242 / 350
第7章 動き出すヒュマノ
第242話 怒ると怖~い人
しおりを挟むスリーとともにエルフの集落の方へと歩いていくと、集落の近くで今回の戦いで怪我をした人達の治療などが行われていた。
すると、俺の存在に真っ先に気がついたナインが駆け寄ってくる。
「ま、マスター!?お体は…………。」
「ナイン、マスターは問題ありません。」
心配して駆け寄ってきたナインにスリーがそう告げると、ナインは目を閉じて一つ頷いた。
「なるほど…………。マスター、リルさん達が集落のなかでお待ちです。」
「わかった。そういえば……セブンはどうしたんだ?俺、ナインに預けたよな?」
「セブンは今緊急停止状態に入っています。しばらく目を覚ますことはないかと。」
「そっか、それじゃあ先にリルさん達に会いに行こう。」
そしてナインとスリーとともにリル達が集まっているというクリスタの家へと向かう。彼女の家の扉をノックすると、クリスタの家で家事を手伝っている精霊のルビィがひょっこりと顔を出した。
「あ!!」
「こんにちはルビィ、クリスタさん達はいる?」
「ご案内します~。どうぞこちらへ~。」
ルビィに案内されながらクリスタの家の中を進んでいると、いつもの応接室へと通された。
「失礼しますクリスタ様~。カオルさんがいらっしゃいました。」
「失礼します。」
俺が中へと入ると、そこにはクリスタとリル、そしてカーラとステラの姿があった。
「ご無事だったのですね?」
俺が部屋に入るなり、クリスタが駆け寄ってきた。
「え?」
「ちょっとクリスタ~、くっつきすぎじゃない?あざといよ~。」
「心配していたものですから、ついつい。どうぞ、こちらへお座り下さい?」
「あ、ありがとうございます。」
促されるがまま、俺はクリスタの隣に座らせられる。そして俺が席につくと真っ先にリルが口を開いた。
「いやぁ~、それにしてもビックリしたよ。キミがあんな変身?みたいなことできるなんてさ。」
「変身?」
「ほら、なんか翼生やしたりしてたでしょ?」
「あぁ、これのことですね。」
俺は右手を部分龍化させて見せた。すると、これを知っているクリスタ以外の三人はまじまじと眺めてくる。
「ほぇ~、珍しいスキルだね。」
「変身……と言うよりも変質に近いか。それを使えばあの大規模な魔法も使える……という仕組みか?」
「ん?大規模な魔法?」
「覚えてないのかい?魔物を一網打尽にしたあの土魔法、それとその後それよりも強力な魔法を使ったよねぇ?」
「………魔法?」
俺は魔法の心得なんてそんなにないはず……それに魔物を一網打尽にしたって……いったい?
頭の中に大量の?が浮かんでいると、そんな俺をカバーするように後ろに控えていたスリーが口を開く。
「マスターは魔力の使いすぎで少し記憶が混濁しているのです。」
「まぁ、あれだけ強大な魔法を使えば……仕方がないことか。」
納得したようにステラは頷くと、改めて話題を切り出した。
「それで、今回あの魔物達を率いてきたのはそいつだな?」
ステラは床に転がって気絶している今回の首謀者を指差した。
「ステラはこいつに見覚えは?」
「私も永いことヒュマノにいたが、残念ながらそんなやつ見覚えはないな。本当にヒュマノが差し向けた者かもわからないぞ?」
「ヒュマノが差し向けた者じゃないってどういうことだい?」
「簡単な話だ。ヒュマノ国内で軍隊が魔物化したという噂が流れているのに、わざわざ自分が魔物化するかもしれないという戦いに志願するか?」
「……まぁ、普通ならしないだろうねぇ。」
「だろう?もしかすると、ヒュマノを装った第三勢力かもしれないぞ?」
そうステラが話す最中、クリスタが口を開く。
「それもこれもこの方から全て聞けば済む話です。」
「でも気絶しちゃってるよ?」
「気絶している今だからこそできることもあるのですよ。ふふふふ……。」
そう不気味にクリスタは笑うと、ポケットから幾つか薬の入った瓶を取り出した。すると、その薬がいったいなんなのかを知っているらしいカーラは少し顔をしかめながら言った。
「超強力な自白剤と魔力封印薬……それと筋肉弛緩薬だね?」
「流石はカーラ、良くわかっていますね。今のうちにこれを飲ませておきましょう。」
クリスタは気絶している小柄な男に、次々にその薬を飲ませていく。気絶しているのにも関わらず薬を流し込まれると、ビクビクと身体が震えている。
その様子をカーラとリルは少し引き気味に眺めていた。
「クリスタって怒ると結構エグいことするよね。」
「あぁ、だから怒らせちゃいけないのさ。」
「ふふふふ……ふふふふふふ……。」
この後この男に待っている末路は悲惨なものだろう。
妖しく、そして嗜虐敵に笑いながら薬を流し込むクリスタは今まで見たことがないほど狂気的だった。
マジで怒らせちゃいけない人だということを、俺は再認識するのだった……。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる