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第7章 動き出すヒュマノ
第254話 キメラ研究施設
しおりを挟むカオルたちが王城にて侵略を開始したと同時に、リルとセブンは聞きだしたキメラを研究しているという研究所の目の前へとやってきていた。
「ここだね。」
リルたちが立っている場所は一見普通の住宅街の一角にある一軒の建物の前だ。しかし、それはカモフラージュに使われている建物であり、内装は空っぽである。
リルはその建物の扉を蹴り破って中へと押し入ると、殺風景な部屋に一枚だけ敷かれた絨毯へと目を向けた。そして彼女がその絨毯を引っ張ると、絨毯の下には地下へとつながる隠し通路の入り口が隠されていた。
「情報通り。」
その地下へとつながる隠し通路の入り口を開けると現れた階段をリルとセブンの二人は下っていく。その道中セブンガリルへと告げた。
「この先に多数の生体反応を検知しました。大半は非戦闘員の人間のようですが、魔物のような反応もいくつか見られます。」
「はぁ~ん?性懲りもなくまだキメラを造ってるってわけね。まぁいいや、キメラが外に解き放たれる前に倒せば済む話だし。」
そして二人が階段を下りきるとそこには一風変わった空間が広がっていた。
「結構大掛かりな研究施設みたいだね。まぁキメラを造りだしてるぐらいだしこのぐらい普通なのかな。」
二人が一歩踏み出すと、頭上から機械音声が響く。
「当施設ノ研究員デハナイ生体反応ヲ検知。非常事態宣言ヲ発令シマス。」
そう機械音声が告げると、けたたましいサイレンの音が響き渡る。その状況にリルは大きくため息をこぼした。
「はぁ~、できれば見つからずにサクッと終わらせたかったんだけどなぁ~。」
「残念ながらそれは無理なようですね。」
そんな二人の目の前でガシャンと音を立てて、研究所へとつながる入り口がシェルターのようなもので閉ざされる。
「ありゃ、これは……。」
リルは持ち前の苦無でそのシェルターをつついてみるが傷一つつかない。
「セブンちゃんだっけ?これ壊せそう?」
「可能です。」
リルの問いかけにセブンはあっさりとそう答えると、機械仕掛けの槍を手に取った。そしておもむろに矛先をシェルターへと近づけていくと、槍の矛先がずぶずぶと入って行く。
それと同時にセブンは翼を広げた。
「エネルギー放出。」
そして彼女の翼が緑色に光り輝くと同時に槍が突き刺さっていたシェルターにビキビキとひびが入っていく。終いにはボロボロに崩れ去ってしまった。
「うはぁ……やっば。どうなってるのそれ?」
「申し訳ありません、その質問には答えられません。」
「そっか、まぁいいや。おかげで道が開けたよっと。」
崩れた瓦礫をぴょんと飛び越え、リルは研究所の中へと足を踏み入れた。そして戸惑っている人間の研究員たちへと笑みを浮かべながら言った。
「こんにちは、腐った研究者の皆さん?」
「……っ!!た、タレット展開!!」
研究者の一人がリモコンのようなもののボタンを押すと、天井が開き銃のようなものが現れる。そしてそれから放たれた赤い光がリルを捉えた瞬間、銃弾が彼女めがけて放たれた。
「危ないなぁ~。」
しかし彼女は持ち前の身のこなしで軽々と銃弾を回避していくと、先ほどタレットと呼ばれていた装置を起動させた研究者へ一気に近づき、彼の手からリモコンを奪った。
「えっと、停止させるボタンはこれかな?」
リルがリモコンのボタンを押すと、先ほどまでリルへと銃弾を放っていた装置は再び天井へとしまわれた。その後、彼女はそのリモコンを二度と使えないように踏み砕いた。そして逃げようとする研究者たちを一人一人確実に気絶させていく。
「ホントなら全身に苦無を刺してあげたいところだけどね~。キミたちを殺したら私もキミたちと同類になっちゃうからね。」
そんなことを呟きながらあっさりと一人で研究者たちを全員気絶させた彼女は彼らを逃げられないように縄で縛ると、セブンに向かって問いかけた。
「セブンちゃん、さっき魔物みたいな反応があるって言ってたよね?それってこの先?」
リルが指差したのは研究所という雰囲気とはかけ離れた大きな鉄製の扉だった。そしてセブンはリルの問いかけにうなずく。
「間違いありません。大きな生体反応が4つ……先日現れたキメラよりも強力な反応です。」
「ん、わかった。」
リルは表情から笑みを消すと、その鉄製の扉を開け放った。するとその先では今まさに四体の魔物同士が混ざり合っていた。
「キメラっ……。」
ポツリと忌々しそうにリルがそう呟くと、設置されていたスピーカーのような物から声が聞こえてくる。
「無粋な侵入者どもめ!!貴様らの行いもここまでだ!!」
「誰さ?」
「本来答える必要はないが、冥土の土産に教えてやろう。私の名はリカルド!!この研究施設の統括者だ。」
「じゃあキミがキメラの研究の責任者ってわけ?」
「その通りだ。そして崇高な私の頭脳によって今ッ!!史上最高最強のキメラが誕生するっ!!貴様等はそのキメラの戦闘データをとる実験体になってもらおう!!光栄だろう?もっと喜んでいいのだぞ?」
「悪趣味な……。」
リルがギリリと歯ぎしりをしている最中にも目の前で四体の魔物が一つになっていく。そしてまたしても異形で悍ましい魔物……キメラが二人の目の前で誕生した。
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