238 / 350
第7章 動き出すヒュマノ
第238話 因縁の一発
しおりを挟む
ステラが椅子を蹴り上げ、作った一瞬の隙を見て俺達は戦闘準備を整えた。
「ハハハハ、カーラ……こうして肩を並べて戦うのは久しいな。」
「ぶつかり合ったのはつい最近だけどねぇ。ま、味方なら心強いよ。」
「さて、イリアス我々は準備が整ってしまったが……どうする?」
「怯むな!!囲んで叩け!!」
イリアスの号令とともに浮き足立っていた兵士達が俺達を取り囲むような動きを見せるが……ステラがスッと横に一閃、杖を振るうと兵士達はピタリと動きを止めた。
「フリーズ……。私の学舎で好き勝手な行為はさせないぞイリアス。」
「魔法を使ってくるのは想定内だ!!魔崩の輝石!!」
イリアスは胸元から光る宝石のような物を取り出すと床に向かって叩きつけた。するとそれは、まるでガラスのようにアッサリと砕け散り黒い霧のようなものが部屋の中に充満した。
それと同時に動きを止めていた兵士達が少しずつ動き始める。
「ほぅ……貴重な輝石を使ってまで私達を捕らえたいか。」
「万が一にも国家に対する反逆者を取り逃がしてしまっては我々の顔に一生とれない泥を塗るようなものだからな。さぁ、やれ!!」
動けるようになった兵士達が各々武器を振り上げた瞬間、俺は鞘から剣を抜き放った。
そして剣を鞘へと納めると兵士達が持っていた武器に切れ目が入り、ポロポロと床に落ちていき使い物にならなくなってしまう。
それを真横で眺めていたステラがポツリと言った。
「おぉ、なんとも恐ろしい剣技だ。抜刀から納刀までの動作が見えなかった。」
「これでも師にはまだまだ及ばないが……な。」
「使者殿にも師がいるのか?是非とも合ってみたものだな。」
そんな事をステラが話していると、隣でカーラが呆気にとられていた兵士達の頭上から巨大な杖を振り下ろし、一人一人気絶させていく。
「舐めてもらっちゃあ困るねぇ、アタシ達魔女は確かに魔法の腕を認められてそう呼ばれちゃいるが……魔法が使えないって時でもある程度は戦えるんだよ。」
「カーラの筋力には強化魔法をかけても勝てないからな。」
「うるさい。」
杖で物理的に気絶させていくカーラの横で、ステラも細い杖をを槍のように使い、兵士達喉元を突き気絶させていく。
すると、あっという間に部屋の中にはイリアスだけがポツンと取り残されていた。
「く、くそっ!!」
率いていた兵士達がやられたのを見ると、イリアスはすぐに逃げ腰になり、踵を返して逃げようとする。だが、ヤツが部屋を出る寸前で俺は動き、一瞬でヤツの目の前へと移動した。
「なっ……!?」
「逃がすわけないだろ?お前に苦しめられた人達の痛み……苦しみを味わって貰おう。」
ぐっ……と右手の拳を握りこむと、ビキビキと意図していないのにも関わらず腕が黒い鱗で覆われ、部分龍化が発動する。
しかし、そんなことお構いなしに俺は全力で握った拳をヤツの顔面めがけて振り抜いた。
「ぶっ……!?」
拳がイリアスの顔面を捉えたと同時に、バキバキといろんなものが砕ける感覚が直に伝わってくる。そしてヤツはとてつもない勢いで吹き飛んでいくと、廊下の行き止まりの壁にめり込み止まった。
「ふん。」
手に伝わってきた感覚からして顎の骨はもちろん、歯もボロボロになっていることだろう。次に会うとき……どんな顔になっているのか楽しみだ。願わくば整っていた顔が醜く歪んでいれば滑稽なのだがな。
殴りたかったヤツを思いっきりぶん殴ってスッキリしていると、校長室からステラとカーラが出てきた。
「ハハハハ、まるで人間の張り型だな。この学舎の名所になりそうだ。」
「呑気に笑ってる場合かい?これからどうするのさ。」
「ヒュマノにいられなくなった以上、そっちの国に世話になるしかないだろう?」
「だってさ?」
チラリとカーラは俺の方に視線を向けてきた。
「変な気を起こさなければ構わない。」
「使者殿の心が寛大で助かるよ。」
「アタシはちょいと甘い気がするけどねぇ。ま、いいさ騒ぎが広まる前にとっとと帰るよ。」
カーラがトン……と杖を床につけると再び魔法陣が俺達の足元に現れ、光を放つ。そして次の瞬間にはカーラの家の前に転移してきていた。
「カオル、ステラはアタシの家で預かるよ。その方が良いだろ?」
「そうですね。」
何気ないやり取りをしていると、ニヤリとステラが笑う。
「ほぅ?使者殿の名はカオル……というのか。随分親しいようじゃないかカーラ?」
「なっ、べ、別に……。」
「使者でもカオルでも好きなように呼べば良いさ。この国で暮らすことになる以上いずれ知られるものだった。」
「では私もカーラと同じくカオルと呼ばせて貰おうか。」
「好きにしてくれ。……それじゃあカーラさんステラのことは頼みました。」
「あぁ、アタシが目を光らせとくよ。」
こうして北の魔女と南の魔女がこの国に住まうことになったのだった。
「ハハハハ、カーラ……こうして肩を並べて戦うのは久しいな。」
「ぶつかり合ったのはつい最近だけどねぇ。ま、味方なら心強いよ。」
「さて、イリアス我々は準備が整ってしまったが……どうする?」
「怯むな!!囲んで叩け!!」
イリアスの号令とともに浮き足立っていた兵士達が俺達を取り囲むような動きを見せるが……ステラがスッと横に一閃、杖を振るうと兵士達はピタリと動きを止めた。
「フリーズ……。私の学舎で好き勝手な行為はさせないぞイリアス。」
「魔法を使ってくるのは想定内だ!!魔崩の輝石!!」
イリアスは胸元から光る宝石のような物を取り出すと床に向かって叩きつけた。するとそれは、まるでガラスのようにアッサリと砕け散り黒い霧のようなものが部屋の中に充満した。
それと同時に動きを止めていた兵士達が少しずつ動き始める。
「ほぅ……貴重な輝石を使ってまで私達を捕らえたいか。」
「万が一にも国家に対する反逆者を取り逃がしてしまっては我々の顔に一生とれない泥を塗るようなものだからな。さぁ、やれ!!」
動けるようになった兵士達が各々武器を振り上げた瞬間、俺は鞘から剣を抜き放った。
そして剣を鞘へと納めると兵士達が持っていた武器に切れ目が入り、ポロポロと床に落ちていき使い物にならなくなってしまう。
それを真横で眺めていたステラがポツリと言った。
「おぉ、なんとも恐ろしい剣技だ。抜刀から納刀までの動作が見えなかった。」
「これでも師にはまだまだ及ばないが……な。」
「使者殿にも師がいるのか?是非とも合ってみたものだな。」
そんな事をステラが話していると、隣でカーラが呆気にとられていた兵士達の頭上から巨大な杖を振り下ろし、一人一人気絶させていく。
「舐めてもらっちゃあ困るねぇ、アタシ達魔女は確かに魔法の腕を認められてそう呼ばれちゃいるが……魔法が使えないって時でもある程度は戦えるんだよ。」
「カーラの筋力には強化魔法をかけても勝てないからな。」
「うるさい。」
杖で物理的に気絶させていくカーラの横で、ステラも細い杖をを槍のように使い、兵士達喉元を突き気絶させていく。
すると、あっという間に部屋の中にはイリアスだけがポツンと取り残されていた。
「く、くそっ!!」
率いていた兵士達がやられたのを見ると、イリアスはすぐに逃げ腰になり、踵を返して逃げようとする。だが、ヤツが部屋を出る寸前で俺は動き、一瞬でヤツの目の前へと移動した。
「なっ……!?」
「逃がすわけないだろ?お前に苦しめられた人達の痛み……苦しみを味わって貰おう。」
ぐっ……と右手の拳を握りこむと、ビキビキと意図していないのにも関わらず腕が黒い鱗で覆われ、部分龍化が発動する。
しかし、そんなことお構いなしに俺は全力で握った拳をヤツの顔面めがけて振り抜いた。
「ぶっ……!?」
拳がイリアスの顔面を捉えたと同時に、バキバキといろんなものが砕ける感覚が直に伝わってくる。そしてヤツはとてつもない勢いで吹き飛んでいくと、廊下の行き止まりの壁にめり込み止まった。
「ふん。」
手に伝わってきた感覚からして顎の骨はもちろん、歯もボロボロになっていることだろう。次に会うとき……どんな顔になっているのか楽しみだ。願わくば整っていた顔が醜く歪んでいれば滑稽なのだがな。
殴りたかったヤツを思いっきりぶん殴ってスッキリしていると、校長室からステラとカーラが出てきた。
「ハハハハ、まるで人間の張り型だな。この学舎の名所になりそうだ。」
「呑気に笑ってる場合かい?これからどうするのさ。」
「ヒュマノにいられなくなった以上、そっちの国に世話になるしかないだろう?」
「だってさ?」
チラリとカーラは俺の方に視線を向けてきた。
「変な気を起こさなければ構わない。」
「使者殿の心が寛大で助かるよ。」
「アタシはちょいと甘い気がするけどねぇ。ま、いいさ騒ぎが広まる前にとっとと帰るよ。」
カーラがトン……と杖を床につけると再び魔法陣が俺達の足元に現れ、光を放つ。そして次の瞬間にはカーラの家の前に転移してきていた。
「カオル、ステラはアタシの家で預かるよ。その方が良いだろ?」
「そうですね。」
何気ないやり取りをしていると、ニヤリとステラが笑う。
「ほぅ?使者殿の名はカオル……というのか。随分親しいようじゃないかカーラ?」
「なっ、べ、別に……。」
「使者でもカオルでも好きなように呼べば良いさ。この国で暮らすことになる以上いずれ知られるものだった。」
「では私もカーラと同じくカオルと呼ばせて貰おうか。」
「好きにしてくれ。……それじゃあカーラさんステラのことは頼みました。」
「あぁ、アタシが目を光らせとくよ。」
こうして北の魔女と南の魔女がこの国に住まうことになったのだった。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!
クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』
自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。
最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる