上 下
139 / 350
第4.5章 二人目の人造人間

第139話 スリーとナイン

しおりを挟む

 スリーを仲間にして落ち着いたところで、彼女はナインへと告げた。

「ナイン、そろそろ行きますよ。マスターにはあまり時間がないようですから。」

「わかっています。」

 するとナインは機械仕掛けの剣を取り出して空間を切り裂いた。そこで俺はふとあることが気になった。

「ちなみにスリーのその銃はどんな力があるんだ?」

「スリーの銃ですか?いろんなことができますよ。ナインのように超長距離を移動したりすることはできませんが……。」

 おもむろにスリーは銃を構えると一発銃弾を発射した。その瞬間彼女の姿が目の前から消える。

「あっ!?」

 一瞬にして彼女を見失った俺が素っ頓狂な声を上げていると、突然背後から彼女の声が聞こえた。

「マスター、こちらです。」

「はっ!?」

 後ろを振り返るといつの間にかスリーが立っていた。

「ど、どういう仕組みなんだ?」

「この銃から射出される弾丸は魔法弾になっています。つまり魔法を縦断として射出することが可能なのです。たとえば今のように移動魔法を弾丸に籠めて発射すると跳弾の軌道計算をもとに一瞬で背後を取ったりすることも可能なのです。」

「ほぉ~……。」

「なので回復魔法を弾丸に籠めてマスターに撃ち込めば体力や傷を回復させることも可能です。」

「それって痛みとかないのか?」

「一瞬体の中を何かが貫通する感覚はあるかもしれませんが、痛みはありませんのでご安心ください。」

「ナインの体力を回復させる剣みたいなもんか。」

 あれもあれで体の中を何かが突き抜ける感覚はあるんだよな。痛くはないけどさ。あの感覚だけは何回やられても慣れる気がしない。

「そういう認識で間違いありません。」

「なるほどな。」

「他にも様々な機能がありますが、すべてを話していると時間がかかってしまいますのでまた後程、時間がある際に……。」

「あぁ、そうだな。」

 そして俺はナインが切り裂いた空間に足を踏み入れると、その空間は魔王城の目の前に繋がっていた。

「ふぅ、帰ってこれた。」

「マスター、予想時間より30分ほど早く帰ってきました。」

 先に空間をくぐって待っていたナインが俺にそう告げた。どうやら予定していた時間よりも早くダンジョンを攻略できたらしい。

「そうか。」

 ならアルマ様の次の食事まではまだ余裕がありそうだ。ダンジョン攻略で少し疲れたし、部屋で少し休もうか。

 あ、でもその前にスリーのことをジャックさんに報告しないと……。と、思っていると俺の思考を見通したかのようにナインが言った。

「マスター、スリーのことはナインがジャックに話を通しておきます。ですのでマスターはお部屋で疲れをいやしてくださって結構ですよ?」

「大丈夫か?」

「問題ありません。事前に彼にはもう一人メイドを雇ってほしいと話を通してありますので。」

「あ、もう話をしてあるんだ?」

「はい。その際に彼は快く承諾してくれたので、スリーにはこの城でメイドとして働きながらマスターの戦闘教育をしてもらう予定です。」

「戦闘教育される事実は変わらないのね。」

 がっくりと肩を落としていると、スリーが言った。

「これもマスターのためです。受け入れてくださいませ。」

「わかったよ。」

「マスターの一日の行動はすべて把握しておりますので、それに合わせて戦闘教育の時間はこちらで調節しておきます。」

「お、おぅ……わかった。」

 有無を言わさないスリーの言動……。どうやらこちらの生活リズムまで彼女に把握されているらしい。これからは俺がいつも休憩をしているときに戦闘教育が施されるのだろうな。

「それではマスター、ナインたちは報告をしに行きますのでお先に失礼いたします。」

 ナインとスリーは俺にぺこりとお辞儀をすると城の中へと入っていった。

 呆然としながら二人の背中を見送った俺は思わず大きなため息を吐く。

「はぁ~……これからどうなるんだ。」

 話しで聞いた限りではナインとのレベリングの3倍激しいって言っていたが……そんな過激なものに俺の体は耐えられるだろうか?とにかくお手柔らかにお願いしたいものだが……。

「たぶんやるとしても明日からだよな?」

 さすがに今日の夜からやることは…………ないとも限らないか。

 一応覚悟だけはしておいたほうがよさそうだ。

「まぁでも自分のためになることだし、頑張るか。」

 もしスリーの戦闘教育を受けて、あの黒いローブを着た男に勝てるのなら……やる価値は十二分にある。男として負けっぱなしではいられないし、これから先あいつの仲間とも戦うこともあるだろうからな。今よりももっともっと強くならなければならない。

「いつまでもピンチの時にナインたちに頼るわけにはいかない。自分の身は自分で守れるようにならないとな。」

 パンと頬を両手でたたき気合を入れなおすと、俺も城の中へと戻るのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い異世界転生。何も成し遂げることなく35年……、ついに前世の年齢を超えた。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...