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第4.5章 二人目の人造人間

第148話 魔力の細分化の応用

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 ギルドで用事を済ませて城へと戻った俺は、まだ時間があることを確認してトレーニングルームへと一人足を運んだ。

「うっし……やるか。」

 一人でここに来た理由は一つだ。スリーとの戦闘訓練だけでは彼女のスピードに追いつくことはおろか、触れられる未来が見えない。

 だからこうやって時間のある時に自主トレでもしておかないとな。

「まず根本的に俺は魔力の扱い方が下手だ。魔力節約とか細分化とか操作っていうスキルがあったとしてもまだまだだ。」

 まぁもともと俺がいた世界には魔力っていうものや魔法という概念が存在していなかったからな。魔力や魔法が当たり前というこの世界の人達と比べれば、扱いが稚拙なのは多少仕方がないかもしれない。だが、それは言い訳だ。要は魔力を使い込んで使い込んで熟練度を上げれば問題ない。

「えっと、確かカーラに借りてたあのノートに……魔力の細分化の他にもいろいろ魔力の使い方が書いてあったよな。」

 俺は収納袋からカーラが書き記したノートを取り出して読み始める。

『魔力の細分化の応用編……魔力を細分化できた後は、その細分化した魔力を血液のように全身に流してみると良い。すると、身体能力と感覚器官の性能が大きく上昇するのがわかると思う。それが魔力の細分化によって真価を発揮する。魔力の細分化ができていない状態での身体能力強化魔法は魔力の消費量が大きく、戦闘での使用は現実的ではなかった。しかし魔力の細分化を会得した後ならば長時間の使用が可能になる。また、より強化したい体の部位に魔力を多く集めればその部位を更に強化することも可能になる。』

「……身体能力強化魔法、ねぇ。」

 俺が使ってる足に魔力を籠めて加速するアレもこの身体能力強化魔法に入るのだろうか?要領的には同じだと思うけど、こっちの魔法は全身を強化できるのかな?

 ま、物は試しだな。

 俺は胡坐をかいて座ると、ノートに書いてある事に倣って魔力を血液のように全身に巡らせるイメージを頭の中で思い描いた。

「ん~……こんな感じかな?……あ、ちょっとでも意識を違う方に持ってくと途切れるな。」

 結構集中力が必要だな。

「ん~……。」

 また魔力を血液のように全身に循環させるイメージを頭の中で強く描く……。すると足に魔力を籠めたときと同じような感覚が全身を駆け巡っているのがわかった。

「よし。できてるな。」

 体中に魔力が巡っていることを感じながら俺は立ち上がると、試しに体を動かしてみた。すると、不思議なぐらい体が軽い。

「うんうん、悪くない。魔力の消費はどうかな?ステータスオープン。」

 魔力をどれぐらい消費しているか確認するため、ステータス画面を開く。すると、毎秒約3ずつ魔力が減っていっているのが確認できた。

「これを使ってる間は毎秒3ずつ減ってる。つまり魔力が満タンの時から使うとなれば……制限時間は約6分ぐらいってところか。」

 魔力の細分化と魔力節約を発動していて尚この減り方か。仮にどちらのスキルも発動していなかったってことを考えると、相当燃費の悪い魔法だなこいつは。カーラのノートに戦闘での使用は現実的ではないと書いてあったのも頷ける。

「で?あと魔力を多く籠める場所を変えてみると……。」

 俺は右手に魔力を多く集めるイメージをする。そしてトレーニングルームの壁をおもむろに殴ってみると……。

 ドンッ!!

「おぉ!!」

 俺が殴った壁が、まるでアルマ様が殴ったかのように大きく凹んだ。普段なら俺が全力で殴ってもここまで大きく凹むことは無い。かなりパワーが上がっているのは確実だ。

「これを使えばいろんなことができそうだな。」

 足に魔力を多く集めればその分スピードは速くなるだろう。後このノートには感覚器官の強化も可能みたいなことが書いてある。

 ということはだ……視覚や嗅覚、聴覚などもこれによって強化することができるというわけだ。

「視覚を強化すれば……もしかするとスリーの動きが追えるようになるか?」

 それを試すのは明日にしよう。

 俺は身体能力強化魔法を解いた。すると体が普段の感覚を取り戻す。

「制限時間こそあるが……こいつはいい武器になる。」

 もっと熟練度を上げれば、これに対応するスキルみたいなのも入手できそうだし……定期的に使って熟練度を上げておこう。

 そして俺がトレーニングルームを後にしようとしたとき、不意にガチャリとトレーニングルームの扉が向こう側から開いた。

「あ、カオルここにいた~!!」

 とことこと小走りで入ってきたのはアルマ様だった。今はカナンたちと遊んでいる時間だと思ったがここに何をしに来たのだろうか?俺を探しに来たように見えるが……。

「アルマ様?どうしましたか?」

「んとね~、アルマね、カオルにやってあげたいことがあるの~。」

「はぁ……いったい何でしょうか?」

「えへへへ~、それは今からやってあげる~。」

 そう言うとアルマ様はちょこんと床に正座した。そして太ももをポンポンと叩く。

「はいっ!!ここに頭乗せて~?」

「えっ!?で、ですがそれは……。」

「知ってるよ~膝枕でしょ~?これ前からカオルにやってあげたかったんだ~。それと、これっ!!」

 そしてアルマ様は服のポケットから一本の棒のようなものを取り出した。

「じゃん!!耳かき棒~アルマのお小遣いでジャックに買ってきてもらったんだ~。」

 むふふと自慢気にアルマ様はその耳かき棒を見せつけてきた。この展開は……まさか。

「メアから聞いたよ?カオルお耳をマッサージされるのが好きみたいってさ。大丈夫大丈夫、さっきカナンとメアとラピスで練習したから。皆気持ちよ~くなって寝ちゃったんだから。」

 エッヘンと胸を張るアルマ様。カナンたちが一緒にいないのはそういうわけだったのか。

「ほらほら、カオルにもやってあげたいんだからここに頭乗せてよ。」

 これは断るという選択肢は存在しなさそうだ。もし断ればアルマ様が悲しんでしまうだろう。

 そして腹をくくった俺はアルマ様の太ももに頭を乗せることにした。

「失礼します。」

「はいは~い、いらっしゃいませ~。それじゃあカオル、動かないでね~。」

 そうして俺はアルマ様の耳かきを受けることになったのだった。

 そして気がつけば、いつの間にか俺はアルマ様の膝枕の上で眠ってしまっていた。

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