じゃあ次は私が仕掛けようかなぁ~。」
ルアを巡る彼女たちの仕掛けは、まだまだ続きそうだ。
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