魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

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第7章 動き出すヒュマノ

第223話 ヒュマノ襲来

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 クリスタの家で、俺が目覚めてから3日が経過した。彼女の薬のお陰で体の調子もだいぶ戻りつつあり、彼女の家の家事等も手伝えるようになっていた。
 今日も彼女の家で家事を手伝っていると、なにやら外があわただしく、様子がおかしい。

「ん?なんか外が騒がしいな。」

「なにかあったのでしょうか……。」

 今はクリスタは外出していていない。ここにいるのは彼女の家で家事を手伝うルビィと俺だけ……。そんなところに、以前ここを訪れたときに出会ったエルフのリリルが飛び込んできた。

「く、クリスタ様っ!!……ってお前はあの時のっ。」

「クリスタ様は外出中です~。」

「なんてことだ、クリスタ様がいないときに……
。」

「何があったんだ?」

 俺が彼女に問いかけると、彼女は歯を食い縛りながら言った。

「人間が……攻めてきた。」

「なんだって!?」

「外でなんとか食い止めてはいるが……数が多い。魔術師も何人もいる。」

「た、大変です~!!」

 ルビィがあわてふためく最中、俺はリリルに問いかける。

「人手が足りていないのなら、俺に手伝わせてはくれないか?」

「いいのか?同じ人間……なんじゃ?」

「まぁ、同じ人間には変わりないが……俺はヒュマノの敵だからな。」

「……なら頼む。」

「あぁ、クリスタに借りを返すいいチャンスだ。」

 俺は収納袋から剣を取り出す。すると、ルビィが慌てながら俺の前に飛び出してくる。

「だ、ダメですよ!!クリスタ様に安静にって言われてますよ!!」

「非常事態だ。」

「で、でも~……。」

「大丈夫だ。すぐに戻る。前線に連れていってくれ。」

「わかった。着いてきてくれ!!」

 俺はルビィを無理矢理説得すると、リリルと共にクリスタの家を飛び出す。

 エルフの集落をリリルと共に走っていると、やはり集落の中はパニック状態になっていた。

「おい人間!!」

「カオルだ。」

「ッチ!!カオル、クリスタ様にもらったペンダント持っているか?」

「あぁ、これのことだろ?」

「それを常に首からさげていろ!!でないと仲間に誤射されるぞ!!」

「了解。」

 走りながらペンダントを首からさげて、集落から森へと駆り出して前線へと向かっている途中、リリルが言った。

「前線はもうすぐ先だ、私達は木の上から援護する!!」

「わかった。くれぐれも背中を射たないでくれよ?」

「善処する。」

 そんな冗談を交わして、リリルは木の上へとジャンプして行った。

「さて、早く向かうか。」

 より一層スピードを上げて森の中を突き進んでいると、足を怪我したエルフへと向かって剣を振りかざす鎧を身に纏った人間の姿が見えた。

「魔族に加担する種族は……ここで消えてもらう!!」

「くぅ、人間め……。」

 そして無慈悲に振り下ろされた剣を、俺は自分の剣の峰で受け止める。

「っ!!何者だ!!」

「エルフの味方の人間だよ!!」

 騎士風の男の剣を弾き飛ばすと、俺は兜の上から思い切り峰打ちをかましてやった。すると、派手に兜は凹みその男はフラフラとよろめきながら倒れる。

 そして俺は足を怪我しているエルフへと駆け寄った。

「大丈夫か?」

「そ、そのペンダントは……。」

「ここから離れるぞ!!」

 俺はピョンと木の上へと飛び上がると、弓を射っていた一人のエルフの隣に降り立った。

「彼女を頼む。」

「え!?」

 足を怪我したエルフを預けると、俺は再び地面へと降り立った。すると、目の前に先ほど倒した男と同じ鎧を身に纏った騎士団が立ちはだかってくる。

「貴様、なぜエルフに加担する!!」

「ヒュマノが嫌いだから。それだけだ。」

「人間なのにヒュマノが嫌いだと?笑わせるな反逆者め、殺せぇ!!」

 その号令と共に統率のとれた動きで俺を取り囲み、彼らは襲いかかってくる。

「ふっ!!」

 たとえ周りを囲まれていようと、突破口さえ開いてしまえば問題ない。俺は彼らが距離を詰めてくるよりも早く動き出すと囲んでいた一人の騎士を峰打ちで倒す。
 すると、意外にも簡単に一人を倒しただけで統率は乱れる。その隙を見計らってエルフ達が矢を放ち、ヒュマノの奴らを攻撃してくれている。

「あの人間は味方だ!!当てるなよ!!」

「「「はいっ!!」」」

 リリルが木の上で指揮を執ってくれている。なんなら今は人間よりも統率がとれているようだな。

「上のエルフは魔法で撃ち落とせ!!」

 弓を放っているエルフを厄介と思ったのか、人間達の軍隊の背後にいる指揮官らしき男が声を上げた。
 すると、杖を持った魔法使い達が一斉に詠唱を始める。

 だが、その詠唱は遅い……。カーラに比べれば亀とウサギ位の違いがある。攻撃するには充分だった。

「そうはさせないぞ?」

「なっ!?ぐぁっ……。」

 鎧をまとっていない魔法使いは軽く峰打ちしただけで意識を刈り取れる。

 そして魔法使い達を片付けたあと、俺は人間達の指揮官へと視線を送り、人指し指でやつを指差した。

「次はお前だ。」

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