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第二章 呪われた運命

第144話 ナッツを独占するモノ

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 エルフの門番に案内され、森の奥深くへとやって来た東雲とルア。しかし、二人を案内していたエルフはある場所まで二人のことを案内すると歩みを止めた。

「私が案内できるのはここまでだ。ここから先はヤツの縄張りになっている。」

「ということは、この先に魔物とナッツの木がある……という認識でいいか?」

「その通りだ。もし魔物を倒せたのなら……好きなだけナッツは収穫して構わない。それが一番の報酬だろう?」

「くくくくく、わかっているではないか。それで構わん。さぁ、ルア……一つ魔物退治と洒落こむぞ。」

「は、はいっ!」

「私はここで待っているぞ。」

 そして東雲とルアの二人はさらに森の奥へと足を踏み入れる。すると、徐々に二人の周りに生えている木々に変化が現れ、木の実のようなものがたくさん実っている木がちらほら見え始めた。

「あ、東雲さん、あれがナッツの木ですよ。」

「む、あれがそうか……。一見ドングリにしか見えないが……あれはうまいのか?」

「生だと少しエグ味があるかもしれないですけど、ちゃんとローストしてあげれば美味しく食べられると思います。」

「なるほどな。その辺はルアに任せる。……それとルア、お前はそこの木の後ろに隠れていろ。」

「へっ?」

「どうやらお出ましだ。」

 ギロリと東雲が鋭い眼光を向けた先には、全身が黒い体毛に覆われた狼のような魔物が落ちているナッツを殻ごとバキバキと頬張りながら、じっと東雲達の方を睨み付けていた。

「生意気にナッツをバリバリ食いおって……貴様に胸は必要ないだろうに。」

 やれやれと首を振りながら東雲は魔物へと近づく。すると、魔物はナッツを食べるのを止め、グルル……と喉をならして威嚇を始めた。

「それにしても見たことのない魔物だ。新種か?……まぁそんなことはどうでもいい。妾のナッツを独占する貴様は……。」

 ぶわりと九つの尻尾を広げた東雲は圧倒的な魔力を周囲に広げた。まともな者が浴びれば動けなくなるような圧倒的密度と濃度の魔力……しかし、その魔物はその魔力の中をゆっくりと東雲へと向かって歩みを進める。

「……ほぅ?妾の魔力を浴びて動けるか……なかなか強いな。」

 ニヤリと笑う東雲に、魔物は勢いよく飛びかかり、鋭い牙で喉元を食いちぎろうとする。

「グルアァァァァァッ!!」

「甘いわ、獣が……。」

 東雲は飛びかかってきた魔物の攻撃を避けようとすらせず、唇に人差し指を当てた。すると、彼女の前に魔力の壁が構築され魔物の攻撃を防いだ。

「妾の魔力を前にして動くことのできるその力、胆力……称賛に値する。だが……。」

 東雲が片手を横に振り払うと、魔物は何かに弾かれたように大きく弾き飛ばされた。

「先ほども言ったように……妾のナッツを散々食い散らかし、独占した貴様の罪は重い。」
 
 そう東雲が呟くと、弾き飛ばされた魔物の周りを取り囲むように黒い炎が灯る。

「さぁ……罪の精算の時間だ。」

 東雲がきゅっ……と手を握り込むと、黒い炎が一斉に魔物へと集束し、大きな炎に成り変わった。

 そして炎が消える頃には、狼のような魔物も灰すら残らず消えていた。

「くくくくく、他愛もない。」

 クスリと東雲は笑うと、先ほど魔物が食べていた木の実を拾い上げ、殻を剥き、中に詰まっていた実の部分を口の中へと放り込んだ。

「んっ……ほのかに甘い。だが、ルアの言っていた通りエグ味がある。こんなものが本当に胸を大きくするのか?」

 生のナッツを味わい、お世辞にも美味しいとは言えない味に東雲は顔をしかめる。

「いくら胸を大きくする為とはいえ、こんな味のものを食べ続けるのはなかなか苦行だな。」

 再び足元に落ちていた殻つきのナッツを拾い上げた東雲は、しかめっ面でそれを眺めていた。そんな彼女のもとにルアが歩み寄ってきた。

「東雲さん、大丈夫ですか?」

「あの程度の魔物に遅れをとるわけなかろう。……それよりもだ、ルア……こいつが胸を大きくするナッツで間違いないのだな?」

「はい、間違いないです。」

「わかった。」

 ルアに確認をとった東雲はパンと手を合わせると、辺り一面に魔力が張り巡らされる。そして地面に落ちていたナッツのみが宙に浮く。
 東雲はそれを袋に詰めていく。そして数分後、東雲の足元にはパンパンになった革袋が大量に並べられていた。

「落ちていたナッツはこんなものか。」

「凄いたくさんとれましたね。これ全部食べるんですか?」

「本当は全て独占したいところだが……いくつかはエルフどもに分けてやるとしよう。ここで貸しを作っておけば融通が利きやすくなるだろうからな。」

 くつくつと東雲は笑う。

「さぁ、帰るぞルア。一刻も早くとやらをして美味しいナッツに仕上げるのだ!!」

「わっ!?わっ!?ま、待ってください東雲さん!!」

 いつになく上機嫌で東雲は歩きだしたのだった。
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