もんむすッ！めたもるふぉ～ぜ☆～世界に♂はボク一人！？～

第二章 呪われた運命

第141話 惹かれ合う者達

　次の日の明朝……。ルアの部屋の中では何やら変な物音がしていた。

　ペチペチ……ペチペチ。

「おい、ルア。朝だ起きろ。」

　ペチペチ……ペチペチ。

　東雲は気持ち良さそうに眠っているルアの頬っぺたを肉球で軽く叩き、起こそうとする。

「ん……んん？ふぁ……あれ東雲さん？まだ朝早いですよ？」

　大きなあくびをしながらベッドから体を起こしたルアは、重たい瞼を擦りながら言った。

「寝ている暇などないぞ。早速ナッツとやらを買いに行くのだ。」

「こ、こんな朝早くから行くんですか！？まだお店開いてないと思うんですけど……。」

「何を言っている、今日向かうのはエルフの集落だぞ。」

「エルフの集落……ですか？」

「エルフ達が毎朝開いている朝市ならば、大豆もリンゴも、そのナッツとやらもあるだろう。」

　東雲曰く、エルフ達は毎朝とれたての果実や野菜などを売る市場を開いているのだとか。どうやらその市場に向かうつもりらしい。

「その朝市って……ボクらが入っても大丈夫なんですか？」

「当然だ。むしろ歓迎されるだろう。」

「意外と社交的なんですねエルフの人達って……。」

「お前はエルフにどんな偏見を抱いていたのだ？」

「あ、いや……何て言うか、その……もうちょっと閉鎖的で縄張り意識が強いのかな～って思ってました。」

「いつの時代のエルフを思い浮かべておるのだ、まったく……。」

　ルアの偏見に、東雲は思わずため息を吐いた。

「閉鎖的な種族ほど淘汰されていく……それが今の時代だ。まぁ、他の種族と比べればエルフは多少閉鎖的ではあるがな。」

「へぇ……そうなんですね。」

「それよりも、早く準備しろ。急がねば朝市が始まってしまうぞ。」

「は、はい～っ！！」

　東雲に急かされながら、ルアは急いで身支度を整える。そして準備万端になったところで東雲は人の姿へと変化した。

「さぁ、向かうぞ。エルフの集落へ！！」

　そして意気揚々と、東雲が部屋のドアにてをかけ勢いよく開けたそのときだった。

　ゴンッ！！

「あいに゛ゃあっ！？」

　ドアが何かにぶつかる鈍い音と共に、聞き覚えのある短い悲鳴が聞こえてきた。

「…………。」

　東雲がそっとドアの向こう側を覗くと、そこには頭に大きなたんこぶを作ったクロロがいた。
　それを見た東雲は、そっとドアを閉じ腕を組んだ。

（不味いことになったぞ。何でクロロがこの時間に起きている！？そして何で妾達とちょうどよくぶつかるのだ！！）

「あ、あの……東雲さん？」

「むっ！？な、なんだ？」

「今ドアの向こうでクロロさんの声が聞こえたような気がしたんですけど……。」

「き、気のせいではないか？クロロがこんな朝早くに起きているわけが…………。」

　必死に現実逃避しようとした東雲だったが、わずかに開いたドアの隙間にクロロが手を伸ばし、声をあげた。

「うぅ～……東雲さん！！何でドアぶつけてきたのに無視するんですかっ！！」

「お、おぉ……く、クロロ。す、すまなかったな。今度からは気を付けるぞ。で、では妾達は用事があるのでなっ！失礼するぞ！」

　そして半ば強引に東雲がルアの手を引いて、駆け出そうとした時、クロロが逃がすまいともう片方のルアの手を掴んだ。

「ちょっと待ってください……こ～んな朝早くからルアちゃんと二人でどこに行くんですか？」

　朝に弱い東雲が、明朝からルアと出掛けようとしていることに違和感を抱いた様子のクロロ。そして東雲はその問いかけをされた途端、顔から冷や汗がだらだらと流れ始める。

「しゅ、修練だ。」

「…………ホントですかぁ～？な～んか怪しいなぁ～？こういう時はルアちゃんに聞くのが一番だよね。ねぇルアちゃん、どこ行くの？」

　にこやかに微笑みながらクロロはルアへと質問の対象を変えた。

　ルアはチラリと東雲の方に視線を向ける。すると、まるで苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる東雲の姿が目に飛び込んできた。

「え、えっと……修行……です。」

「ふぅん？」

　東雲と話を合わせようと思いそう答えたルア。しかし、クロロは彼のあ・る・仕・草・を見逃さなかった。

「やっぱりルアちゃんは優しいね～。」

「えっ……？」

　ポンポンとルアの頭を撫でると、今度は東雲へとクロロは詰め寄った。

「東雲さん、ルアちゃんは修行じゃないって言ってますけど？」

「な、なにっ！？今、ルアも修行と言っていたではないか！！」

「東雲さんは知らないかもですけど～、ルアちゃんは嘘をつくときに、こうやってほっぺをカリカリってする癖があるんです。」

　クロロはチラリとルアの方を見ながら、その仕草をやって見せた。

「くっ……クロロ、貴様……。」

「さぁ、どこに行くんですか？答えてくださいよ東雲さん？」

（チッ……行き先程度なら教えてやってもいいか？妾の本当の目的さえ知られなければ良いのだ。）

　心のなかでそう高をくくった東雲は、諦めてどこへ行くのかクロロへと打ち明けたのだった。