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第7章 動き出すヒュマノ

第244話 三人目の人造人間

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 ナインに連れてこられたのは、魔王城にあるトレーニングルームだった。その中心にはセブンが立っている。
 そのセブンの背後ではスリーがなにやらセブンのことを調べていた。

「スリー、セブンの起動はできそうですか?」

「問題ありません。あとはマスターが触れれば……起動シークエンスに移行します。」

「ではマスター、セブンに触れて頂けますか?」

「……わかった。」

 俺は言われるがまま、セブンの肩へと手を置いた。するとセブンはゆっくりとその瞳を開く。

機能システム正常オールグリーン識別番号シリアルナンバー07セブン……起動レディ。」

 ナインとスリーと同じ紫色の瞳を開くと、彼女は最初に俺へと目を向け、その後俺の背後に控えていたナインとスリーへと目を向けた。

識別番号シリアルナンバー03スリー識別番号シリアルナンバー09ナインの存在を確認。指揮権限マスターパスも既にミラ博士から上書きされている模様。」

 ポツポツとセブンはそう呟いた後、俺へと向かって問いかけてきた。

「新たに指揮権限マスターパスを譲渡されたのはあなたですね?」

「あぁ。」

「つまり識別番号シリアルナンバー03スリー識別番号シリアルナンバー09ナインの二人は指令ミッションコード9999に該当すると判断したのですね?」

「「間違いありません。」」

「……なるほど。」

 スリーとナインの二人の答えに一つ頷いたセブンは俺へと向かって言った。

「二人が認めているので実力的には間違いはないのでしょう……ですが、念のためこの場であなたの力を確かめさせて頂けますか?」

「やっぱりそうなるのか、まぁそうしなきゃならないんなら……仕方ないな。」

 ある程度予想できていた展開だったから、俺は躊躇いなく、収納袋から剣を取り出した。

 すると、セブンもあの機械仕掛けの槍をどこからか手に取り、背中から機械の翼を生やした。

武装展開マーシャル・オン。参ります。」

「いつでもいいぞ。」

 そしてセブンが槍を構えた瞬間、彼女の機械の翼が赤く光り、キン……という甲高い音をたてて俺の目の前から一瞬にして消えた。

「上か。」

 この動きは一回見た。二度目はかわせる。

 半歩後ろに下がると、目の前にセブンの槍が深々と突き刺さった。

「ははっ、殺す気満々だな。」

「仮にも人造人間アンドロイドを二人従えていますので、出力は最初から最大でやらせてもらいます。」

「大盤振る舞いだな。」

 床から槍を引き抜いたセブンは再び翼を光らせると、今度は壁と床、天井を使い縦横無尽に動きながら加速していく。

 そして一瞬、俺の目の前に姿を現すとその槍を突きだしてきた。

「……っ!!」

 咄嗟に槍を弾くべく剣を振るうが、俺の剣は槍に当たることはなく空を切った。

「これは……。」

 それと同時に時間の流れがピタリと止まる。

「セブンも使えるのか……アリス流剣術。」

 クルリと後ろを振り返ると、ちょうど俺の首もとへと向かってセブンの槍が突き刺さる直前だった。

「これは流石に予想してなかったな。」

 本当なら危険予知のスキル無しで実力を認めさせたかったが……こいつはしょうがない。

 止まった時間の中で俺はセブンの槍の軌道を床へと向けると、彼女の背後に回った。
 すると、時間の流れがもとに戻っていき、サクッ……と音をたててセブンの槍は床へと突き刺さる。

「っ!?」

「ほい一本。」

 理解不能な現象に一瞬動きが止まった彼女の頭にコツンと剣の峰を当てた。
 すると、セブンはあることを察した様子で武器をしまう。

「なるほど、それがあなたのスキルですか。」

「まぁな。」

 そしてセブンは俺の前で跪くと、言った。

識別番号シリアルナンバー07セブンはあなたが指令ミッションコード9999に該当すると判断したため、これより指揮権限マスターパスをあなたへと譲渡します。よろしくお願いします。」

「あぁよろしくな。セブン。」

「では、早速ですが失礼します。」

「へ?」

 突然セブンの機械の翼で包み込まれ、ポカンとしていた俺の口内に彼女の温かい舌がにゅるりと入ってくる。

「ん~っ!?」

「んっ……なるほど。かなりの情報量ですね。んむっ、これは時間がかかりそうです。」

 すっかり忘れていた……。ナイン達アンドロイドはマスターとなった俺の情報をDNAから読み取る。だからこうして接吻を交わさなければならないのだ。

 この現場だけは他の誰かには見られたくないなぁ……誤解されたくないし。
 チラリと視線を背後に送ると、俺の意図を察して動いてくれたのか、スリーがトレーニングルームの扉を抑えてくれていた。

 そしてセブンの言葉通り、当初よりも情報量がかなり多くなったらしい俺へのセブンの接吻は数十分間に渡って続いたのだった。
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