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第10章 三つ巴
第326話 アルマ様を追って
しおりを挟むあの日以来……パッタリとアルマ様が俺にくっつくことはなくなった。そしてそれと共にアルマ様は一人で何処かへと出掛けることが多くなっていた。
カナンやメアに聞いても行き先はわからないという。
今日はその件について、ジャックと話し合うことになっている。
朝食を食べ終えてすぐに何処かへと向かったアルマ様を見送った後、俺はジャックの部屋を訪れた。
「失礼しますジャックさん。」
「来ていただけましたか。どうぞお座りください。」
促されるままに彼の正面のソファーに腰掛ける。するとすぐに彼は紅茶を差し出してくれた。
「事前に伝えましたが、今回カオル様をお呼びしたのは他でもありません魔王様のことです。」
「今日もまた一人でどこかに行ってしまったみたいですよ。」
「えぇ、今の魔王様の実力的にただの魔物程度に負けるとは到底思えませんが、外の世界に蔓延っているのは魔物だけではありませんから。邪な心を持った者が魔王様に近づいてくる可能性もあります。カナン様とメア様が一緒にいればそれも回避できるのでしょうが……。」
「ジャックさんがバレないように後ろに着いて行ったりとかはできないんですか?」
そう問いかけると、彼は首を横に振った。
「私もそうしようと思ったのですが、それに関して魔王様から着いてきたら二度と口をきかないと言われてしまいまして……。」
「あぁ~……なるほど。」
ジャックの事情は察した。そうなれば俺が行くしかないだろう。
「じゃあ俺が行きますよ。」
「そう言っていただけるとありがたいのですが……。」
「それじゃ、アルマ様がまだそんなに遠くに行ってない今のうちに追いかけてみます。」
「お気を付けください。魔王様は危険地帯に赴いている可能性もありますから。」
「わかりました。」
そして俺はすぐにジャックの部屋を飛び出して魔王城の外へと向かった。まず先に赴いたのはギルドだ。
俺はギルドに入るなり一階にリルの姿がないことを確認すると、すぐに二階へと向かう。そして彼女の執務室の扉をノックした。
「入っていいよ~。」
「お邪魔しますリルさん。」
中に入ると大量の書類に追われている彼女の姿があった。
「ん?キミか、どうしたの?」
「ちょっと聞きたいことがあって、リルさんアルマ様がどこに行ってるか知りませんか?」
それについて問いかけると、リルの手が一瞬ピタリと止まる。
「……なんで知ってるって思ったの?」
「アルマ様がどこに行くにも、情報ってのは必要ですよね?ならその情報を提供できるのはリルさんしかいないと思ったんです。」
「はは、そこまで読まれてたかぁ。魔王様には誰にも言っちゃダメって言われてたんだけどね。」
そう言って彼女は一度作業の手を止めると、本棚から一冊のファイルを取り出してこちらに持ってきた。
「はいこれ、そこに魔王様はいるよ。」
「ありがとうございます。」
彼女からそのファイルを受け取り、開いてみるとそこには永続のダンジョンについてと書かれている。
「永続のダンジョン……。」
「今のところ最終階層が見つかってないから永続って言われてる。現在は124階まで攻略してるよ。魔王様もそこにいる。」
「ありがとうございますリルさん。それじゃあ行って……。」
「まぁ待ちなよ、最後まで説明は聞いていったほうが良いよ。」
そう言って止められると、リルは俺が置いたファイルを手に取った。
「永続のダンジョンには厄介なのが入り込んでる。」
「厄介なの?」
「うん、西の魔女の攻略部隊だよ。あいつら攻略を進めてる一般のやつらにも容赦しないから危険なんだ。ダンジョンで手に入れた宝物とか普通に強奪するからね。」
「それはアルマ様は?」
「聞く前にここから出て行っちゃったよ。」
「っ!!すぐに向かわないと、リルさんありがとうございます。」
俺はすぐに移動魔法で移動しようとしたが、魔法が発動しない。
(移動魔法が使えない!?)
発動しないなら……最短距離で行くしかない。
すぐにギルドの外に出た俺は全身を龍化させると、背中から生えた翼をはばたかせ永続のダンジョンへと向かうのだった。
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