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第9章 新たな生活
第306話 ナインのお願い?
しおりを挟む「……ん?」
意識が戻り目を開けると、俺はユノメルのいる死の島ではなく自室のベッドで横になっていた。
「妙に体が気怠いな。」
この感じには覚えがある。以前初めてユノメルと出会ったときと全く同じだ。
「ナナシ、またやったな?」
そう彼女へと話しかけると、クツクツと笑いながら彼女は答える。
『くくく、すまんな主。だが、今回ばかりは仕方がなかったのだ。ユノメルの毒に対する耐性をつけるため毒酒を飲むほか無かった。』
「ま、まさか俺の体でそんなものを飲んだのか!?」
『うむ、だが何も問題はないぞ?既に主は完全毒耐性を身に着けた。どれだけの劇毒が体の中に入ろうとも、異常は起こらん。』
「はぁ……まったく勝手してくれるな。」
『そういうでない主。完全毒耐性とは非常に便利なスキルなのだぞ?それこそ、どこぞの龍のように毒キノコを食らって腹を壊すこともない。毒を武器とする魔物は無力化だ。至れり尽くせりではないか?』
「……わかった、今回はお咎めなしにしよう。ただ、次俺の体を操ってなにかしらするときはしっかりと教えてくれよ。」
『心がけよう。』
ナナシとそんな会話をしていると、不意に部屋の扉がノックされた。
「マスター、少しお時間よろしいですか?」
扉の向こうから聞こえてきた声はナインのもの。何の用事かを聞くために部屋に彼女を通す。
「それで、どうしたんだ?」
「マスター、その体の身体能力などなどを記録したいので少々ナインと模擬戦をしていただきたいのです。」
「そいうことね。えっと、時間は…………。」
時計を見るとアルマ様のご飯の時間まではまだ時間があるようだ。少しぐらい付き合ってもいいかな。
それに、この体とはまだ縁を切れなさそうだし、この体について知っておくことは悪くはないだろう。
「うん、じゃあ少しやろうか。」
「ありがとうございます。」
そしてナインに連れられ、トレーニングルームへと向かうとそこには既にスリーとセブンが待っていた。
「お待ちしていましたマスター。」
「スリーとセブンもか。」
「計測は一人でも人数が多いほうが効率的且つ正確なデータがとれますので。」
「なるほどな、ってことはスリーとセブンは計測係……ってことか?」
「いえ、ナイン単体ではデータを測りきれないと判断した場合スリー達も戦闘に加わらせていただきます。」
「おぉぅ、マジか。」
ひとまず最初はナインと一対一をやることになった俺は収納袋からいつもの木剣を取り出そうとしたのだが……。
「ん?」
木剣をイメージしたのにも関わらず俺の手に握られていたのはグラト戦で大活躍したあのアーティファクトだった。
「なんでこれが……。」
疑問に思っていると、突然アーティファクトが形を変え、刃のない剣……それこそ俺の使っていたあの木剣とまるっきり同じような形へと変わったのだ。
「こういう時にも使ってほしいのか?……まぁいっか、見た感じ刃は無いみたいだし。」
ただ、戦闘中に形を変えられても困るので、一応俺は意志が通じるかわからないアーティファクトへと声をかけることにした。
「誰かを倒すわけじゃないからそのままの形でいてくれよ?」
その言葉にはもちろん返答は返ってこない。
そして俺はアーティファクト構え、ナインと向き合った。
「よし、やろうか。」
「はい、ではマスター。全力でお願いします。」
ナインも機械仕掛けの剣を構えると、音もなく床を蹴りこちらへと急接近してくる。
彼女のその移動に俺は違和感を覚えた。
(いつもみたいに目の前で姿が消えない?)
それこそ少し前までナインのこの踏み込みからの間合い侵略までの動作を目で捉えることはできなかったのだが、今は速度こそ早いものの、ハッキリと見える。
見えていれば対処はし易いもので……。
ナインの切り込みを陽炎で躱すと彼女の頭にコツンとアーティファクトを当てた。
「……っ。」
「よし、久しぶりにまた一本だな。」
ナインはこちらを振り向くと、一度剣を下ろした。それと同時に既に武装を展開しているスリーとセブンの二人がナインの横に立った。
「予想通り、ナイン単体戦力では不足のようです。マスター、これからはスリーとセブンもお相手します。」
「いきなり三人相手か……お手柔らかにな?」
「残念ですが、これはデータ収集の一環です。正確なデータをとるためにも手加減はしません。」
そしてスリーとセブンは一瞬で展開し、三人で三角形を描くように俺のことを囲んだ。
「では改めて……参ります。」
これは下手するとグラトよりも凶悪かもしれないな。
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