魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
298 / 350
第9章 新たな生活

第299話 餅は餅屋へ……

しおりを挟む

 酒を飲みながらカーラにも自分がこんな体になってしまった経緯を話すと、彼女はとても興味深そうにこちらの話を聞いてくれた。

「食べたら性別が逆転する果実……ねぇ。そんなの聞いたことないけど、事実カオルがこんなふうになっている以上信じるほかないね。」

「自分自身まだ現実を受け入れられてないですよ。」

「何か元に戻る方法とかは考えてるのかい?」

「一応なんか強い魔物を倒せば、可能性はあるみたいですけど。」

 そう話すと、リルが首を傾げた。

「強い魔物って……ついさっきオーガアレス倒したよね?あれじゃダメだったの?」

「ダメだったみたいです。だから別のアイツよりも強い魔物を探さないと……。」

「オーガアレスよりも強い魔物かぁ……。ギルドに入ってきてる情報だと今のところはアレ以上に強い魔物はいないかな。カーラはなんか当てがあったりする?」

「いや、残念だけどないよ。でも、オーガアレス以上に強い魔物ってなったらいよいよ神獣を倒さないといけないんじゃないかい?」

 神獣か……俺の知っているのはユノメルだけだが。ユノメルには一応恩がある。だからもし挑むとしたらそれ以外の神獣がいいが、そもそもこの世界に神獣という存在は何体いるのだろうか。

「そういえば、神獣って全部で何体いるんですか?」

「一応ギルドで認定してる神獣は7体だね。でもそのうち正確な場所まで把握してるのは1体、ユノメルだけだよ。」

「ユノメルですか……。」

「他の神獣はみんな自分の居場所を晒そうとはしない。何てったって他の神獣達に狙われるからね。」

「他の神獣に狙われる?」

「そ、神獣達ってのは常に他の神獣を倒そうとしてるんだ。彼らの体の中にある魔力の結晶を求めてね。それを自分の体に取り込むことで更なる上位の存在になろうとしているのさ。」

 神獣になったらなったで他の神獣達から狙われる立場になるってことか。一介の魔物という存在から成り上がったはいいが、その先で待っているのも命の奪い合い。休まる時間なんてないな。

「それじゃあユノメルも他の神獣から狙われてるんじゃ?」

「あぁ、アレだけは神獣の中でも別格だよ。多分今までに5体以上神獣を屠ってる。」 

「5体も!?」

「うん、ギルドで確認した神獣の死骸が過去にいくつかあるんだけど、全部からユノメルの魔力が検出されてるんだ。もちろん魔力の結晶も自分の体に取り込んでるだろうから、今の神獣の中だと断トツで強いんじゃないかな。」

 改めて俺はユノメルのヤバさを痛感した。そして俺が今こうして生きているのは他でもないナナシのおかげであるということも。

「どうするかな……。」

 思い悩んでいると頭の中に声が響いてきた。

『主よ、だ。神獣の事は神獣に直接聞くのがよいのではないか?』

 俺の記憶から引っ張ってきた言葉を使ってそう提案してきたナナシ。

(……つまり、また死の島に行けと?)

『うむ。ユノメルならば今の神獣どもの所在をある程度知っておろう。それを頼りに神獣狩りだ。』

(簡単に言ってくれるなまったく……。だけど、今のところそれが一番近道かもな。)

 まさかこんなに早くもう一度あの島へと足を踏み入れることになるとは思っていなかった。未来ってのはやっぱり予測不可能だな。

『ではそうと決まれば早速向かうぞ!!早く移動魔法を使うのだ。』

(はいはい。)

 一先ず方針が決まった俺は酒を一気に煽ると、二人に向かって言った。

「すみません、ちょっと神獣の事について聞きに行ってきます。」

「へ?行くって……どこに?」

「神獣の事は神獣に聞くのが一番かなって、ユノメルのところに行ってきます。」

 トン……と床を足の爪先で叩くと俺の真下に魔法陣が展開される。そこから溢れた光に包まれると、俺の姿は二人の前から消えた。

「い、今ユノメルに聞きに行くって言ってたよね?」

「あぁ、さも知り合いみたいに言ってたね。」

 取り残された二人はお互いに顔を見合わせた後、呆然と消え行く魔法陣を眺めていた。









 移動魔法で死の島へと転移して来ると、そこは以前俺が訪れた時とは別風景が広がっていた。

「これは……花?」

 浜辺から森の方へと向かってビッシリと白い花が咲き誇っていたのだ。

『ふむ、この花は空気中の魔力を糧に育つ花だ。恐らくは以前訪れた際に我とユノメルが魔力を使ったときの残りを糧に育ったのだろう。』

「魔力を?ただ酒を飲んでいただけじゃないのか?」

『まぁ本来はそうなるはずだったのだが……邪魔が入ってな。主も知っているだろう?だ。』

「なっ……ドリスだって!?なんで教えてくれなかったんだよ!!」

『教えるまでもなかったのだ。今頃ヤツはユノメルの毒をくらい生死の狭間をさ迷っておる事だろうからな。毒に体を焼かれるのはなかなかどうして苦しいらしいぞ?』

 まさか俺の意識がナナシと代わっていた間にそんなことがあったなんて……。

 その事実に驚いていると、森の奥から見覚えのある女性が白い花畑を歩きながら現れた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

処理中です...