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第10章 三つ巴
第331話 永続のダンジョンの主
しおりを挟む牛の魔物が入って行った魔法陣。それは未だ何かを待つように輝きを放っていた。そこに入るべきか迷っていると、アルマ様がポツリと言った。
「あ、あの……カオル。ごめんなさい。」
ポロポロと涙を流しながら謝罪の言葉を述べたアルマ様。どうやら今回自分がどんなに危険なことをしていたのか自分の身をもってわかってくれたようだ。
「良いんですよ。兎にも角にもご無事で何よりでした。それと、その言葉はジャックさんにも言ってあげてください。ジャックさんも心配してましたから。」
「うん……うん。」
「アルマ様、立てますか?」
手を差し伸べると、アルマ様は俺の手を取って立ち上がる。
「カオル、この先に行くの?」
「はい、罠が待っているような感じもしないので行ってみるだけ行ってみようと思います。」
「あ、アルマも一緒に行っていい?」
「もちろんです。一人で動くのは危険ですから。」
そしてアルマ様とともに魔法陣の上に立つと、待ちわびていたかのように魔法陣は輝きを強め、俺とアルマ様の二人を飲み込んだ。
次に目を開けると、今度はさっきまでいたダンジョンらしい雰囲気の場所とはうって変わって、何やら道場のような場所に飛ばされていた。
そこには先ほど俺たちをここに導いた牛の魔物ともう一人……ひたすらに剣を振る、ところどころ狐のような容姿の女性の姿があった。牛の魔物はその人の近くに正座で座っている。
「シュッ!!」
上段から流れるように大きく一太刀振り下ろした後、その人は剣を鞘に納めるとこちらに視線を向けた。
「~~~っ!?!?」
目が合った瞬間……脳裏に浮かんだのはこの龍化の限界を超えた姿の俺の全身を切り裂かれるような鮮烈なイメージ。
思わず俺は後ろに飛び退いた。するとこちらに視線を向けたその女性はにこりと笑った。
「うん、いい反応。でもちょっとだけ遅いかな。だけどまぁ合格点。」
そう言うと、彼女はこちらに向けて言った。
「初めまして、私の名はアリス。アリス・ローザリーネ。一応このダンジョンの最終階層のボスって役割なんだ。」
「アリス?」
俺は彼女の名前に聞き覚えがあった。それは俺の使っている剣術スキルの名にも使われているからだ。
「聞かせてください、アリスというその名前はもしかして……。」
俺が最後まで話し終える前に彼女は嬉しそうに笑って口を開いた。
「その通り、キミが使っている剣術の生みの親こそがこの私だよ。」
「…………。」
「その反応信じられないって顔してるね。言葉で言っても伝わらないと思うし、試しに打ち合ってみるかい?」
そう言うと、彼女は空気が震えるような闘気を体から放出して剣を構えた。
確かに確かめるなら、戦ってみたほうが早いかもな。
そして俺もアーティファクトを腰から抜いて構えた。すると彼女は挑発するように言った。
「ま、キミの方からおいでよ。」
「じゃあ遠慮なくッ!!」
まず一発目は壱の太刀飛閃からだ。剣を横薙ぎにして飛閃を飛ばすと彼女はにこりと笑う。
「飛閃か、いいね!!じゃあこっちもいくよ~?」
すると、彼女も軽く剣を振るった。その軽い振りで俺の飛閃よりもはるかに巨大な飛閃が生み出され、飛閃同士がぶつかった瞬間俺の方がかき消された。
「っ!?」
迫りくる飛閃を飛んで躱すと、空中を蹴って再び彼女に迫る。
「ははぁ~ん?そういうことね、じゃあ乗ってあげようか。」
俺の思惑を読み取った彼女は、空中にいる俺へと向かって素早い突きを繰り出してきた。
それを陽炎で躱し彼女の背後に回り込み、一撃を振り下ろすと目の前から彼女の姿が消える。
「陽炎返し~なんちゃって♪」
そのままコツンと俺の頭に剣の峰が当てられた。
「ッ!!」
即座に後ろに反撃するも、またしても彼女の姿がゆらりと消える。
(また陽炎かっ。)
「ん~、太刀筋は悪くないね。ブレてない、それに一撃で命を刈り取れるぐらい力強い。」
そう口にする彼女は自分の残像を大量に生み出して俺のことを取り囲んでいた。
「でも、まだまだ甘い。その様子だと、まだ参の太刀も使えないでしょ?ちょうどいい機会だから見せてあげるね。」
そう言うと、彼女の残像が一斉に剣を光らせる。
「参の太刀……時雨。」
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