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第5章 成長する2人

第179話 vsダイミョウウオ

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 しばらく椅子に腰かけて目を瞑って、休んでいるとツンツンと横腹をつつかれた。

「ん……?」

「あ、カオルさん。着いたみたいですよ?」

「あぁ、そうか。」

 体を起こして立ち上がると、船の上に異様な光景が広がっていた。

「……これは、どうなってる?」

 というのも、色んな魚が船の床に散らばっているのだ。ピチピチと跳ねているところを見るに打ち上げられてから時間は経っていないようだが……。

「あ、これは……その……ちょっと暇だったので釣りをしてたらこんなに釣れちゃいました。」

 申し訳なさそうにカナンは言った。

「釣ったのはいいんですけど、そのあとどうしたらいいのかわかんなくて……。」

「なるほどな。釣りあげた魚はこうするのが一番だぞ。」

 収納袋から一本ナイフを取り出すと、俺はカナンが釣ったという魚のエラを切り、尻尾を断ち切って汲み上げた海水の中に放り込んだ。

 これは魚を締めるって目的もあるが、一番の目的は血抜きだ。

 次々とカナンが釣った魚を締めて処理して水の中に放り込んでいくと、あっという間に船の上が綺麗になった。

「こいつで最後っと。」

 最後の一匹を海水の中に放り込むと、飛び散った血を汲み上げた海水で洗い流す。

「ありがとうございます。カオルさん。」

「問題ないさ。知らなくても無理はない事だしな。後で分かりやすいようにゆっくり目の前でやって見せるよ。今はダイミョウウオに集中しよう。」

 俺は上着を脱いで、水中に入るために予め中に着込んでいたウェットスーツに着替える。

「あ、ぼ、ボクも着替えてきます!!」

 カナンは船の船室へと走っていくと、水着に着替えて戻ってきた。

「準備できましたカオルさん。」

「ん、カナン海に入る前にこれを。」

 俺はカナンに人魚のイヤリングを手渡した。

「これは何ですか?」

「人魚のイヤリングってアーティファクトだ。それがあれば海の中でも息ができる。」

「へぇ~、すごいですね。あれ?で、でもボクがこれを着けたらカオルさんは?」

「俺はこっちのアーティファクトで十分だ。これがあれば海の中でも自由に動けるんだ。だから、ダイミョウウオのヘイトは俺が買う。カナンは隙を見て攻撃してくれ。」

「わかりました!!」

 打ち合わせを終えて、水の狩人を指にはめると、大きく息を吸い込んで海の中へと入る。
 それに続いてカナンも潜ってきた。

(さてと、ダイミョウウオはどこかな?)

 ヤツは縄張り意識が強いらしく、縄張りに入ってきた者にはすぐに攻撃を仕掛けてくるらしいが……。

 キョロキョロと辺りを見渡しながら下へと潜っていっていると、突然時間の流れが遅くなった。

(っ!!来たかっ!!)

 ふと後ろを振り返ってみると、そこにはジャックのあの本に描いてあった絵と同じ姿をした巨大な魔物が此方へと向かってきていた。

(鋭い刃みたいなあのヒレ……コイツがダイミョウウオで間違いないな。)

 俺は水を蹴って後ろにいたカナンのもとへと向かうと彼女の手を引いた。

 すると、時間の流れがもとに戻り俺達の横をダイミョウウオが物凄い勢いで通りすぎていく。

「カオルさん、あれがダイミョウウオですか?」

 どうやら人魚のイヤリングをつけていると水中でも話せるらしい。あいにく俺は水を吸い込んでしまうため口を開くことはできないが、カナンの問いかけにコクリと頷いた。

「あれを倒せばいいんですね。がんばります!!」

 そしてカナンはダイスのようなものをポイっと海中で投げると、落ちてきたそれを手で掴み取る。

「4番!!」

 すると、ダイスから光が放たれ次の瞬間にはカナンの手に槍のような武器が握られていた。

 やはりカナンはあのダイスを振るって出た数字に応じた武器を扱うらしい。何番まで番号があるのかはわからないが……面白い武器だな。

 そんなことを思っていると、再び俺の前にダイミョウウオが現れる。

(さて、短期決戦で行くぞ。)

 俺は一気にダイミョウウオへと向かって飛び込む。そして魔装で作り出した魔力の剣を振るう。
 しかし、水中はヤツの土俵……俺の攻撃はあっさりと避けられ、すぐに刃のようなヒレで切り裂こうと向かってくる。

(俺の役目は攻撃を当てる事じゃない。お前の動きを止めることなんだよ。)

 俺の思った通りの行動に出てくれたダイミョウウオ。俺は両手に大きな魔力を纏わせると、ギッチリと硬く……硬くイメージした。
 そしてダイミョウウオのヒレを両手で白刃取りし、ヤツの動きを止める。

 すると、打ち合わせ通りにカナンが光り輝く槍をダイミョウウオのエラの部分へと深く突き刺した。

(急所だ。致命傷だな。)

 そしてカナンが槍を引き抜くと、エラのところから血を流しながらダイミョウウオは力なく海の底へと沈んでいく。

 それを収納袋へと回収したその時だった。

「っ!?」

 その時まで動いていた時間がビタリと止まったのだ。
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