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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第187話 東雲とルシファー
しおりを挟むぺちぺち…………。
朝の日差しが射し込んでいるルアの部屋にそんな音が響く。
ぺちぺちぺちぺち…………。
「んぅ……んん……。」
ぺちぺちぺちぺち……………むぎゅっ!!
「ふむっ!?」
突然鼻をつままれ、息ができなくなったルアは驚いて目を覚ました。すると、不機嫌そうな表情を浮かべた東雲が彼の目に飛び込んでくる。
「ようやく起きたか。」
「うぅん……なんですか東雲さん……。」
「なんですか……ではないだろう?妾が寝ているというのに、体の至るところをまさぐりおって。」
「えっ……。」
どうやらルアは知らず知らずの間に、東雲のことをモフッてしまっていたようだ。その事に東雲は機嫌を悪くしているらしい。
「…………触るのならもっと大胆に触れ。」
「えっ、い、今なんて……。」
「なんでもないっ!!それよりも……そこのルシファーとやらっ!!」
ルアはボソリと小さな声で呟いた東雲の言葉を聞き逃し、聞き返すが、彼女は強引に話を打ち切るとルアを抱いているルシファーに向かって指を突きつけた。
「朝からお元気ですね。私に何か?」
「貴様……昨日言ったことを忘れてはいないだろうな?今日という今日は妾と戦ってもらうぞ。」
「フフフ、もちろん良いですよ?ルア様の一日の行動は概ね記憶しましたからね。」
「ならば早速表に行くぞ。時間は無駄にしたくない。」
そう言って早々に部屋の外へと出ようとした東雲にルシファーが待ったをかけた。
「お待ち下さい。……まさかとは思いますが、あなた一人で私に挑むつもり……ですか?」
「それになにか問題があるか?」
「…………私としては、皆様同時に相手をした方が手間が省けて楽なのですが……。」
そうルシファーがポツリと呟いたその瞬間、東雲から怒気の混じった濃く禍々しい魔力が放たれる。
「妾一人では相手にならん……そう言いたいのか?」
「端的に言えばそういうことですね。」
東雲の魔力に怯む様子すら見せず、ルシファーは淡々と言う。
「これでも……かっ!!」
怒りが頂点に達した東雲はありったけの魔力を凝縮させた攻撃をルシファーへと向かって放った……。
しかし……。
「こんな狭いところで、こんなものを放っては危ないですよ?」
「っ!?」
東雲が放った攻撃は、ルシファーが指を軽く当てただけで跡形もなく消えてしまった。
「ルア様、お怪我はありませんか?」
「は、はい……だ、大丈夫です。」
「それは良かったです。」
ルアの無事を確かめると、ルシファーはゆっくりとベッドから立ち上がり、東雲へと向かって歩みを進めた。
「ここではルア様を巻き込んでしまいます。多少手間ではありますが……あなたのお望み通り、戦って差し上げましょう。」
「っ!!何を………………。」
東雲へと歩み寄ったルシファーが翼を広げると、次の瞬間にはルアの目の前から二人の姿が消えた。
◇
消えた二人はというと……。
「……ここは。」
突然移動させられたことに戸惑いながらも東雲は辺りを見渡して状況を確認する。
そんな彼女の上からルシファーの声が響いた。
「この世界で命を感じない場所に転移しました。ここならばあなたも……私も思う存分戦えますからね。」
そう呟きながらルシファーはゆっくりと東雲の前へと降り立った。
「ここはロレットの城からだいぶ離れているようだが……ルアのことはいいのか?」
「フフフ、問題ありません。たとえルア様と私が世界の対極にいたとしても……一瞬でルア様のもとへと行くことができますから。」
「……そうか。」
「ですから何も心配せず、全力で向かってきてください。……あぁ!!でもルア様の身に危険が迫っていましたらすぐにここを離れますのでご容赦を。」
「ふん!!いつまでそういう思考を続けられるか見物だな。さぞかし強いであろう元七大天使様の実力を見せてもらうか。」
「フフフ、間違えてはいけませんよ?実力を見るのは私なのですから。」
臨戦態勢に入る東雲に、ルシファーは妖しく笑うのだった。
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