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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第173話 メタモルフォーゼの可能性③

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「メタモルフォーゼの重ね掛け……なんで今までも思いつかなかったんだろ。そんなことができるならもっとボクは強くなれる!!」

 リリィの言葉で新たなるヒントを得たルアは早速それを試すことにした。

「このスライムにメタモルフォーゼした状態で……さっきのハーピーに変身するっ!!メタモル……フォーゼッ!!」

 スライムに変化した状態でさらにルアは先ほどメタモルフォーゼしたハーピーのことを強く思い浮かべた。すると彼の体の中で二つの暖かい光が混ざり合うような不思議な感覚が沸き起こる。それと同時にルアの体が再び眩い光に包まれた。
 そして再びルアが姿を現すと、彼の体からはハーピー特有の大きな翼が生えていた。その姿にリリィは思わず首をかしげる。

「あれ?ハーピー……だけ?失敗?」

 そう問いかけたリリィにルアは首を横に振った。

「うぅん!!ちゃんと成功してるみたいだよ。ほら!!」

 ルアがリリィに向かって手をかざすと、ルアの手がどんどん半透明になり透き通っていく。これはスライムの特性だ。今のルアはハーピーとスライム両方の特性を持った体になったのだ。

「ちゃんと空も飛べるみたいだし、大成功だよ!!ありがとうリリィ、さっきのヒントがなかったら気づけなかったよ。」

「リリィ……ルアの役に立った?……嬉しい。」

 リリィは少し表情を赤らめながら嬉しそうな仕草を見せた。

「すごい……すごい!!これならいろんなことができそう。」

 新たな可能性を見出だしてルアは興奮気味だ。

 しかし、そんな風に喜んでいるのも束の間……あっという間にルアのメタモルフォーゼが解けてしまう。

「あっ!?もう解けちゃった……。」

「ちょっと……短い?」

「う~ん、何回か試してみないとわかんないや。いろんなやつを試していこう!!」

 そうしてルアは図鑑に描かれている魔物娘をもとに、メタモルフォーゼの重ね掛けを試していく。

 幾度もそれを繰り返しているうちにわかったことがいくつかある。

 一つは、同時にメタモルフォーゼできるのは二種類までということ。
 次に、メタモルフォーゼの重ね掛けは大幅なパワーアップができる代わりに、持続時間が短いこと。
 そして最後に一度重ね掛けをしたあとは何分間かメタモルフォーゼができなくなるということだ。

 以上の三点を踏まえた上でルアはある結論を出した。

「う~ん……使い方によっては凄い天使にも対抗できるようになるかもしれないけど、使いどころを間違ったら大変って感じかな。」

「じゃあルアはもうそれ……使わない?」

「わかんない……。普通のメタモルフォーゼじゃ勝てない天使が出てきたら使うしかないかも。でもできればそんな天使には来てほしくないなぁ。」

 そう言ってルアは苦笑いを浮かべる。

「平和が……一番。」

「そっ、誰も傷付かないしね。」

 ポツリと呟いたリリィの言葉にルアが頷くと、次に彼女は思いもよらない問いかけを投げ掛けてきた。

「……ルアは天使と仲良くなりたい?」

「えっ?」

 思いもよらない問いかけにルアは思わず固まってしまう。

「そ、それって……どういうこと?」

「だから……もし、天使と仲良くできたら……仲良くなりたい?」

「………………。」

 リリィのその問いかけにルアは暫くうつむき、思考を巡らせた。

(天使と仲良く……なんて考えたこともなかったかも。でも、一番平和で理想的な解決の方法だよね。ただ……この世界の人達と天使って水と油みたいなものだし、混ざり合うなんて現実的じゃない。…………でも。)

 ルアは暫くうつむいた後、リリィの頭に手をのせながら言った。

「……天使にもリリィと同じ考えの人がいればいいのにね。ボクもできれば戦いたくなんてないし……ね。」

 ポツリとルアは心の奥底に仕舞っていた本音をポロリと溢す。
 そして一時、部屋の中に静寂が訪れると、部屋の外の方から騒がしい声が聞こえてきた。

「あ゛~~~っ!!疲れたぁ~っ!!」

「あの女神……ホンマにえげつないことするわぁ~。体がもたんどす~。」

「あ、あはは……私もカラッカラに干からびちゃうところだったよね。」

 どうやらアルの修行からクロロ達が帰ってきたようだ。会話を聞くに余程ツラい修行をしてきたようだ。

「クロロさん達帰ってきたんだ。」

「ルアも今日はこのぐらいに……する?」

「うん、続きはまた明日やるよ。今日は付き合ってくれてありがとねリリィ。」

「ふふ♪リリィいつでも付き合う。」

 付きっきりでそばで見守ってくれたリリィの頭を撫で、ルアはお礼を告げるのだった。
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