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第10章 三つ巴
第328話 永続のダンジョンの洗礼
しおりを挟む目を開け、先程までとは違う空間へと飛びされたことを確認すると同時に、頭上から声が聞こえてくる。
『挑戦者の実力が本階層に相応しくない為、能力値を調整します。』
「ん?」
『いくつかのスキルを封印、及びステータスを弱体化します。それではご武運を。』
「は!?ちょ、おい!!」
それ以降声をかけたとしても、さっきの声が聞こえてくることはなかった。
その代わり、ナナシがあることをするように促してきた。
『主、ステータスを確認してみたほうが良いと思うぞ?』
「あ、あぁ……。」
試しにステータス画面を開いてみると……。
「なんだ……これ。」
あの声の言っていたとおり、基本的なステータスが全て著しく低下している。さらに危険予知と龍化、アリス流剣術以外の全てのスキル名の横に封印と文字が付け加えられていた。
「魔装っ…………………反応しない。」
試しに封印と書いてあるスキルの魔装を使おうと試みてみたが、うんともすんともいわない。
「つまり、このステータスと3つのスキルだけでここを攻略しろってことか。なんでこんなハンデを抱えなきゃいけないんだ。」
大きなため息と共に素直な疑問を吐き出していると、ある懸念が頭をよぎった。
「待てよ?俺がこういうハンデを抱えることになってしまっている……ということはまさか、アルマ様も?」
となれば、かなり危ない。すぐに探し出さないと!!
そしてアルマ様を探し出すべく一歩踏み出そうとしたその時だった。
ガチャッ……ガチャッ。
「……!!なんだ!?」
背後と正面の通路からガチャガチャと異様な音が聞こえてくる。
そして暗い通路から俺を挟み込むように現れたのは中世の騎士の鎧を全身に身に纏った何かだった。
「こいつら人間じゃない……よな?」
『うむ、気配からして間違いなく魔物だ。』
そうナナシに確認を取っている最中にも俺を挟み込んでいた騎士の魔物は各々携えたロングソードと槍で襲いかかってくる。
まずは正面から先にせまって来る槍を足で踏みつけて地面に叩きつけ、背後の剣をアーティファクトで受け止めた。
「ふっ!!」
そして空いた足で剣を持っていた魔物の方を蹴り飛ばす。それと同時に今度は槍のやつの首へと向けてアーティファクトを一閃した。
その一撃で首と胴体が離れ、確実に仕留めたことを確信すると蹴り飛ばしたやつの方に近付き、そいつの首も落とした。
それで戦闘は終わると思われた……。
「っ!?」
突如背後から聞こえてきた風切り音、それに対して反射的に横っ飛びし、後ろを振り返るとそこには首のない先程の槍のほうの鎧の魔物がこちらに一撃を繰り出していた。そいつの横にはふわふわと切り落としたはずの首が漂っている。
「どうなってる……不死身か?」
そうこう言っている間にも、剣のやつも何事もなかったかのように立ち上がる。
「兎にも角にも今は挟まれたこの状況を抜けるか。」
こうして挟まれている状況では考えを巡らせることもできない。
そして槍のほうの魔物へと距離を詰めると、案の定迎撃すべく槍の一撃が突き出される。その一撃を跳躍して避けると、俺は槍を持っていた魔物の手に着地し、そこを土台にして更に一つ飛んだ。
「これでよし。」
相変わらず2対1という状況は変わらないが、挟まれている状況は脱した。
「ナナシ、この魔物知ってるか?」
そう問いかけると、すぐにナナシから返答が返ってくる。
『恐らくデュラハンナイトだな。アンデットの中でもかなり上位の魔物だ。こやつらは元々首と胴が離れておる故、首と胴体を切り離したとしても死なぬ。』
「なるほどな。どおりで首を切ったときに切った感触が無いと思った。」
『仕留めるならば胴体の何処かにある核を破壊するのだ。』
「ピンポイントじゃなくてもいいんだろ?」
アーティファクトに魔力を込め、微塵まで切り刻むイメージを強く思い浮かべる。
「微塵切り。」
そのイメージを乗せてアーティファクトを一閃する。すると、デュラハンナイトの胴体の鎧に無数の線が入り、それと同時に青い光となって俺の体に吸収された。
「ん、とりあえずなんとかなったな。」
アーティファクトを腰の鞘に納めて一つ息を吐く。
「さて、アルマ様を探さないとな。」
そして一歩踏み出そうとすると、背後の通路からいくつもガチャガチャと音が聞こえてくる。
「流石に相手してる時間はないからな。ここは逃げるか!!」
音が聞こえる反対側へと俺は走り出すのだった。
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