魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

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第6章 龍闘祭

第213話 龍へと変わりゆく体

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 衝撃の龍昇華についての事実を知った後、ナインとスリーによるメディカルチェックは前回よりも少し長い時間をかけて体の隅々まで時間をかけて検査しようやく終了が告げられた。

「マスター、お疲れさまでした。メディカルチェックはこれにて終了です。」

「ん、今回は前回よりも時間かかったな。」

「マスターの体を細胞一つ一つを前回のメディカルチェックの際のデータと照合して変化がないかを確かめましたので、やはり少々お時間をいただきました。」

 そう口にしてひたすらに記録をとっていたナインに俺は問いかける。

「それで、俺の体に何か変化はあったのか?」

「結論から言わせてもらえば、前回と肉体自体が少々変わりましたね。」

「肉体自体が変わったってどういうことだ?特に体に変化はないけどなぁ。」

 改めて自分の体を見てみるが特に変わった様子はない。だが、二人のメディカルチェックによると俺の体は変化しているらしい。

「マスターの仰っている通り、見た目での変化はほとんど見られません。ですが……いえ、一番ご理解していただけるのはご自身のステータス画面を確認していただけるとお分かりになるかと思います。」

「ステータスか。」

 ステータスはさっき確認したんだけどな。

 そう思いながらも、もう一度ステータス画面を開いて上から順々に確認していくと、ある項目で俺の目線が止まった。

「種族……日本人(?)?んんん?」

「御覧の通りなのですが、すでに龍昇華の果実を食べたことによる肉体の変化がステータスの種族の項目に表れているのです。(?)というのは、90%の体の構造は表記してある種族であるものの、残りの10%程度がすでにその種族とは違う肉体になっている時に現れる表記です。」

「…………。つまり、俺の体の10%はもう龍になりかけてるってことか。」

「そういうことになりますね。」

「ちなみに治す方法は?」

「龍昇華の果実を摂取した人間が元の人間に戻ったというデータは過去にありませんので……解明にはかなりの時間と実験を繰り返すことになるかと思われます。」

「そうか。」

 まぁ、でも仕方がないっちゃ仕方がないことかな。自業自得だし、人間の姿から龍の姿になっていくのには不安はあるが、ラピスみたいに人間の姿にも変身できるのなら……ありなのかもしれない。
 ポジティブに考えると日本人って種族のところが(?)になったってことは、俺はこっちの世界の人達に近づいてきてる証だとも思う。それはそれで悪くはない。

「それにしても龍の姿に人間すらも変えるってとんでもない力を秘めていたんだな、俺が食べた龍昇華の果実はさ。」

「龍昇華は龍脈と呼ばれる大地のエネルギーを1000年間溜め込んでようやく花をつけ、果実を実らせる特殊な植物です。それに秘められている濃密で強力なエネルギーは摂取した龍でない者を龍へと変えるのは容易でしょう。」

「とんでもないものを食わされたな。」

 今更ながらそう思う。

「で?一つ質問なんだが、俺が龍になっていくにつれて自我を失ったりとか、そういうのはないよな?」

「ありません。龍化が進んでいくにつれてステータスがどんどん増加していき、力のコントロールが難しくなる可能性はありますが。」

 また最初ここにきてステータスの果実を食べたときに部屋のドアを破壊してしまった時みたいなことが起こりうるのか。それは気をつけないと……。

 そう思っていると、二人は立ち上がりこちらを向いて言った。

「それではマスター。メディカルチェックも終了しましたので、早速ですがその体の性能を実戦で確かめましょうか。」

「やっぱり戦闘訓練はやるんだな。」

「これもデータ収集のためです。」

 そして俺は二人とトレーニングルームに移動すると、早速訓練用の木剣を収納袋から取り出して構えた。すると、まず最初に前に立ったのはスリーだった。

「ではマスター、最初はスリーがお相手します。」

「あぁ、頼む。」

 スリーは自分の武器である銃を両手に構えると早速俺へと向かって撃ってきた。いつもなら銃口を見て弾道を予測して躱すんだが、なぜか今は弾がこっちに向かって飛んでくるのがすごくゆっくりに見えた。特に危険予知のスキルが発動しているという感じでもない。
 不思議に思いながらもスリーの放った銃弾を全て躱すと、彼女に一気に詰め寄った。

「……!」

 それに一瞬スリーは驚いたような表情を浮かべる。

「ふんっ!!」

 一瞬足を止めたスリーへと向かって木剣を振り下ろす。しかしそれはスリーにあっさりと躱され、反撃に至近距離で銃弾を放たれた。

「ほっ!!」

 至近距離で向かってくるそれを俺は木剣で全て弾く。龍昇華の果実を食べてから明らかに動体視力が上がっているらしい。スリーの放つ弾が見える。

 咄嗟に距離をとってきたスリーへと向かって俺は木剣を強く握ると、飛閃を放つ。

「なるほど……これは予想以上です。」

 惜しくもそれは避けられてしまったが、スリーの背後のトレーニングルームの壁に大きな爪痕を残す。

「マスター、それでは少しスリーも出力を上げましょう。」

 お、いよいよスリーが本気で来るかな?彼女の本気に今の俺がどこまで応えられるか、試そうじゃないか。
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