魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

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第9章 新たな生活

第295話 真の力

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 オーガアレスの体がどんどん縮んでいき、俺の倍以上あった身長が約2m程におさまると奴は再び目を開けた。その瞬間……オーガアレスの体から溢れるように闘気が放出される。それによって生じた衝撃によって辺り一帯の岩や等が粉々に砕けていく。

 そして奴は一つ息を吐くとこちらに視線を向けて来る。

「マタセタナ、サァ始メヨウ。」

 オーガアレスが拳を前につき出して構えを取ると空気が震える

「小さくなった方が強いのかよ、普通逆だと思うけどな。」

「コレコソ無駄ガナイ完璧ナ肉体ダ。疑問ニ思ウノナラ感ジテミロ!!」

 そう言うと、一つ瞬きをした瞬間に目の前から奴の姿が消えた。あまりに速いスピード故に音が遅れて耳に届くが、その頃には背後を取られていた。

「ハァッ!!」

「っ!?」

 超高速で繰り出される裏拳。以前の俺であれば間違いなく喰らっていたかもしれない一撃だが……。

『反撃します。』

 俺の体は勝手に動き、その裏拳を体を捻って躱すとカウンターでオーガアレスの顔面に蹴りを叩き込んでいた。

「グッ……マダダ!!」

 一瞬のけ反った奴だったが、足に力を込めて踏み止まると負けじと再び拳を突き出して来る。その攻撃を完璧に避けた次の瞬間だった。
 俺の横腹に鈍い痛みが走る……それと同時に俺は大きく吹き飛ばされ、直線上にあった岩に叩き付けられることになった。

「な……にが。」

 確かに攻撃は避けたはず……。最後の最後まで奴から目は離していなかった、避けた攻撃以外のモーションも何一つなかった。いったいどうなっている?

 視線の向こうで仁王立ちしているオーガアレスへと目を向けると、奴は不敵に笑っている。

「くっ……。」

 口元を伝う血液を手で拭うと頭の中に声が響いてきた。

『苦戦しているようだな主?』

(まぁな。)

『我が代わってやろうか?』

(問題ないさ、やるだけやってみる。)

『くくく、そうか。まぁ、いざとなればいつでも我は代われるからな。好きなだけやるといいぞ。』

 そしてナナシの声が聞こえなくなると、オーガアレスがこちらに問い掛けてきた。

「休憩ハ充分カ?」

「はっ……わざわざ待っててくれたのか?」

「コレハ強者ノ余裕ダ。」

「言ってくれるな。なら……。」

 俺は右手に焔を、左手に冷気を纏わせると奴に向かって構えた。

「来いよ。」

 軽く挑発すると、奴は再び視界から消える。そして今度は俺が叩き付けられた背面の岩を砕きながら背後に現れた。
 
「ムンッ!!」

「やっぱり後ろからか。それはもう読んでたよ!!」

 背後に現れると同時に繰り出される連撃を躱し、奴の体に拳を叩き込もうとしたその時……。またしてもあらぬ方向から攻撃を受ける。しかし、今度は体は吹き飛ばない。なぜなら踏み込みと同時に地面に足を突き刺して体を固定していたからだ。
 
「ぐっ……凍れっ!!」

 左手を前につき出し、全てを一瞬で凍りつかせる冷気を放つ。そしてその冷気は予想を外され、動きが止まっていたオーガアレスに直撃する……はずだった。

「なに!?」

 しかし、確信とは裏腹にまたしてもオーガアレスは目の前から消え去ってしまう。そして奴は何事もなかったかのようにまたしても背後に現れた。

「今ノハ、ナカナカ良カッタ。肉ヲ切ラセ骨ヲ断ツ……ソノツモリダッタノダロウ?」

「チッ……今のも避けるかよ。」

 弱ったな……からくりがわからない以上こっちの攻撃は当たらず、相手の攻撃はくらい放題だ。どうにかして対策を練らないと。せめて奴が何を考えているのかわかればな…………って、ん?

 考えを巡らせていると、俺はとあるスキルの存在を思い出した。

「なるほどな、そっちが全力で向かって来るなら……俺も全開でいけばよかったんだ。」

「強ガリハヤメテオケ。」

「本当に強がりか……試してみろよ。」

 そして奴のことを再び挑発すると、今度は目の前から消えるのではなく凄まじいスピードで懐へと踏み込んで来ると攻撃を繰り出してきた。
 それと同時に俺はあのスキルをオンにする。

(読心術……オン。)

 その瞬間、奴の思考が流れ込み、俺は奴の妙な攻撃のからくりをつかみ取り、不可視の攻撃も難無く躱しながらオーガアレスの顔面に拳を叩き込んだ。

「グォァッ……ッ!!」

「ほらな、当たった。」

 凍り付く顔面を手で覆い、苦悶の声を上げる奴に俺は告げた。

「さ、反撃開始と行かせてもらうぞ?」

「グッ!!」

 そう告げた俺に向けられた視線には怒りと焦りが見えた。
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