292 / 350
第9章 新たな生活
第293話 町に迫る危機
しおりを挟むリルに自分がどうしてこんなことになっているのかをザックリと話すと、彼女は信じられそうにしながらも俺の話を聞いてくれた。
「んー、つまりその龍なんちゃらって果物を食べたらそうなっちゃったってことだよね?」
「お恥ずかしながらそういうことです。」
「にわかには信じがたいことだよね……。でも実際にキミはそうなっちゃってるわけだから信じないわけにはいかないんだけどさ。」
そう言って一口紅茶を口にした彼女はじっとこちらを見つめて来ると、ポツリと言った。
「それにしてもキミさ……ずいぶん美人さんになったね?」
「へ?」
「キミは自分で気がついてるかわからないけど、一般的感覚で言わせてもらうならかなり美人の部類に入るよ。まぁ男の人に絡まれるのも納得だよ。」
「やめてくださいよ、これでも俺は男なんですから……元は。」
「あはは、ゴメンゴメン。」
「はぁ、まぁ話がだいぶ逸れちゃいましたけど、俺にお願いしたい依頼ってなんです?」
俺は話の路線を戻して、ここに呼ばれた理由についてリルに問い掛ける。すると彼女は一枚の紙を取り出した。
「キミに依頼したいのはこれ。」
彼女はが渡してきた紙に目を通すと、そこには巨大な魔物が映っている一枚の写真と依頼についての詳細が書かれていた。
詳細の欄に書かれていた魔物の名前を読み上げてみるが、その魔物は俺の耳にしたことのない魔物だった。
「オーガアレス?」
「そ、今現状……最も神獣に近いって言われてる魔物でね。ついこの前までは火山の中に封印されてたんだ。でもその封印が破られた……何者かによってね。も~それからはひどいもんだよ、目覚めるなりその火山周辺を吹き飛ばして更地にしちゃったんだ。まぁ幸いその周辺には住んでいる人はいないから死者の報告は上がってないけど。問題はこっち。」
そう言ってリルはもう一枚紙を取り出してテーブルの上に置いた。その紙には火山のある場所から一直線にこの城下町へと矢印が描かれている。
「これは?」
「ギルドで割り出したオーガアレスの進行予想図だよ。見ての通り、あいつは一直線にここに向かってきてる。まるで何かに引き付けられてるみたいにね。ちなみに現在のオーガアレスの位置はここ。だいたいこのペースでいくと二日後にはここに姿を現す計算だね。」
「二日……ですか。」
「正直な話、現状のハンター達で対応できる魔物じゃないんだ。まさか魔王様達を向かわせるわけにもいかなくてさ。」
「それで俺に頼みたいと。」
「そういうことなんだけど……どうかな?」
このまま放っておいたら間違いなくこの町に甚大な被害が出る。俺以外にやれる人がいないならやるしかないか。
と、思っていると頭の中に声が響く。
『神獣に今最も近い魔物か、なかなかどうしてやり甲斐のありそうな相手ではないか?』
(こいつを倒したら進化するか?)
『それはわからんな。今の主に相応しき相手ならば進化するやもしれんが……過度な期待はしないほうがよいぞ?』
(わかった、まぁやってみる。)
『うむ、それが良かろう。』
ナナシと話し合った末、俺はリルの差し出してきた依頼書にサインをした。
「やってくれるのかい?」
「やれるだけやってみようと思います。この町に被害は出したくないんで。」
「助かるよ!!ギルドでも精一杯支援するからさ。」
そして依頼を受けた俺にナナシが再び話しかけてきた。
『さて主、善は急げだ。とっとと魔法で奴のところへ飛んでいくぞ。』
(移動魔法でいいのか?)
『うむ、その地図の位置を良く意識して足に魔力を籠めるのだ。』
ナナシに言われた通りにやってみると、俺の足元に魔法陣が現れる。それと同時に一瞬視界が暗転し、次に目を開けたとき……俺は地図上のオーガアレスのいるという地点から少し離れた荒野に転移して来ていた。
『ふむ、少し位置情報にズレがあったか。まぁよい、主よ件の魔物はこの先だ。気配は感じるな?』
「あぁ、わかるよ。」
ナナシにから流れ込んできたスキルのおかげで、強い気配を放っているオーガアレスの位置がよくわかる。そしてその場所へと走ろうとしたとき……突然フッと辺りに影が下りた。
「っ!!」
上を向けばそこには俺の体よりも遥かに大きな巨岩が空から降って来ていた。
『随分手荒い歓迎だな。』
「全くその通りだよっ!!」
咄嗟に地面を蹴って横に跳ぶと、先ほど俺がいた地面に巨岩が深々とめりこんだ。そしてその巨岩の上に一つの影が下りる。
『お出ましだ主。』
「あぁ。」
空から降ってきた巨岩の上には鬼のような角を生やし、真っ赤な皮膚に包まれた男が立っていた。そいつは俺の方をじっと見つめて来ると、凶悪な牙を剥き出しにして笑った。
「ミツケタゾ強者ヨ!!」
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生した元剣聖は前世の知識を使って騎士団長のお姉さんを支えたい~弱小王国騎士団の立て直し~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
かつて剣聖として無類の強さを誇っていた剣士ゼナリオは神族との戦争によって崩壊寸前の世界を救うため自らの命を引き換えにし、そして世界を救った。剣で始まり剣で人生を終えたゼナリオは自らの身が亡ぶ直前にある願いを抱く。
だが再び意識を取り戻し、目を覚ますとそこは緑いっぱいの平原に囲まれた巨大な樹木の下だった。突然の出来事にあたふたする中、自分が転生したのではないかと悟ったゼナリオはさらに自らの身体に異変が生じていることに気が付く。
「おいおい、マジかよこれ。身体が……」
なんと身体が若返っており、驚愕するゼナリオ。だがそんな矢先に突然国家騎士の青年から騎士団へのスカウトを受けたゼナリオは、後にある事件をきっかけに彼は大きな決断をすることになる。
これは若返り転生をした最強剣士が前世の知識を用いて名声を高め、再び最強と呼ばれるまでのお話。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる