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第10章 三つ巴
第350話 初の依頼は異常に終わる
しおりを挟むクリスタたちと別れた後、ギルドへと向かった俺たちはナナシのハンター登録の手続きをリルに進めてもらっていた。
「いや~それにしても今年はすごいね。ハンターギルドができてから類を見ないほど強い人たちがどんどん来るや。」
苦笑いを浮かべながら書類を作るリル。
「えっと、ナナシちゃんだよね?」
「くくく、ナナシちゃんか。そんな呼ばれ方をしたのは初めてだ。」
「あはは、ダメだったかな?さんとかのがいい?」
「いや、構わんさ。それでいい。そういう呼ばれ方も新鮮だ。」
「うんうん、それじゃあナナシちゃん。これからランクを決めるんだけど、どこから始めたい?」
「それは我が決めてもよいものなのか?」
リルのそんな問いかけに思わず疑問を抱くナナシ。
「そもそもキミ達はこのギルドの基準じゃあ測れない実力の持ち主っぽいからね。こっちで決めるほうが野暮ってものだよ。ちなみにラピスちゃんとか魔王様たちは今もうダイヤモンドランクになってるよ。」
「え!?アルマ様たちもうダイヤモンドになったんですか?」
「うん。だいぶもう依頼もこなしてもらってるからね。」
「俺よりももう上にいってるんですね。」
アルマ様たちがすでに俺よりも上に行ってしまっている事実に驚いていると、ナナシが俺のほうを向いて確認を取ってきた。
「主はまだそのダイヤモンドとやらにはなっていないのか?」
「俺はまだゴールドだな。」
「ふむ、では我もそのゴールドでよい。特段そういう称号にこだわっているわけではないからな。」
「それならゴールドで登録しちゃうけど、いいのかな?」
「うむ、構わん。」
そしてナナシは俺と同じゴールドでハンター登録されることとなった。金ぴかの証明書を受け取ったナナシは早速リルに依頼についての話を持ち掛ける。
「して、今我が受けられる依頼はあるのか?」
「あるよあるよ~、ナナシちゃんの強さを見極めるって意味でもめちゃめちゃ良いのがね。」
そう言ってリルは待ってましたと言わんばかりに一枚の依頼書をナナシに手渡した。その内容は……。
「ふん?クラーケンか。」
「そ、実は近くの海に出没してきたみたいでね~。漁師の人たちが海に出れなくて困ってるんだ。」
「なるほどな。これは今すぐ倒したほうがよさそうだ。」
ニヤリとナナシは笑うとおもむろに手のひらを広げ、ギュッと握りしめた。そしてもう片方の手で指をパチンと弾くとギルドの床に巨大な魔法陣が現れる。
「へ?」
素っ頓狂な声を上げてリルが首をかしげたと同時に魔法陣が光を発し、そこから丸焼きにされた香ばしい香りを放つ巨大なイカが姿を現したのだ。
「こいつでよいのだろう?」
「えぇ~……嘘でしょ。」
呆然としながらリルはその現れた巨大なイカに近づくと、一つ頷いた。
「間違いなくクラーケンだけど、どうやったのこれ?」
「簡単な話だ。この周辺にいるこいつの気配を探り、遠距離から魔法で攻撃しただけのこと。久しぶりだった故少々火力を間違えたが……倒したことに変わりはあるまい。」
「簡単に言うけど、それヤバいことやってるからね?」
半ば呆れながらリルが丸焼きにされたクラーケンを眺めていると、それにおもむろにナナシが近づきがぶりと食らいついた。
「んっ、味はまぁまぁだな。主の記憶にあった料理に近いものだと思ったんだが。」
「それってまさかイカ焼きのこと言ってるのか?」
「それだ!!」
「あれはまたいろいろ味付けがあってだな……。」
「ではこのクラーケンもしっかりと味付けしてやれば美味くなるのか?」
「保証はできないけど多分美味しくなると思う。」
その答えを聞くとナナシはリルにあることを問いかける。
「リルよ、この魔物の亡骸は倒した証明に使うだけだろう?」
「え?まぁそうだね。一応素材とか売れるけど。」
「そんな金はいらん、報酬金で十分だ。今はこの好奇心を満たす方が先だ。」
最早クラーケンのことを食材としか見ていないナナシは、触手をおもむろに鷲掴みにすると、ギルドの酒場の方へと運んでいく。
「主~、行くぞ~。」
「はいはい、わかりましたよ。」
彼女の好奇心を満たすため、俺もその後に続き久しぶりに酒場の厨房へと足を運ぶのだった。
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