141 / 350
第4.5章 二人目の人造人間
第141話 今後の課題
しおりを挟むスリーのアドバイスを取り入れながら彼女との戦闘訓練に励み始めて約一時間ほどが経っただろうか?いや、そんなに時間が経っていないかもしれない。
時間間隔がなくなるほど、俺はスリーとの戦闘訓練に集中し……それと同時に追い込まれていた。
「はぁ……はぁ。」
ずっと動き続けたせいで体力が底をつき始めていた。また、途中から魔力を推進力に変えるという技を試しながらやっていたため魔力のほうも底をつき始めていた。
俺はこんなにも消耗しているが、一方のスリーは息一つ切らしていない。
「マスター、後半の動きはだいぶ良くなりましたよ。とは言っても、まだまだ改善すべき点は多くありますが。」
そう言いながらスリーはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「まず改善すべきは推進力にしている魔力消費量です。もともとマスターは魔力が多いステータスではないようですので、魔力の節約術を身に着けるべきですね。」
「魔力の節約術?」
「はい、体内にある魔力を放出する際にそれを最小限に抑えるのです。今のマスターはその放出する魔力量の無駄が多すぎます。」
「なるほどな。」
魔力量が少ないから、消費をもっと抑えないといけないわけだ。魔装を使うにしても、魔力を推進力にするにしても……。
「さて、目標は達成できませんでしたが、本日の戦闘訓練はここまでにいたしましょう。マスターの魔力が底をついたようですので、これ以上の訓練継続はお体に支障をきたすと判断しました。」
「そ、そうか……。」
魔力も体力もすっかり使い切った俺はトレーニングルームの床に寝そべった。
「当面の目標はマスターが魔力節約を会得する……という目標にしましょう。今のままではスリーに触れることすらままなりませんから。」
「はは……は。辛口だなぁ。」
「お世辞を言ってもマスターのためになりませんので。」
「そりゃあそうだな。」
スリーの至極もっともなその言葉にうなずきながら、ゆっくりと目を閉じようとすると、彼女は俺の頭を少し持ち上げて太ももの上にのせてくれた。
「スリー?」
「以前ナインがこのようにしてマスターのことを介抱していましたよね?その真似をしてみたのですが……どうでしょうか?」
「あ、あぁ……そういうことか。」
そういえばナインとレベリングして疲れ切って倒れこんだ時、ナインにも膝枕してもらったな。
「ナインと同じ感触だ……。すごい心地いいよ。」
「ナインとスリーの肉体の構成物質は同じですから、触感は同じです。」
スリーの膝枕に頭を預けていると、どんどん眠気が襲ってくる。
「ふぁぁ……。」
「マスター、眠くなってしまったのならこのまま寝てしまっても構いませんよ?」
「ん……。」
「昼食一時間前に起こせばよろしいですね?」
「あぁ、頼む。」
「それではごゆっくり……お休みくださいマスター。」
スッと目の上にスリーの手が当てられると、俺の意識は自然に微睡の中へと沈んでいった。
その日の夜……俺は一人ギルドへと向かった。いつも通り、夜のギルドの酒場にはリルとカーラの姿があった。
「こんばんはリルさん、カーラさん。」
「いらっしゃ~い、待ってたよ~。」
二人が囲んでいるテーブルの席に腰かける。すると、毎度のことのようにいつも俺が飲んでいるお酒が運ばれてきた。
そして俺が座るとリルがこちらを向いて言った。
「キミ最近忙しそうだねぇ~。」
「ちょっと最近いろいろ予定が重なっちゃって……。」
「魔王様お付きの仕事をしてるから忙しいのはわかるけど、体も大事にするんだよ~?」
「そうそう、頑張りすぎて体を壊しちゃ元も子もないからねぇ~。」
「ははは、気を付けます。」
二人にそう注意喚起された俺は思わず苦笑いしてしまう。
「あ、そういえばカーラさんに聞きたいことがあったんです。」
「アタシに?どうしたんだい?」
「はい、魔力の節約ってどうやれば身に着けられますかね?」
「魔力の節約?」
俺はスリーに課題として提示された魔力の節約のことについてカーラに問いかけてみた。魔力のことについては魔女であるカーラが詳しいと踏んだのだ。
「俺、もともと魔力量が少ないんで……魔力を使った攻撃とかをするときに燃費をよくしたいんです。」
「なるほどねぇ、そういうことかい。ならアタシに相談したのは正解だねぇ。」
すると、彼女はおもむろに手のひらの上に火の玉を生み出して見せた。
「カオルに問題だ、この炎はどのぐらいの魔力で形成されてると思う?」
「どのぐらい……ですか?う~ん、MP50ぐらい……?」
「残念不正解だ。正解は……MP1なのさ。」
「1!?たったの!?」
「あぁそうさ。このぐらいの炎なら魔力の使い方さえ覚えれば、MP1で出せるのさ。」
「ちなみにどうやってるんです?」
「魔力はMPっていう具体的な数字で表されるけど、そのMPの数字をもっと、もっと細かく細分化するんだよ。」
「魔力を細分化……ですか?」
「あぁ、例えば1っていう数字でも小数点をつければ無数に分解できるだろ?」
「はい。」
「放出する魔力を決めて、それを分解して分解して……放出する魔力を細かくしていくのさ。」
「なるほど……。」
「まぁ、言葉では簡単に言えるけど、実際にそれを身に着けるのは至難の業さ。普通に魔法が得意な奴でもそれを会得できないやつはたくさんいる。」
そんな難しいのを俺は取得しないといけないってのか……。こいつは先が長そうだ。
「正しい練習方法で練習すれば、カオルならきっと身に着けられるよ。」
そういって彼女は、どこからか一冊のノートを取り出してこちらに手渡してくれた。
「これは?」
「魔力の細分化についてアタシがまとめたノートさ、練習方法も書いてある。」
「借りちゃっていいんですか?大事なものなんじゃ……。」
「いいんだよ。か、カオルのためになるんなら……ね。」
「わっ!!カーラ顔真っ赤にしてる~。」
「う、うるさいよリル!!アンタには貸してやんないからね!!」
「えぇ~いけず~。いいじゃん、カオルクンの次に貸してくれてもさぁ~。」
そしてリルとカーラは口喧嘩を始めてしまった。
今日の酒の席もにぎやかだ……。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる