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第4.5章 二人目の人造人間

第131話 初代魔王の逸話

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 アルマ様がまた魔王として一歩成長し、原初の魔王の種族と同じクイーンサキュバスの特徴が強く現れた。

 ジャックの話では原初の魔王と呼ばれていたその魔王は歴代魔王の中で最強と現代まで伝わっているらしい。その話を聞いて原初の魔王という存在が気になった俺は、後日魔王城の地下にある書庫へと足を運んでいた。

「さてと、まずは原初の魔王ってやつについて書いてある本を見つけないとな。」

 毎度のことだが、この膨大な本の中からそれについての記述がある本を探さなくてはならない。

「多分歴史についての本を見つけられれば、その近くにあると思うんだけどな~。」

 しらみつぶしに一つ一つの本棚を眺め、本の題名に気を付けながら捜し歩いていると……。

「ん?」

 目を向けた本の題名が何やら歴史に関連のありそうなものだった。
 魔王とかそういう関係ではないが……歴史の本には間違いない。

「と、いうことは~……この本棚かようやく辺りを付。」

 ようやく歴史に関する本が並んでいる本棚を見つけたところで、俺は原初の魔王についての記述がある本を探し始めた。見逃さないように目を皿にして探すが、建国の歴史や戦争の歴史などなどの本は見当たるのだが魔王の歴史に関しての本は一向に見つからない。一つの本棚を端から端までじっくりと探したがこの本棚にはそれらしきものがなかった。

「ん?確かに歴史に関する記述の本棚はここなんだが……見当たらないな。……まさかとは思うが。」

 嫌な予感がした俺は今しがた探していた本棚の裏側の本棚をチラリとみてみた。するとそこにもぎっしりと歴史の本が並んでいる。

「おぉぅ……。やっぱりな。」

 やはりというかなんというか……。歴史の本は数がまるで違う。

「でもこっちのほうが古い歴史の本が並んでるみたいだ。こっちなら期待できそうだな。」

 そう思って改めて探してみると……本棚の端にある本に目が留まった。

「これだ。」

 その本はかなり古いものらしく、手に持つと今にも崩れてしまいそうだ。だが、かすれた文字でタイトルには確かに『始まりの魔王』と書いてあるのが読める。

 俺は本をやさしく本棚から引き抜くと、ページをめくった。すると、そこには確かにこの国の言葉……魔族語が書かれているのだが、現代の魔族語とは違い筆記体が古く読むのが困難だ。

「これは……ちょっと古い言葉を記した本と併用して読まないといけないな。」

 そして古語について書いてある本を横に置いて、俺はそれで確認しながら『始まりの魔王』を読み始めた。

『最初に魔王という存在が誕生したのは刻歴200年……魔族と人間とで領地争いの戦争をしていた大戦中だった。選ばれたのは純血のサキュバスとして生まれただった。』

「ライラ・ソエル。それが原初の魔王の名前か。」

 名前と魔王という存在が誕生した時代背景について軽く理解した俺はさらに本を読み進めた。

『魔王としてこの世に生まれた彼女は、生まれてすぐに言葉を理解し自分の親にある食材を持ってくるように命令したという。そして数日かけて彼女の両親はその食材を用意すると未だ赤子である彼女に捧げた。生まれた瞬間から歯が生えそろっていたという彼女は、両親が用意していた食材をすべて食い尽くすと赤子の姿から急激に成長し、立派な大人の姿へと変貌を遂げたという。』

「なるほど、彼女が要求した食材こそ……後々魔王が完全体になるのに必要な食材になったというわけか。」

『大人の姿へと変貌を遂げた彼女は、成長と同時に種族としても進化しサキュバスから最上位種族のへと進化した。同時に魔王としての力が完全になった彼女は一声で全ての魔族を支配すると、その圧倒的な力で第一次領土大戦をたった一人で終了させ魔族の国を建国した。その後、人間側に彼女と対になる存在である勇者というものが現れる。その勇者を筆頭に人間は何度も彼女に挑むが、魔王として覚醒し圧倒的な力を得た彼女の前では、人間の頼みの綱であった勇者でさえもただの一人の人間と変わらず、彼女の魔法で跡形もなく消し飛んだ。』

 もう書いてある内容がとんでもない。

 人間との戦争を彼女一人で終わらせて?その後にこの国を作って?さらには魔王と対になる存在のはずの勇者さえも魔法で消し飛ばした……。

「これだけ強い魔王だったんなら、逆にどうやって……。」

 この本に書いてある通りの強さの魔王なら、普通の方法じゃ倒せないはず。でも時代が移り変わるにつれて魔王も変わっていっている。ということは何かしらの方法を使って人間側の勇者が一度彼女を打ち倒した……もしくは寿命を迎えたのか……そのどちらかだと思うんだが。この本に彼女の結末は書いてあるかな。

 そしてペラペラとページをめくっていくと、相変わらず彼女の逸話がいくつも書いてあったが、最後のページになって急展開をむかえる。

『彼女は魔王として君臨している間、総計8人の勇者を屠った。しかし、9人目の勇者と相対した彼女は……9人目の勇者と共に突然姿を消してしまった。その直後、新たな魔王を引き継いだ赤子が生まれてきた事から初代魔王ライラ・ソエルは9人目の勇者と共に亡くなってしまったのではないだろうか?と国中で噂になったのだった。』

 本の最後にはそんな文章が書かれていた。
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