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第一章 転生そして成長
第57話 山頂へ向けて
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一行が大霊山を登っていると、由良の耳がある音を捉えてピコンとセンサーのように反応した。
「む?この先から太鼓の音がする。」
「そろそろ中腹だからな。大狸の下っ端どもの住処に近付いてきているのだ。」
「さっきお酒で勝負を挑んできた狸さん達の家ってこと?」
「うむ、その通りだ。」
東雲は一つ頷くと、二人にこの大霊山という山について語り始めた。
「この大霊山には三つの集落があってな。まず、下っ端狸が住む中腹の集落。次に化け狸が住む山頂の真下の集落。そして最後、山頂には大狸のみが住むことを許されている家がある。」
「ふぇ~……ちなみに下っ端狸さんと、化け狸さんって何が違うの?」
「根本的にはもちろん同じ種族ではあるが、狸どもにも我ら狐と同じように階級というものが存在する。我らは尻尾の数で位を決めるが、やつらは酒の強さと化かしの巧さで位が決まるのだ。」
「あ、そこでもお酒の強さって関わってくるんですね。」
東雲の下で、少し呆れたようにルアは言った。
「もちろんだ。あやつらが作る酒というのは、巷では霊酒とも呼ばれていてな。酒精とともに、魔力も込められている。故に酒に強い……ということは内に秘める魔力の器も大きいということなのだ。」
「ほぇ~……。」
「…………ルア、お前本当にわかって聞いていたか?ん?」
ぽけ~っとしながら反応したルアに、少しムッとした様子の東雲は、ペチペチとルアの頭を肉球の付いた前足で叩く。
「だ、大丈夫ですよ。ちゃんとわかってます!!」
「どうだか……。由良は今の説明でわかっただろう?」
「もちろんですじゃ。」
「まぁ、今回はルアが活躍する場面はなさそうだから。お前がわかっていればそれでいい。」
「いきなり戦力外通告!?」
辛辣な東雲の言葉に思わずルアは、悲しそうな表情を浮かべた。まさに頭の上から擬音でガーン……と擬音が聞こえてきそうだ。
しかし、すぐに東雲にルアは反論した。
「ぼ、ボクだって何か絶対役に立てるはずですっ!」
「ふ、そんなに必死になるな。妾を乗せて運んでいる……ということだけでもしっかりと役に立っている。……っと、さて下っ端の狸どもに用事はない。とっととこの山の頂上へと向かうのだ。」
そしてルア達は、下っ端の狸娘達に見付からないように進み、更に上へと歩みを進めた。
中腹にあった集落を抜けると、辺りに深い霧が漂い始めた。
「すごい霧……ま、前が見えない。」
「霧が深くなるのは、山頂に近付いてきている証拠だ。ここから先は化け狸どもの住処に近付いていくから、兎に角集中力は切らさぬようにな。」
「しかし、この霧の中を進むのは少し危険ではないですじゃ?この濃さの霧があると、どこから襲われるか…………。」
ぴったりとルアのとなりを歩く由良が不安そうに言った。
「狸どもは商いにおいては信用ならんが、不意打ちなどそういう類いの攻撃はしてくることはないぞ?」
「何でそう言い切れますのじゃ?」
「妾の知っている大狸は、そういうのが嫌いだからだ。あやつは真っ向からぶつかり合うのが好きなやつなのだ。……故に妾の悪い癖が表に出てしまうのよな。くくくくく……♪」
過去に自分と渡り合った大狸のことを、少し自慢げに……そして楽しそうに東雲は話す。
その話を聞いて、ポツリと由良が溢した。
「なんだかロレットみたいな性格なのですな。」
「う~む、確かにまぁ……真っ直ぐで向こう見ずな所は同じかもしれん。だが………………ん?」
東雲が話している途中、一行の前に大きな締め縄で飾りが施された石が見えてきた。そしてその石の上には、なにやら人影が見える。
「くくくくく、どうやら流石に一筋縄では通してくれぬらしい。」
「えっ?」
そう東雲がくつくつと笑うと、石の上にいた人影がこちらにゆっくりと近づいてくる。
「ここまで迷わずに歩いてくるなんて……まぐれじゃないね?君達いったい何者さ?報告ではめっぽう酒に強い狐がいるとは聞いてたけどさ。」
こちらに質問を投げ掛けながら現れたのは、先ほどルア達の前に現れた狸娘とは明らかに雰囲気が違う狸娘だった。
「ただ、この山に迷いこんだ……ってわけじゃなさそうだね。目的はわからないけど、今ここで回れ右して帰るってなら見逃してあげるけど?どうする?」
「「あ゛?」」
そのときルアは確かに東雲と由良の方からブチッ……と何かが切れるような音を耳にした。
そして東雲はルアの頭の上から音もなく飛び降りると、一瞬で人の姿に化け狸娘に詰め寄った。
「たかが化け狸風情が、妾を愚弄するとはいい度胸だな?」
「ふふん、化け狐なんかに負けな…………ってあれれっ!?あたしの酒がないっ!?」
ひどく動揺する化け狸娘に、にんまりと笑みを浮かべた東雲が更に詰め寄る。
「探し物はこれか?」
東雲は彼女の目の前で瓢箪に入ったお酒をぷらぷらと揺らしてみせる。
「あっ!?そ、それあたしの…………むぎゅっ!?」
そして東雲は彼女の頬を鷲掴みにすると、ゆっくりと口へと向けて瓢箪を近付けていく。
「くくくくく、なぁに……どうせ飲むのだろう?なら妾が注いでやる。遠慮な~く飲み干すがいい。」
「へぅぁっ!?た、たひゅけ……むぐっ…………ん~~~っ!?!?」
霧が立ち込めるその場所にくぐもった化け狸娘の悲鳴がしばらくの間響き渡った。
「む?この先から太鼓の音がする。」
「そろそろ中腹だからな。大狸の下っ端どもの住処に近付いてきているのだ。」
「さっきお酒で勝負を挑んできた狸さん達の家ってこと?」
「うむ、その通りだ。」
東雲は一つ頷くと、二人にこの大霊山という山について語り始めた。
「この大霊山には三つの集落があってな。まず、下っ端狸が住む中腹の集落。次に化け狸が住む山頂の真下の集落。そして最後、山頂には大狸のみが住むことを許されている家がある。」
「ふぇ~……ちなみに下っ端狸さんと、化け狸さんって何が違うの?」
「根本的にはもちろん同じ種族ではあるが、狸どもにも我ら狐と同じように階級というものが存在する。我らは尻尾の数で位を決めるが、やつらは酒の強さと化かしの巧さで位が決まるのだ。」
「あ、そこでもお酒の強さって関わってくるんですね。」
東雲の下で、少し呆れたようにルアは言った。
「もちろんだ。あやつらが作る酒というのは、巷では霊酒とも呼ばれていてな。酒精とともに、魔力も込められている。故に酒に強い……ということは内に秘める魔力の器も大きいということなのだ。」
「ほぇ~……。」
「…………ルア、お前本当にわかって聞いていたか?ん?」
ぽけ~っとしながら反応したルアに、少しムッとした様子の東雲は、ペチペチとルアの頭を肉球の付いた前足で叩く。
「だ、大丈夫ですよ。ちゃんとわかってます!!」
「どうだか……。由良は今の説明でわかっただろう?」
「もちろんですじゃ。」
「まぁ、今回はルアが活躍する場面はなさそうだから。お前がわかっていればそれでいい。」
「いきなり戦力外通告!?」
辛辣な東雲の言葉に思わずルアは、悲しそうな表情を浮かべた。まさに頭の上から擬音でガーン……と擬音が聞こえてきそうだ。
しかし、すぐに東雲にルアは反論した。
「ぼ、ボクだって何か絶対役に立てるはずですっ!」
「ふ、そんなに必死になるな。妾を乗せて運んでいる……ということだけでもしっかりと役に立っている。……っと、さて下っ端の狸どもに用事はない。とっととこの山の頂上へと向かうのだ。」
そしてルア達は、下っ端の狸娘達に見付からないように進み、更に上へと歩みを進めた。
中腹にあった集落を抜けると、辺りに深い霧が漂い始めた。
「すごい霧……ま、前が見えない。」
「霧が深くなるのは、山頂に近付いてきている証拠だ。ここから先は化け狸どもの住処に近付いていくから、兎に角集中力は切らさぬようにな。」
「しかし、この霧の中を進むのは少し危険ではないですじゃ?この濃さの霧があると、どこから襲われるか…………。」
ぴったりとルアのとなりを歩く由良が不安そうに言った。
「狸どもは商いにおいては信用ならんが、不意打ちなどそういう類いの攻撃はしてくることはないぞ?」
「何でそう言い切れますのじゃ?」
「妾の知っている大狸は、そういうのが嫌いだからだ。あやつは真っ向からぶつかり合うのが好きなやつなのだ。……故に妾の悪い癖が表に出てしまうのよな。くくくくく……♪」
過去に自分と渡り合った大狸のことを、少し自慢げに……そして楽しそうに東雲は話す。
その話を聞いて、ポツリと由良が溢した。
「なんだかロレットみたいな性格なのですな。」
「う~む、確かにまぁ……真っ直ぐで向こう見ずな所は同じかもしれん。だが………………ん?」
東雲が話している途中、一行の前に大きな締め縄で飾りが施された石が見えてきた。そしてその石の上には、なにやら人影が見える。
「くくくくく、どうやら流石に一筋縄では通してくれぬらしい。」
「えっ?」
そう東雲がくつくつと笑うと、石の上にいた人影がこちらにゆっくりと近づいてくる。
「ここまで迷わずに歩いてくるなんて……まぐれじゃないね?君達いったい何者さ?報告ではめっぽう酒に強い狐がいるとは聞いてたけどさ。」
こちらに質問を投げ掛けながら現れたのは、先ほどルア達の前に現れた狸娘とは明らかに雰囲気が違う狸娘だった。
「ただ、この山に迷いこんだ……ってわけじゃなさそうだね。目的はわからないけど、今ここで回れ右して帰るってなら見逃してあげるけど?どうする?」
「「あ゛?」」
そのときルアは確かに東雲と由良の方からブチッ……と何かが切れるような音を耳にした。
そして東雲はルアの頭の上から音もなく飛び降りると、一瞬で人の姿に化け狸娘に詰め寄った。
「たかが化け狸風情が、妾を愚弄するとはいい度胸だな?」
「ふふん、化け狐なんかに負けな…………ってあれれっ!?あたしの酒がないっ!?」
ひどく動揺する化け狸娘に、にんまりと笑みを浮かべた東雲が更に詰め寄る。
「探し物はこれか?」
東雲は彼女の目の前で瓢箪に入ったお酒をぷらぷらと揺らしてみせる。
「あっ!?そ、それあたしの…………むぎゅっ!?」
そして東雲は彼女の頬を鷲掴みにすると、ゆっくりと口へと向けて瓢箪を近付けていく。
「くくくくく、なぁに……どうせ飲むのだろう?なら妾が注いでやる。遠慮な~く飲み干すがいい。」
「へぅぁっ!?た、たひゅけ……むぐっ…………ん~~~っ!?!?」
霧が立ち込めるその場所にくぐもった化け狸娘の悲鳴がしばらくの間響き渡った。
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