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第4章 激突
第109話 vsレッドスキン
しおりを挟む「マスター!!」
態勢を整えたナインが機械仕掛けの剣を抜いて今にも手助けをしようとしていた。
「ナイン、こいつは俺がやる。そこで見てろッ!!」
「っ、ですが……。」
「これは……命令だッ!!」
そうナインに命令しながら、力を籠めてレッドスキンの棍棒を弾き飛ばすと、俺は地面を蹴って飛び上がり腕に魔装で魔力の剣を作り出した。
「お返しだッ!!」
右肩から左の脇腹にかけて一閃し、確かな手ごたえを感じたが……。俺の攻撃を全く意に介していないように、今度は俺の体よりも大きな足が飛んでくる。
「うおっ!?」
単純な攻撃だが、当たれば大怪我間違いなしの一撃。ひとまず飛びのいてそれを躱し、レッドスキンを見上げてみると、先ほど俺が攻撃した部分には大きな切り傷があるものの、目を疑うような速度で回復を始めていた。
(すごい勢いで再生してる。生半可な攻撃じゃ仕留められないってわけか。)
俺の魔装の攻撃でも骨まで届かない。なら現状今の俺の攻撃でこいつに致命傷を与えられるものがない。多分アーティファクトでも致命傷を与えられないだろう。
ということは、何か新しいことをやらないとな。
俺はレッドスキンからもう一歩距離をとると、スキルの魔力操作を使って全身の魔力を両手に集めてぎゅっと濃縮していく。
(イメージは、魔力を一点に集中させて攻撃した瞬間に爆発させる。)
脳内でイメージを固めていくと、魔装とはまた違う魔力のオーラが拳に集まっていく。
「さぁ、実験開始だ。」
俺の準備が整ったところで先ほどの怪我が回復したレッドスキンが俺に向かって突っ込んでくる。
「グルオォォォォォッ!!」
大地を揺るがすような雄たけびと共に振り下ろされる棍棒。俺はそれに向かって拳を突き出した。
「フンっ!!」
そして俺の拳と棍棒がぶつかると、拳に集めていた魔力が爆ぜて棍棒を弾かれたレッドスキンが大きくよろめく。その隙に懐にもぐりこむと、俺は肋骨の下から心臓へと向かって貫くように拳を振りぬいた。
すると、拳に集中させていた魔力がレッドスキンの体内に押し込まれ、やつの体内で内部爆発が起きる。
「グボォァ!!」
体内で、しかも心臓に近い位置で起きた爆発にレッドスキンは大量に吐血した。
まだ息のあるレッドスキンは、ぎょろりと獰猛な視線を俺へとむけると手を震わせながら残った力で棍棒を振り上げる。
しかし次の瞬間……レッドスキンの目からフッと光がなくなると、手にしていた棍棒を地面に落とし、仰向けに倒れた。
「ふぅ~……なんとかなったか。」
倒れたレッドスキンを目の前にして大きく息を吐きだすと、久方ぶりに俺の頭に声が響いた。
『レベルが1上昇しました。』
「お、レベルアップか。」
ナインとの過酷なレベリングのおかげでレベル50になってから、ノーザンイーグルを倒したりいろんな経験をしたのだが、レベルアップの通知は一度もなかった。このレベルになると途端にレベルが上がりにくくなるのだろうか。
そんなことを思っていると、またしても声が響いた。
『新たなスキル魔力爆発を取得しました。』
「魔力爆発……今のやつか。」
この世界の新たなスキルの取得条件は、いろいろな条件があるだろうが……実際に自分で何かしら新しいことをしてみると取得しやすいみたいだな。
久しぶりに聞くこの声に耳を傾けていると、ナインがこちらに歩み寄ってきた。
「マスターお怪我はありませんか?」
「あぁ問題ない。」
「ナインの不手際で……危険な目に────。」
そう言って謝ろうとする彼女の言葉をさえぎって俺は言った。
「気にすることじゃない。もともと俺が頼んだことだしな。」
落ち込んでいるナインにそう言って、俺はレッドスキンを収納袋へとしまう。
「これで依頼は一つ終了だ。残りはブラックスネーク……場所は毒の森か。」
「マスター、次は毒の森へと向かわれるのですか?」
「あぁ。」
「先ほどの攻撃でかなり魔力が低下しているようですが……問題ありませんか?」
「大丈夫だ。」
「ご無理はなさらぬよう……お願いいたします。」
「わかってるさ。それじゃもう一回頼む。」
「はい。」
そしてナインは空間を切り裂いてブラックスネークのいる毒の森へとつなげた。今回の事例があったから少し警戒しながらくぐると、目の前に毒々しい色をした大きな水たまりが広がっていた。
「うはぁ……いかにも毒って感じだな。」
俺の後に続いてナインもくぐってきた。
「なぁナイン?あの目の前の水たまりってやばいやつか?」
「はい、有機物無機物に関係なく、触れたそばから腐食する強力な毒です。くれぐれも触らないようにご注意ください。」
おぉぅ……。興味本位で近づかなくてよかったな。ブラックスネークと戦う前に腐食されるのは勘弁願いたい。
「この森はあのように強酸性の毒が至る所から染み出ているようなので、戦う際は足元にお気を付けください。」
さっきのレッドスキンとは違って今回はなかなか足場も悪いし苦戦しそうだな。
と、幸先不安になっているとナインが声を上げた。
「マスター、多数の生体反応がこちらに向かってきています。」
「なに?」
「一直線にこちらを目指してきていることから恐らく、目標は私たちかと。」
「おぅおぅ……。」
さっきから手厚い歓迎が続くなぁ。おせっかいにもほどがある。だがまぁ、向かってくるなら倒すまでだ。
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