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第一章 転生そして成長

第44話 リベンジ

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「うぅ……んっ…………はっ!?」

 ふと、ルアが目を覚まし辺りを見渡すと、となりに由良の姿はなかった。

「…………夢?だったのかな。……でもそれにしては妙にリアルだったような……。」

 由良と添い寝をして、無防備な耳を舐められる……そんな夢。

「…………まぁ、お母さんもベッドにいないし、夢だよね。」

 夢と割り切ってルアは普段通り、服を着替えて髪をとかして部屋の外に出た。
 すると……廊下の奥の方から由良がこちらに向かって歩いてきた。

「あ、お母さんおはよ~。」

「うむ、良い朝じゃなルア。さ~て、今日は何をしようかのぉ~。」

「ねぇねぇ、聞いて?ボク、夢にお母さんが出てきたんだよ。」

「おぉ!!夢にわしが出てきたか……それで夢の中でわしは何をしておった?」

 ずいずいとルアの近くに歩み寄ると、由良はルアの耳元で囁く。

「ルアのことをた~っぷり愛でておったかの?」

「……!?」

 ついつい驚いた表情を浮かべるルア。そんな彼に由良は、手で狐の顔を作りながら言った。

「むっふっふ♪もしや、ルアは狐につままれたのやもしれんのぉ~。」

 呆然と立ち尽くすルアを置いて、一人廊下を歩きだしていく由良。

(あ、あれって……ほ、ホント夢なんだよね。うん夢っ!!夢!!お母さんがボクにあんなエッチなことするわけないしねっ。)

 そう心のなかで割り切ったルアだったが、一方先に歩きだした由良は口元からペロリと赤い舌をだして妖艶な笑みを浮かべていたのだった。













 それから一月の時が経った。

 中庭ではタバサによって作られたオリハルコンの剣を携えたロレットが魔法を唱えている。
 その傍らでは由良とルアの二人が心配そうに、ロレットのことを眺めていた。

「だ、大丈夫かなロレットさん…………。」

「以前呼び出したドッペルゲンガーごときなら、問題なかろう。…………さぁ来るぞ。」

 魔法陣からロレットと瓜二つの姿のドッペルゲンガーが姿を現した。そしてロレットのことを視界に入れると、間髪いれずに襲いかかっていった。

「ふんっ!!この前のようにはいかぬぞ!!」

 オリハルコンでできた剣を横凪ぎに振り払うロレット。それを受け止めようとしたドッペルゲンガーだったが、ビキリとドッペルゲンガーが持つ剣に大きなヒビが入った。

 それを見てロレットはニヤリと笑う。

「流石にオリハルコンの剣を模倣することはできなかったようだな。せいぜい模倣できるのはミスリルまで……か。」

 冷静に分析するロレットだったが、ドッペルゲンガーは自分の剣に魔力を込めると再びロレットへと斬りかかっていく。

 二人の戦いを間近で見ていた由良はフッ……と一つ鼻で笑うと、こう言った。

「どうやらドッペルゲンガーにも強さの限界というのはあるらしいのぉ~。この勝負決まったな。」

 由良はスッと立ち上がると城の中へと入っていこうとした。

「あ、最後まで見ていかないの?」

「うむ、あんな自分紛いの物にあやつが負けるはずないからな。それにわしも新たにわかったことについて記す必要がある。」

 そうして由良は尻尾を揺らしながら城の中へと入っていってしまった。

 由良の姿が見えなくなると、ロレット達が戦っている方からキン!!と甲高い音が聞こえてきた。
 ルアが視線を戻すと、ドッペルゲンガーの剣がロレットによって真っ二つに切られてしまっていた。

「勝負ありだ。ふんっ!!」

「…………!!」

 ロレットがドッペルゲンガーに止めを刺そうとしたその時、一瞬……ルアはドッペルゲンガーと目があった。
 ドッペルゲンガーの表情がニヤリと歪に歪むと、ロレットの一撃を間一髪でかわし、ルアの方へと向かって走っていく。

「わ!?……うぅっ!!」

 ドッペルゲンガーはルアの背後をあっという間にとると彼のことを羽交い締めにし、折れた剣をロレットに突きつけた。

「貴様…………人質のつもりか?」

 怒気を含んだ声でロレットが問いかけると、一瞬ドッペルゲンガーの体がピクンと震えた。
 そしてルアという人質がいるにも関わらず、ロレットはどんどんドッペルゲンガーとの距離を縮めていく。

 一歩一歩踏みしめる度に、ロレットの体から赤いオーラのようなものがどんどん溢れだして彼女の周りを漂い始める。

 慌ててドッペルゲンガーはロレットに向けていた剣をルアの首もとへと突きつけるが……。その行為がいよいよロレットの逆鱗に触れた。

「ルアは殺させん……。お前がピクリとでも動いた瞬間に貴様の息の根を止めてくれる。」

 チャキ……とルアという人質をとっているドッペルゲンガーに剣を向けると、恐怖に支配されたドッペルゲンガーはルアのことを突き飛ばして、逃げてしまう。

「わぁっ!?」

 突き飛ばされたルアを優しくロレットは受け止めた。

「大丈夫か?ルア……すまない、我が不甲斐ないばっかりに……。すぐに始末をつけてくるっ!!」

 タンッ!!と地面を蹴るとロレットはドッペルゲンガーが逃げた方向へと走っていく。

 城の外に出て森のなかを隠れるように走っていたドッペルゲンガーだったが、突然目の前にロレットが現れたと思うと、視界が半分に割れていくのに気がついた。

「もう一つ貴様が模倣できていなかったところを教えてやろう。それは我のだ。」

 その言葉を最後に聞いて、ドッペルゲンガーは塵となって消えていった。
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