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第5章 成長する2人
第164話 アーティファクトを求めて
しおりを挟むナインと話した後、スリーを見つけてその話をするとさっそく彼女はアーティファクトを探しに行こうと言い出した。
まさか今から行こうなんて言うとは思ってはいなくて、驚いた俺は思わず彼女に問いかける。
「え?い、今からで大丈夫なのか?」
「問題ありません。どちらのアーティファクトも近くにあるようですので、すぐに見つけられるかと。」
「そ、そうか……ならいいんだが。」
「では参りましょう。」
そう言ってスリーは歩きだす。
「歩いていくのか?」
「はい。この街の近くにあるようですので。」
どうやら彼女のアーティファクトを見つけ出すことのできるセンサーはこの街の近くで俺が目的としているアーティファクトの反応を検知したらしい。
近くにあるってのはありがたいが、なぜ近くにあるのに誰にも見つけられていないのだろうか?誰の眼にもつかないような場所にあるとかならわかるが……。
疑問はいくつも増えるばかりだが、一先ず今は彼女に着いて行こう。
おとなしくスリーの後に着いて行くと、彼女はどんどん街の近くにある海辺へと歩いていく。そして砂浜の波打ち際に立つと彼女は地面へと向かって自分の銃の銃口を向けた。
「アクセス権限認証開始……識別番号003。ダンジョンゲートの開錠を開始します。」
彼女の銃口に鍵穴のような模様が現れると、彼女はその状態のまま海へと向かって引き金を引いた。
すると、海の底から神殿のような建物が勢いよく現れた。
「おぉっ!?あれはなんだ!?」
「この地に封印されていたダンジョンです。予定ではあと5年ほど経過すると現れるはずでしたが、スリーのアクセス権限を使って強制的に出現させました。」
「もしかしてその機能を使えばまだ眠ってるいろんなダンジョンを掘り起こすこともできるのか?」
「できるのはミラ博士が作り出してスリーに権限を与えたダンジョンのみです。ですので自然発生したダンジョンや、ミラ博士が意図的に隠しているダンジョンには使えません。」
「ほぉ~……。」
でも権限があるダンジョンは全部こうやって強制的に出現させることができるってわけか。そう考えるとスリーはかなり便利な権限を持っているんだな。それにしても、さっきのスリーの言葉を思い返してみると、彼女たちを作ったミラ博士という人物はいくつかのダンジョンを意図的に隠しているらしいが……なぜそんなことをするんだ?もしそれがナインやスリーのようにアンドロイドが隠されているダンジョンなら、早く見つけるために隠したりはしないんじゃないか?それとも何か隠さなきゃいけない理由でもあるのだろうか?
疑問は深まるばかりだが、今はそれを考えてもわかるはずもない。ミラ博士という人物の心を知りうるのは、その人自身しかいないのだから。
「それで、このダンジョンに例のアーティファクトがあるってことか?」
「はい、間違いありません。」
「ならとっとと攻略するか。」
ズボンを捲くり、海を足でかき分けながらその神殿のような雰囲気が漂うダンジョンの前まで歩くと、神殿の奥には下へと続く階段があった。
「さて、いくか。」
まさかこんな短期間でまたダンジョン攻略をすることになるとはな。できれば簡単であってほしいものだが……。まぁそんな都合よく物事が進むわけないか。
半ばあきらめながらも俺はスリーとともにダンジョンの下に続く階段を下った。
階段を下りきって俺たちを出迎えたのは、一面にキラキラと光る綺麗な水面だった。
「うはぁ……海のダンジョンってだけあってこういうステージか。」
ステージ一面が膝のあたりまで浸かるほどの水位の水で満たされている。これでは足が水にからめとられて思うように身動きが取れない。
「マスター、目的のアーティファクトはさらに下の階層にあるようです。いち早くここを抜けたほうが良いかと。」
「あぁそうだ……な?」
スリーの言葉に従って歩き出そうとしたその時、目先の水面から三角形のとがった特徴的な背びれがぴょこんと飛び出ているのが目に入った。
「もしかしなくてもあれは……あれだよな?」
あの特徴的な背びれ……ジ〇ーズとかデ〇ープ・ブルーとかに出てくるやつだよな。幼少期、あれを見て一時期海が嫌いになった時期がある。その時のトラウマを呼び起こさせる光景だ。
少し背筋にぞわぞわと悪寒が走ったかと思えば、そこら中に特徴的な背びれが水面から突き出ているのが目に入った。
「はぁ~……こういう経験だけはしたくなかったな。」
大きくため息を吐き出しながら一歩踏み出した瞬間、水面から背びれを出している何かが一斉に水の中へと潜り姿を消した。
それと同時に、いくつもの魚影が俺の方に向かってくるのが見える。
そして俺の目の前で水面から飛び跳ねた魚影の正体はやはりやつだった。
「シャァァァァッッ!!」
凶悪なギザギザの歯をむき出しにしながら俺に襲い掛かってきたのはサメのような姿をした魔物だった。
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