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第6章 龍闘祭

第212話 龍昇華の本当の効果

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 俺が優勝賞品だった龍昇華の果実を食べたあと、五龍会合は幕を閉じ、五老龍達は各々どこかへと飛び去っていった。
 各々が飛び去っていくなか、最後まで残っていた俺とラピス。二人だけになるとラピスはため息混じりに口を開いた。

「全く、龍昇華の果実が賞品として出てきたのはよいが……まさかステータスの果実と変わらんものだったとはのぉ~。」

「俺が龍じゃなかったから本当の効果が発揮されなかったのかもしれないぞ?」

「それもあるやもしれんが……それにしてもだ。伝承にあるような強大な力、そして龍としてさらに進化するようなモノには我は見えなかったな。エルデの言っていた通り眉唾物だったか。伝承とは信じるだけ無駄だな。」

 残念そうにラピスは呟くと龍の姿へと変身した。

「まぁ、此度の目的は達成した。我のカオルの優秀さをやつらに知らしめることができたからな!!さぁ、帰るぞカオル。」

「あぁ、そうだな。」

 ラピスの背中にしがみつくと彼女は大きく翼を一つ羽ばたかせた。すると一気に遥か上空へと舞い上がる。

「さぁ行くぞ~!!」

「くれぐれも安全運転でな。」

「むはははっ!!善処する!!」

 ラピスはそう言ったものの、彼女の機嫌が良かったせいか、最初にここに来たときよりもかなりスピードを出して飛んでいた。










 そしてひたすらにラピスにしがみついていること数分で、あっという間に魔王城の城下町の近くに着陸した。

 そこでラピスは人の姿へと姿を変える。

「うむ、昼飯前には着いたな。」

「どっかの誰かさんが飛ばしすぎたせいで、まだ昼ごはんまではかなり時間があるぞ。」

 そうなると、城へと帰って俺を待っているのはスリーとナインによる戦闘訓練。五老龍の従者達を相手したあとにあれをやらされるのはなかなかキツいなぁ。

 そんなことを思いながら城へと戻ると、以前見たことのある光景が俺を待っていた。

「「おかえりなさいませマスター。」」

「ただいま、ナイン、スリー。」

 城へと帰って来た俺を待っていたのはナインとスリーだった。この光景は前にも見たことがある。ちょうどカナンとラースホエールを倒したあとと同じだ。

 今回は戦闘訓練に連れていかれるのかな~と思っていると、いつの間にかフッと目の前から姿を消した二人に俺は両腕を拘束されていた。
 
「!?!?」

「マスター、帰って来て早速で申し訳ないのですが……メディカルチェックを受けていただきます。」

 俺の右腕を拘束するスリーがそう言った。

「め、メディカルチェックって……前にやったじゃないか?それに今回はスキルを使いすぎた感じもしないし……必要か?」

「確かにスキルの過剰使用の傾向は無いようです。ですが、マスターのステータスが今朝と違っているのはどうしてでしょうか?」

「それは龍昇華の果実って果物を食べたからで……。」

 そう説明すると、ナインとスリーは顔を合わせてコクリと頷く。

「やはりメディカルチェックが必要です。ついてきて頂きます。」

「あ、え?ちょ、ちょちょっ!?」

 そしてズルズルと俺は二人に引き摺られ、城の中へと連れ込まれると、彼女達の部屋に連れ込まれベッドの上へと寝転がされた。
 二人は以前と同じように俺の体にペタペタと何かの器具を取り付けていく。その最中スリーが口を開く。

「マスターは龍昇華というものが何なのかご存知でしょうか?」

「いや……詳しくは知らないけど、なんか龍が進化するのを促す?みたいな話は聞いたけど。」

「はい、龍昇華の果実は龍種を進化へと導き、力を大きく高めるものです。しかし、それはあくまでも食するのが龍しかいなかった故に広まった伝承です。龍昇華の果実にはもう一つ……ある効果があるのです。」

「へぇ、その効果ってのは?」

「龍昇華の果実を口にした龍種以外の種族の肉体を龍種へと近付けるという効果があるのです。」

「はいっ!?」

 じゃああれを食べた俺は……人間から龍に変わり始めてるってことなのか!?

「ですからメディカルチェックが必要なのです。なにせ、龍種が食したという記録は多く残っているのですが、人間がそれを食した後の記録が少ないのです。」

 それならもう甘んじてメディカルチェックは受けておこう。食べてしまった以上もう後戻りはできないし、自分の体に何が起こり始めているのか知っておかないと……な。
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