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第4章 激突

第125話 精霊族を追って

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 そして、俺はスカイフォレストに住み着いている精霊族の後を追いかけまわすことにした。

 案の定というかなんというか、気配に敏感な彼らは俺が後ろをついて行っていることを察するとすぐにどこかへと姿を消してしまうため尾行は困難を極めた。

「っあ!?また気づかれた……。」

 またしてもすぐに見つけた精霊族がこちらに気が付きどこかへと消える。

「~~~っくそ。」

 自分では気配を消しているつもりなんだけどなぁ……。ってまてよ?まず第一に……自分では気配を消してるつもりとは思っていたが、そもそも気配ってどうやって消すんだ?
 視線を向けただけでも気付かれる。視線を向けないようにしてもある一定の距離に近づくと気付かれる。彼らが唯一気にしないのは、辺りにあるのみだ。

「自然……自然かぁ。」

 頭を悩ませているとふと少し前の出来事が頭をよぎった。

「そういえば、さっき満腹で何も考えずに寝っ転がっていたとき……。」

 俺たちが近くにいたのにもかかわらず精霊族がこちらを気にも留めず頭上を飛んで行ったよな。あの時は……かなり近い距離を飛んで行ったけどな。どうしてなんだ?

 いろいろな予想を立てていると、ある仮説にたどり着いた。

「……無心がキーなのか?」

 何も考えず……自然と一体化する。気配を消すという意識ではなく、自然の中に溶け込ませることが大事なのかもしれない。

「試しにやってみるか。」

 俺は近くにあった木に背を預けると目を閉じて、脳内の思考をすべて捨て去った。今俺が感じることができるのはやわらかく吹く風が肌に当たる感触と、さわさわと風で揺れる辺りの音……それらはすべて自然の中でしか感じられないものだった。
 そしてしばらく身を預けていると、なんだか体が風に溶け出していくような不思議な感覚に包まれた。すると、今まで聞こえなかった精霊族たちの声が近くで聞こえてくるようになった。

「久しぶりに人間が来たね~。」

「何回か見たことあるけど、やっぱり人間っておっきいからちょっと怖いよ。」

「でもでも、私たちを捕まえようとしてるわけじゃなさそうだったよ~?」

「うん、なんか何かを探してるみたい?」

「もしかして探してるのかな~?」

「そうかも?でもきっと見つけられないよ~。私たちの幻惑魔法で隠してるんだから。」

 そんなことを話しながら俺のすぐ真横を精霊族たちが通り過ぎて行った。そして声が聞こえなくなったところで目を開けるとそこにはすでに精霊族の姿はなかった。

「お日様の花……幻惑魔法。なるほどな、見つけられないわけだ。」

 良い情報を仕入れたところで立ち上がると、頭の中に声が響いた。

『熟練度が一定の値に達したため新たなスキルを獲得しました。』

「隠密ね。これがあればあの精霊族に気づかれずに近づけそうだな。」

 それじゃあさっそく……。

「隠密……。」

 スキルを意識してそう呟くと、さっきのように体が自然の中に溶け出していくかのような不思議な感覚に包まれた。おそらくこれで近づけるはず。

 辺りをきょろきょろと見渡してみると、簡単に花の蜜を集めている精霊族を見つけることができた。さすがに視界に入ったらバレてしまうだろうから、草陰に隠れつつ近づいていくと……俺が真後ろまで近づいてもこちらに気が付く気配を見せない。

「ふぅ~、このぐらいでいいかな~。一回戻ろっと。」

 目の前で花の蜜を集めていた精霊族はそう呟くと、ゆっくりとどこかへと向かい始めた。その後をつけていくと、森の中に不自然に少し開けた場所まで来ることができた。
 
「よいしょっと。」

 その精霊族の少女は集めていた蜜を地面に置いて、両手を前に出すと何やら呪文のようなものを唱え始めた。

「ムシムシー・ヤ・ムタフイ!!」

 そんな呪文を唱えると、突然目の前の景色がぐにゃりとゆがみ、何もなかったはずの空間に巨大な木が現れた。その木にはおそらく精霊族たちが暮らしているであろうツリーハウスがいくつも建築されている。

 そしてその大木のてっぺんには超巨大なオレンジ色の花が咲いていた。

(あれがおそらくサンサンフラワーか。)

 よーく目を凝らしてみると、その花の中心には何やら光り輝くものが見える。

(ひとまずあの木のてっぺんまで登ってみないことには始まらないな。辺りにはたくさん精霊族がいるから見つからないよにしないと。)

 俺はコソコソと物陰に隠れながらサンサンフラワーらしき花が咲いている木の根元までやってきた。こんなにコソコソとしていると、まるで泥棒になったような気分になる。

「よし、この辺には精霊族もいないな。」

 さて、一つ木登りと行くか。

 俺は足に思い切り力を籠めると、地面を蹴って飛び上がった。
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