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第7.5章 聖夜祭
第270話 聖夜祭の優勝は誰の手に?
しおりを挟む街の周辺の警備をしながらアルマ様たちやエンラたちの様子を見て回ったが、彼女たちは各々カーバンクルの宝石を入手していた。特にメアがいるアルマ様たちのパーティーは、カーバンクルが自ら近寄ってきては宝石を置いていくというクリスタのような状態になってしまっていた。
カーバンクルを追いかけずに宝石を入手出来てしまうというその現象にアルマ様は少し残念そうにしていたが、なんだかんだカーバンクルと触れ合うことを楽しんでいる様子で良かった。
そういえばあの時、メアが妙に俺についてきているカーバンクルをじっと見つめていたが……何か気になることでもあったのだろうか?後で会ったら聞いてみようと思う。
そして聖夜祭の夜……日付変更直前に警備の仕事を終えて、今朝集まったあの広場へと向かってみると広場にはすでに人だかりができており、設営された舞台の上には見慣れた人物たちが並んでいた。
「皆様今年の聖夜祭もお疲れさまでした!!今年も本当にたくさんの方々がカーバンクルの宝石を入手し、選考に挑んでいただきました……。そんな数あるパーティーの中から選ばれたこちらの四組の方々はこちらで計測した結果上位に輝いた方々です!!それでは紹介していきましょう!!」
そう会場を盛り上げながら、司会の女性はクリスタへと近づいていく。
「まずは皆様ご存じ、幾度となく開催されたこの聖夜祭で常に王者として君臨してきたエルフの長……クリスタさんです!!」
クリスタは自分が紹介されると、にこやかに微笑みながら集まった群衆へと向かってお辞儀した。
「次にご紹介いたしますは、今大会初出場のラピスさん!!ラピスさんは今年の聖夜祭で最多宝石賞が決定している、とんでもなく宝石をかき集めた方です!!そしてお隣も続いていきましょう、お隣に並び立っています方々も今大会初出場のエンラさん、ソニアさんの二人パーティーです!!この初出場のダークホースが王者のクリスタさんを脅かす存在になるのか……これからの結果発表をお待ちくださいっ!!」
ほぉ~、最多宝石賞なんてのもあったのか。まぁそれがあったらラピスがそれを受賞するのは納得だな。俺が警備で見回っていた時も、大量のカーバンクルに囲まれていたからな。
「そしてなんとなんと……最後の四組目には我らが魔王様も喰い込んできましたっ!!夏のお祭りにて優勝を分けたカナンさんと、新たなメンバーであるメアさんを加えて参戦です!!」
紹介されて歓声が上がると、アルマ様はにこりと笑って会場に詰めかけた人々へと向かって手を振った。すると今までで最も大きな歓声が上がった。
夏の大会に続いて、この聖夜祭でも俺の知っている人たちで優勝を争うのか。さてさて誰が優勝するのか……楽しみだな。
そして今か今かと結果発表の時を待ち望んでいると、隣から声をかけられた。
「やぁやぁ!!お疲れ様!!」
「あ、リルさんとカーラさん。」
「今年は優勝候補が四組かい。またまた番狂わせの予感がするじゃないか。」
俺に声をかけてきたのはリルとカーラの二人だった。
「さてさて、今年は誰が優勝するかな~。」
「聖夜祭はカーラさんは参加しなかったんですか?」
「ん?アタシかい?アタシはこうやって見てる方が好きなのさ。夏の祭りだって参加しなかっただろ?」
「そうだったんですか。」
「って、キミまだそのカーバンクル連れて歩いてたんだ?」
リルは俺の肩に乗っていたピンク色のカーバンクルに気が付くとそう言った。
「あ、なんか全然離れてってくれる気がしなくて。こんな時間になっちゃったし……なんならペットにしようかなって思ってたところでした。」
「カーバンクルをペットって……なかなかとんでもないことをしようとしてるねキミは。」
「あはは。」
ペットにしようとしていることをリルに打ち明けると、ピンク色のカーバンクルは嬉しそうに俺の首元に体をこすりつけてきた。
「きゅ~♪」
そんな様子を見てカーラが不思議そうな表情を浮かべる。
「ずいぶん懐いてるねぇ~。可愛いじゃないか。」
「すごくない?昼間からずっといるんだよ。それになんか……こうやって触ろうとすると。」
「きゅっ!!」
リルが昼間と同じくピンク色のカーバンクルに手を伸ばすと、やはりというか案の定その手を尻尾で叩かれてしまう。
「ね?」
「頑なに触らせようとはしてくれないんだね。カオルにだけ心を許してるってことかい。」
「きゅ~っ……。」
「それにすっごい睨み付けてくるんだよこんな感じで。」
ピンク色のカーバンクルは俺の肩に仁王立ちしながらリルとカーラのことを睨み付けていた。
そしてそんなやり取りをしていると、会場の上でいよいよ結果発表が行われようとしていた。
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