161 / 350
第5章 成長する2人
第161話 ラピスの恩返し
しおりを挟むギルドから引きずられ、魔王城とは反対方向へとラピスに連れらていく。
「お、おいラピス?どこに向かってるんだ?」
「良いから黙ってついてくるのだ。」
そうしてラピスは俺のことを、とある店の前へと連れてきた。
「ここだ。まだやっているな。入るぞカオル。」
「はいはい……。」
ようやく手放された俺は彼女に続いて店の中に入る。どうやら彼女は俺のことを閉店時間ギリギリの服屋へと連れてきたらしい。
「服屋?」
「さっき我をかばってアシッドドラゴンに酸を喰らい、服を失っただろう?ちょうど金も入ったことだ。礼に服を買ってやる。」
「別にいいのに。」
「我が買ってやらぬと気が済まぬのだ!!」
そう言うと彼女は店員に何かをかけ合い始めた。するとラピスと話をした店員は店の中をいそいそと走り始め、いくつか服を携えてくると俺の方に歩み寄ってきた。
「失礼します、あちらのお客様がお客様にお似合いになる服一式を見繕ってほしいとのことでしたので、僭越ながらいくつか私がご用意させていただきましたので、良ければあちらの試着室でご試着いただけますか?」
「あ、わ、わかりました。」
そして促されるがまま試着室へと案内され、用意された服を着こなしてみた。試着室のカーテンを開けると目の前でラピスが腕組みをして待っていた。
「うむ、なかなかどうして似合っているではないか。」
「そうか?こういう服は着たことないからよくわかんないんだが。」
店員に用意された服はこちらの世界の服だから、俺が来たことのないデザインの物ばかりだった。故に鏡に映る自分の姿に少し違和感を感じるが、ラピスから見た姿では似合っているらしい。
まぁそろそろこっちで服を買ったりしてもいいころかなって思ってたから、ちょうどいい機会になった。
「他にもあるのだろう?すべて着こなして見せろ。」
「はいはい、わかったよ。」
そしてすべての服を着こなしてみた結果、ラピスが俺の了承もなしにいつの間にか店員にお金を払ってすべての服を買ってしまっていた。
「良いのかこんなに買ってもらって。」
「良いのだ。これが我の罪滅ぼしなのだ。」
「そうか、ありがとな。」
「う、うむ。」
お礼を告げると、少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「さて、失った服も買ったことだ。夜が更ける前にさっさと城に帰るぞ。」
「あぁ、そうだな。」
そしてラピスに服を買ってもらった後俺たちは魔王城へと戻るのだった。
次の日、早速昨日買ってもらった服を着て城の中を歩いていると、ラピスとばったりと鉢合わせた。
「お?さっそく着てくれているようだな。」
「あぁ、ありがたく着させてもらってるよ。」
「何よりだ。では我は行くところがあるから先に行くぞ。」
「あぁ。」
するとラピスは城の城門の方へと向かって歩いて行った。いったいどこへ行くのだろうかと疑問に思っていると、廊下の奥から今度はジャックが姿を現した。
「おや、カオル様。」
「ジャックさん?」
「先ほどラピス様が私の部屋に来ましてな。数か月分の家賃をまとめて払っていきましたぞ?」
「え!?ラピスがですか!?」
「はい。これでカオル様の負担が減ると言っておりましたよ。」
ラピスのやつ本当に払ってくれたのか。昨日の依頼を受けてまとめてお金が入ったからかな?あ、もしかして今さっき出て行ったのは、アシッドドラゴンの素材の件について聞きに行くためか?
なんだよ、家賃を払ったんなら一声ぐらい声をかけてくれてもいいのに。
「そうだったんですね。」
「えぇ、何か心境の変化でもあったのでしょうかな?」
「どうですかね?俺にもラピスの考えてることはわかりません。」
まぁでも家賃を払ってくれたのなら、こっちとしても少し余裕ができる。なら少しぐらい今日のご飯を豪華にしてもいいかもな。
「ジャックさん、俺ちょっと市場の方に行ってきます。」
「おや、買い出しですかな?」
「はい、ちょっと食費にも余裕が出てきたので少し今日は豪華なのを作ろうかなと。」
「ホッホッホ、それはよろしいですな。魔王様もお喜びになるでしょう。どうぞお気を付けて行ってらっしゃいませ。」
「はい。行ってきます。」
そして俺は今日の料理に使う食材を探すために市場へと駆り出すのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
82
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる