魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

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第5.5章 大きくなりたいメア

第188話 エルフと幻獣

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 クリスタに広い客間へと案内された俺とメアは、彼女に促されるままクリスタと向かい合うようにテーブルを挟んで座った。
 するとそこにお茶とお茶菓子を持った精霊のルビィが姿を現した。

「お待たせしました~!!」

「ありがとうルビィ。」

 テーブルの上にお菓子とお茶を並べると、ルビィはまた部屋を出て行った。そしてお茶の入ったカップにクリスタは手を伸ばすと一口それを口にした。

「お二方もどうぞ?この集落で育てた茶葉で入れたお茶なんですよ。」

「いただきます。」

 俺とメアはそろってそのお茶に手を伸ばして口にしてみた。すると香り高い高級な玉露を飲んでいるかのような芳醇な香りが口いっぱいに広がった。この世界に来てからはこういう緑茶のような飲み物を飲んだのは初めてかもしれない。

「フフフ、とても良い香りでしょう?」

「はい、すごく美味しいお茶ですね。」

「エルフ自慢のお茶なんですよ。でも残念ながら幻獣様のお口には合わなかったようですね。」

 ちらりと隣を見てみると苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるメアの姿が……。確かにメアにはちょっとばかしこのお茶は苦かったかもしれないな。

「すごく苦い。お菓子食べる。」

 ルビィが持ってきたお菓子を口にしたメアは目に見えて表情が明るくなった。

「甘い、美味しい!!」

「そちらはお口に合ったようで何よりです。」

 そして少しの間ゆっくりしていると、クリスタが今回の本題について話を始めた。

「さて、そろそろ本題に入りましょうか。幻獣様は世界樹の霊薬が欲しいということで間違いないでしょうか?」

「うん。」

「ではこちらをどうぞ。」

 そう言って彼女はあっさりとテーブルの上に小瓶に入った赤い液体を置いた。

「え、いいの?」

「もちろんです。わたくし達は幻獣様のお願いとあれば霊薬の1つや2つぐらい差し出しますよ。どうせわたくし達だけでは使いきれませんしね。」

「ん、ありがと。」

 メアは大事そうにその霊薬をポケットの中へとしまう。

「さて、では次は貴方の疑問に答えましょうか。わたくし達エルフがなぜこんなに幻獣様を崇め、敬うのかを。」

 メアに霊薬を渡した彼女はまたエルフの歴史について語ってくれた。

「先ほどエルフと人間は一時期対立関係にあったことを話しましたね?」

「はい。」

「その対立関係にあった最中、わたくし達は一度滅亡の危機を迎えました。このエルフの住んでいる森が人間に包囲され、火が放たれたのです。」

 おいおい、人間……なかなかとんでもないことやってんなぁ。森を取り囲んだ上に火を放つとか……やってることが人の道を外れてる。

「そしてこの集落へと火の手が迫った時……この森に棲んでいた幻獣様たちが集結し、人間の放った炎を消し、さらには自らの命をなげうってまでわたくし達を守ってくれたのです。」

「そうだったんですね。」

「わたくし達はそれまで幻獣様には触れず、近づかずという規則を持って暮らして来ていました。崇め奉っていたわけでもありません。しかし、それでもあの方々は命をとしてわたくしたちを守ってくださいました。その出来事をきっかけに、わたくし達エルフは幻獣様を崇め、奉り敬うようになったのです。」

 なるほどな、やっと疑問が全部解けた。結局、エルフたちが人間を敵視しているのも、幻獣をまるで神のように敬っているのも……すべては戦争が要因だったというわけだ。

 俺がエルフたちについて理解を深めた後、彼女は今度はこちらの番と言わんばかりに俺に問いかけてきた。

「そういえば、ジャックは元気でやっていますか?」

「ジャックさんは元気ですよ。アルマ様の執事として毎日頑張っています。」

「そうですか、彼は昔とちっとも変わりませんね。まぁ彼の一族が魔王に代々仕えている一族ですから仕方のないことかもしれませんが……。」

 やれやれと言った様子で彼女は言う。

「そういえば、まだ今代の魔王のお顔を拝見していませんでしたね。あとで伺いましょうか。」

「え!?」

「フフフ、久しぶりにジャックの顔も見ておきたいですから。それに……貴方はあのお城で料理係として雇われたのでしょう?あなたの作る物にも興味があります。」

 クスリと笑いながら彼女がそう言うと、俺の隣に座るメアが言った。

「パパの料理は世界一美味しい。私が保証する!!」

「お、おいメア……。」

「幻獣様がそう仰るのでしたら間違いありませんね。では今度はこちらから……伺いましょう。」

 悪戯っぽく笑う彼女のその言葉は、冗談で言っているという感じではない。この感じだと本当に数日後……近いうちに魔王城に訪問してくるかもしれない。

 まぁその時ジャックがどんな反応をするのか楽しみだからこのことは彼には内緒にしておこう。

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