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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第215話 エルフの集落
しおりを挟む由良の薬を求めてルアが足を踏み入れた集落は、まるで自然と共存しているかのような集落だった。無駄に木を切り倒したりもせず、多くの家はツリーハウスのように木の上に作られている。
そんな集落の中で暮らしているのは、ここに連れてきてくれた彼女のようにさらりと伸びた金髪と、ピンととがった長い耳の人達。つまるところエルフという種族の集落だったのだ。
エルフは昔から薬を作る技術は秀でていて、エルフにしか作ることのできないと言われる薬も存在しているらしい。
そんな噂を聞き付けたルアは遠路はるばるこのエルフの集落を目指してやってきたということだ。ここになら由良のことを回復させる薬があると信じて。
「さぁここが私達エルフの集落だよ。自然に囲まれてていい場所でしょ?」
「はいっ!!」
「うんうん、素直な返事が聞けて嬉しいよ。本当ならいろんなところを案内してあげたいところなんだけど、お母さんの薬を探しに来たんだもんね。なら、この集落で一番腕のいい薬師のとこに早速いこっか。」
「お願いします。」
彼女に手を引かれ、エルフの集落を歩いて、彼女曰くこの集落で最も腕の良いという薬師のところへと向かうルア。
そして村の中心にある大きな大木の後ろ側に回り込むと、そこには小さな家があった。
「あそこの家に良い薬師がいるの。私の友達なんだ。」
彼女はその家の扉をコンコンとノックすると、返事を待つことなく扉を開けた。
「えっ?えっ!?は、入っていいんですか?」
「いいのいいの~、どうせノックしても出てこないからね~。」
そして彼女とともに中に入ると、まるで病院の中のよな医薬品の匂いが部屋中に漂っていた。しかしその中にどこかハーブのようなさわやかな香りも混じっている。
ルアは前世から病院が嫌いだったためこの匂いにあまり良い印象はないらしく、少し顔をしかめている。
そんな彼の前をずんずんと歩く彼女は、何を思ったのかリビングのような場所に敷いてあったカーペットを思いっきり引っぺがした。すると、地下へと続く入り口のようなものが姿を現した。
「まぁ、上にいないってことは下にいるわよね。」
重々しい地下への入り口をガコンという音を立てて開けると彼女は迷いなく中へと足を踏み入れた。ルアは少しおどおどしながらも彼女の後に続いていくと、階段の下に光が見えた。
「あ、やっぱり明かりが灯ってる。」
階段を下り終わると目の前にはたくさんの植物などが棚に並べられており、その一番奥には大きな机の前に一人のエルフの女性が座っていた。
「カリン!!あんたにお客さんよ。」
「ん?ミミル?いつ来たの?」
「今来たばっかよ。家の鍵も開けっぱなしだったし?」
「あ、忘れてた。」
「まったくあんたそういう抜けてるとこは昔から変わんないわよね。」
「そんなに褒められても困る。」
「ほめてないっ!!それよりも、あんたにお客さんが来てるのっ!!この子の話を聞いてあげてよ。」
「ん~?」
そしてルアはカリンと呼ばれたエルフの女性と目が合った。
「あれ、子供なの?私に何の用事で来たの~?」
「えっと、お母さんの薬を作ってほしくて来たんです。」
「おぉ~……親孝行。いい子だね。それで、お母さんはどんな状態なの?」
「えっと多分魔力の使い過ぎと、少し精神的にも疲れてるみたいで、寝たきりになっちゃったんです。」
「ふむふむ……なるほど~。」
ルアへの問診で得た情報を、カリンはさらさらと慣れた手つきでメモを取っていく。そんな彼女にミミルが声をかけた。
「ねぇ、あんたなら作れるでしょ?」
「作れないことはない。でも魔力の浪費で傷ついた魔力の器を治すにはちょっと珍しい薬草が必要。」
「無いの?」
「無い。でも今の時期なら生えてる場所知ってる。」
「ならそれをとってくればいいってことよね。」
「うん。他の症状を治せる材料はある。だからそれだけあればいい。」
「場所は?」
「森の泉の洞窟の中。真っ白な花だからすぐわかる。」
「わかった。それじゃあ行ってくるわ。」
そうしてミミルが向かおうとしたとき、ルアが声を上げた。
「あ、あのボクも一緒に行きたいです!!」
「えっ!?」
「お母さんを治す薬に少しでも協力したいんです。」
ルアがそう熱く語ると、ミミルは目頭をつまんで大きくため息を吐いた後、ルアの手を取った。
「まったくもぅ、本当にお母さん想いなんだから。いい?私から離れちゃダメだからね?」
「はいっ!!」
そして二人は、森の湖へと向かうことになったのだった。
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