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第6章 龍闘祭

第207話 vsソニア

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 俺が剣を構えると、ソニアは憎たらしそうな表情を浮かべて言った。

「あんた、まだその姿のままで闘うつもり?」

「この姿の方が慣れてるので。」

「はっ……そんなの龍として失格。とんだ恥さらし。嫌でもあんたが本来の姿で闘わざるをえないようにしてやるわよ。その上で……叩き潰してやるわ!!」

「双方、準備は良いようだな?では……始めッ!!」

 そしてエルデが仕合開始の合図を告げたその瞬間、俺の周りを取り囲むように魔法陣が現れる。

「火焔包囲陣!!」

 ソニアがそう叫んだ瞬間、魔法陣から大量の火の玉が放たれる。

「いよっ!!」

 俺へと向かってくる火の玉を剣で弾き、避けているといつの間にか狙いを外れた火の玉が着弾した地面から土煙が上がっていて、視界が悪くなっていた。

「これは……。」

 狙いは最初から俺への攻撃ではない?本命は…………。

 狙いに気がついた次の瞬間、土煙を貫きながら真っ赤に燃える焔が俺へと向かって飛んできた。

「あぶなっ!!」

 咄嗟に横へと飛び退くと、先ほどまで俺がいた場所をとんでもない熱量の焔の光線が通りすぎていく。

「あらあら、よく避けたわね。」

 土煙が晴れると、ブレスを放ったとみられるソニアがいた。

 さっきの一連の攻撃を受けてわかったが……彼女はリッカとは比べ物になら無いほど戦闘経験が豊富らしい。

 初撃は俺を動かし、視界を封じるための土煙を巻き上げるためのもの。言わば避けられることを前提とした次の攻撃への布石。最初の火の玉がもっと正確に俺のことを狙って来ていた場合……気付くのが遅くなっていたかもしれないな。

「ま、ブレスを避けたのは褒めてあげるわ。それだけだけど……ねっ!!」

 そう言うと彼女は口から焔を溢しながら横凪ぎにブレスを放ってきた。

「これは……避けれないか。」

 俺は剣に魔力を籠めると、迫り来るブレスに向かって振るう。

「フンッ!!」

 魔力を纏わせた剣でブレスを切り裂いて無理矢理通り道を作ると、俺はソニアへと向かって距離を詰める。

「お返しだっ!!」

「甘いのよ。」

 ソニアへと向かって剣を振り下ろすと、ガキン……と硬い物を切ったときのような手応えが伝わってくる。何に阻まれたのかと疑問に思っていると剣とソニアの体の間に彼女の尻尾が挟まれていた。

 俺の剣を止めたのはコレか。

 そして剣を止めた尻尾へと目を向けると、彼女の尻尾に力が籠り、剣ごと体が押され始める。

「ほら、吹き飛ばしてあげるわ。」

「っ!?」

 彼女が尻尾に力を籠めて振るうと、俺はアッサリと吹き飛ばされてしまう。それと同時にソニアは羽ばたいて加速すると、吹き飛ばされている最中の俺に向かって、焔を纏わせた拳を振るってきた。

「チィッ……。」

 迫ってくる焔を纏った拳を剣の峰で滑らせ避けると、アリス流剣術の初の太刀である飛閃を放つ。剣から放たれた斬撃は、ソニアの体へと向かっていくが……彼女が軽く息を吐くように口から焔を吐くと飛閃は掻き消されてしまった。

「マジか。」

「面白い小技を使うじゃない?ま、その程度の火力じゃ効かないけど。」

 飛閃があんなにアッサリと掻き消されてしまうとなると……今現状アリス流剣術の技でソニアに対抗できる技はない。

 となれば……今の自分の力と上手く組み合わせてなんとかするしかないな。

 俺は剣に魔力を籠めると、再びソニアへと向かっていく。そしてその途中で剣を何度も振るい魔力の籠った飛閃を飛ばす。が、ソニアはそれを全て尻尾で弾いてしまう。

「同じ事の繰り返し?じゃあ……もう終わりね。」

 彼女は再び口に焔を溜めると、真下に入り込んだ俺へと向かって吐き出した。

 俺はそれを避けるために、魔力の細分化を使い空中へと飛び上がると、ソニアの頭へと向かって剣を峰打ちで振り下ろす。

「っ!!いったいわねっ!!」

 ギロリとこちらを睨み付けてきたソニアは焔を纏わせた腕を振るって俺を飛び退かせた。

「剣の峰打ちじゃ……気絶は狙えなさそうだな。」

 さっきの手に伝わってきた感触……明らかにクリーンヒットだったんだが。それでも少し痛がるだけ、タフさもリッカ以上だな。

 俺は剣を鞘へと納めると、収納袋から魔神の腕輪を取り出して腕にはめた。

「あら、もう剣はおしまい?」

「生憎攻撃のレパートリーは豊富でな。」

 物理攻撃があまり効かないとなれば、今度は雷撃を試してみようじゃないか。

 さ、第2ラウンドと洒落こもうか?

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