魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
138 / 350
第4.5章 二人目の人造人間

第138話 目覚めると

しおりを挟む

 意識が暗闇の中へと沈んでいた俺は、不意に口の中に何かにゅるりと生暖かいものが入ってくる感触で意識が強制的に覚醒へと導かれた。

「んむっ!?!?」

「はむっ、れぇ~……。起こしてしまいましたか。」

 目を覚ますと、俺の目の前にスリーの顔があった。

「な、何して……むぐっ!?」

「んっ、ただいまあなたのDNAから情報を読み取っている最中です。少し大人しくしていてください。」

 確かナインを仲間にした時もこんなことをされたような気がする。

 にゅるにゅるとまるで別の生き物のように動き回るスリーの舌に口内を蹂躙されている俺はついに息が苦しくなり藻掻こうとすると、誰かに顔をがっちりと抑えられてしまう。

「んむぐっ!?」

「マスター、動いてはいけません。スリーはナインがマスターの情報を読み取った時と同じことをしているだけです。」

 そんなこと言ったって息がもうっ!!

 いよいよもって呼吸が苦しくなってきたところで、スリーは一瞬口を離して呼吸をさせてくれた。

「ぷはっ!!んむぐぅっ!?!?」

 しかし一回呼吸をさせてくれたと思ったら、すぐにまた口がスリーによって塞がれる。

「マスター、おめでとうございます。スリーもマスターのことをコード9999に値する人間だと認めてくれましたよ。」

 スリーに口内を蹂躙されている俺にナインはそう説明を始めた。

「つまり、スリーもマスターとして認識してくれたというわけです。」

「ん、ぷぁっ……。確かにマスターとして登録しました。ですが、ナイン……マスターへの戦闘教育が足りていないと推測します。今のままでは終末に対応することはおろか、私たち人造人間アンドロイドにすら歯が立ちません。……はむっ。」

「むぐっ!?」

「マスターと共に過ごした経験からですが、マスターは命の危険に晒されれば晒されるほど能力が開花し強くなります。それはスリー、あなたも感じたはずです。」

「…………ぷはっ、確かにそうかもしれませんね。」

 そしてようやく俺はスリーのDNA情報読み取りという名の口付けから解放された。

「はぁはぁ……。」

「お疲れさまでしたマスター。」

 俺を膝枕してくれていたナインは俺の頭を撫でながらそう言ってくれた。

 ゆっくりと俺は体を起こすと、スリーがこちらを向いてぺこりと一礼した。

「改めまして、自己紹介をさせていただきますミズノカオル様。私はミラ博士によって作られた三番目の人造人間アンドロイド識別番号シリアルナンバー003スリー指令ミッションコード9999に則ってこれよりあなた様の所有物としてお仕えいたします。」

「あ、あぁ……よろしくな。」

「えぇ、よろしくお願いいたします。」

「と、とりあえずって呼んでいいのかな?」

「はい、マスターが呼びやすい名前でお呼びください。」

「じゃあスリーで……。」

「かしこまりました。個体名を識別番号シリアルナンバー003スリーからへと変更します。」

 この会話もナインと初めて出会ったときにしたような……。デジャヴを感じる。

「ナインはマスターにあまり戦闘教育を施していなかったようですが、スリーはマスターに更に強くなって頂くため、定期的に戦闘教育を施させていただきます。」

「せ、戦闘教育?」

「はい。確かにマスターの潜在能力、そしてスキルは終末への対策になりえます。しかし先ほどの戦闘データを分析した限り、強力なスキルにマスター自身の実力が伴っていないと判断しました。」

「は、ハッキリ言うなぁ。」

 まぁそれも薄々感じてたけども……。

「スリーにはナインに搭載されていない戦闘用強化プログラムが搭載されています。」

「戦闘用強化プログラム?」

「マスターになった者の根本的な戦闘技術を引き上げるためのプログラムです。良いスキルを持っていてもそれを扱う実力が伴っていなければ、宝の持ち腐れになってしまいますから。」

「それを俺に施すってこと?」

「はい、そういうことになります。」

 あ、ありがたいことなのか?少なくともナインとレベリングをしたときはマジで地獄のような時間だったけれど……まぁあれほどじゃないよな。

「一応聞いておくけど、その戦闘用強化プログラムってのは結構キツイやつなのか?」

「以前マスターはナインとレベリングをしましたね?」

「あぁ。」

「あれを基準として言わせていただくのなら、あれの約3倍と思っていただければ。」

「さ、3倍!?」

 あの時でも何回も何回も死にかけたんだぞ!?その3倍!?

「ご安心ください。マスターが命を落とすようなことまでは致しません。死ぬ直前まで追い詰めることはしますが……。」

「いや全然安心できないが!?!?むしろ不安になったんだが!?!?」

「これもマスターのためです。受け入れてください。」

 無慈悲に放たれたその言葉に俺はがっくりと肩を落とすのだった。

 こうしてスリーが新たに仲間に加わったのだが、これからの俺の日常が不安で仕方がない。

 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

処理中です...