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第5章 成長する2人

第156話 初の依頼達成

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 しょんぼりするアルマ様とカナンの二人を連れてギルドへと戻ると、ロベルタがこちらを迎えてくれた。

「お帰りなさい!!やっぱり早かったですね。」

「あ、う、うん……。」

「あ、あれ?魔王様?どうしてそんなにしょんぼりしてるんです?」

「え、えっとね……その……。」

 二人がなかなか言い出せずにいるところで俺は収納袋からレッドキャップの帽子を取り出してロベルタの前に置いた。

「はい、レッドキャップの帽子です。これで討伐の証明になりますよね?」

「あ、大丈夫ですよ~。それでは2体分の報酬をどうぞ~。」

「え?え?」

 今の一瞬の出来事を飲み込めずにアルマ様とカナンはこちらを見つめてくる。そんな二人に俺は事の説明を始めた。

「二人が倒したレッドキャップの帽子が残ってたんですよ。」

「えぇ!?全然気づかなかった……。」

「ボクも全然……。」

「魔物ハンターになるならこういうのも見落とさないようにしないとですね。」

「うん!!次は自分でやる!!」

「はいっ!!」

 先程までしょんぼりとしていた二人の表情がやる気のある表情へと変わる。
 その一連の流れを見ていて、ロベルタは首をかしげているが、ひとまず……と言った感じでこちらに報酬金の入った袋を手渡してきた。今回手渡された袋は二つ。アルマ様とカナンのものだ。依頼を受けたのはこの二人だからな。あくまでも今回俺は監視役だ。

「えー、ではレッドキャップ2体の討伐で銀貨4枚の報酬金となります。初めての依頼達成お疲れ様でした。」

「わ!!やった!!お小遣い~♪」

「銀貨2枚……これだけじゃ全然カオルさんに恩返しが……。」

 喜ぶアルマ様と一転、少し落ち込む様子を見せるカナン。そんなカナンの頭に俺は手を置いた。

「最初はそんなもんだ。無理して危険なことさえしなければそれでいい。それに、俺は少しでもそういう気持ちがあるだけで十分だからな。あ、あとその初めてのお金は自分のために使うんだぞ?」

「え!?な、なんでですか?」

「初めて自分で頑張ってお金を稼いだんだ。そのお金は自分のために使うんだ。」

「で、でも……それじゃ……。」

「いいか?頑張った後にはその頑張った分だけ報酬がある。それが無くなったら頑張る意欲もなくなるだろ?」

 俺はそんな風な人間を何人も見てきた。例えば初任給で自分の両親に高いなにかしらのプレゼントをするやつとか、無理に恋人にプレゼント貢ぐやつとか……。そういうやつは自分で頑張ること、仕事で稼ぐことの価値を見失って仕事をやめていく。
 まぁ、一概には言えないけどな。ある強い信念を持ってそういうことをやってるやつは根強い。

 無理なことをして心を壊すよりかは楽しくやってほしいからな。

「ま、俺に恩を返そうとかそういうのはもっとお金を稼げるようになってからで良い。わかったな?」

「は、はい。」

 ちなみに、アルマ様とカナンは俺とラピスとは違い、ブロンズランクからのスタートだ。というのもリル曰く、実力よりも精神年齢的にそこからスタートした方がいいと思った……とのことだ。俺もその意見には賛成だったから、二人はブロンズランクから始まったのだ。

 まぁ、二人の実力を鑑みれば……すぐに俺達には追い付けるだろう。ラピスなんか最近全く依頼を受けてないから、意外とすぐに追い越される可能性もある。 
 しかし、そうなったらそうなったでアイツがいよいよ焦りそうだから……それはそれで面白くなりそうだな。

 と、そんなことを思っていると、アルマ様がカナンの手を引いて言った。

「カナン!!お菓子買って帰ろ?」

「あ、で、でも……。」

 戸惑いながらチラリとこちらを向いたカナンに俺は一つ頷いた。

「ほら、行こ行こ?早く行かないとご飯の時間になっちゃうよ~。」

「う、うん。わかった。」

 そしてギルドを飛び出していった二人を追いかけようとしたところ、後ろから声をかけられた。

「キミも大変だねぇ。」

 チラリと後ろを振り返ると、そこには苦笑いするリルが立っていた。

「はは……まぁ、これも仕事の一環ですよ。」

「ま、無理しすぎない程度にね。っと、引き留めて悪かったね。ほら、魔王様達を追いかけなよ。」

「はい、それじゃあまた……。」

 リルに別れを告げると俺はアルマ様達を追った。

 こうして、アルマ様とカナンの初の魔物ハンターとしての依頼は成功で幕を閉じたのだった。

 二人はこれからもどんどん依頼を受けてランクを上げるつもりらしいが……兎に角無理だけはしないでほしいものだ。

 まぁ二人が危ない目に逢わないように、俺がお目付け役として常にいるんだがな。俺自身も、二人のことをより一層気にかけないといけないのかもしれない。

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