魔王城のグルメハンター

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
96 / 350
第3章 魔王と勇者

第096話 結果発表

しおりを挟む

 そしていよいよ、祭りに参加していた人々全ての集計が終わると、舞台の上にマイクを持った司会の人が立った。

「はい!!ただいま集計が終わりました~っ!!」

 彼女の声と共に、大きな声援が上がる。

「今年で第100回を迎えるこのお祭りっ!!なんとなんと、大波乱が起こっております!!今から番号を呼ばれた人は舞台に上がってきてくださーい!!」

「わ、アルマも呼ばれるかな?」

 アルマ達も期待に満ちた目で手渡された番号札を見つめていると、司会の女性が番号を呼び始めた。

「まず最初に……1864番の方っ!!」

「はいは~い!!私~っ!!」

 1864番の番号札を大きく掲げたのはリルだった。

「お~っと、二年連続優勝者のリルさん!!どうぞこちらへ!!」

「あははっ!!それじゃ、お先~。」

 アルマ達に手を振って、リルはスキップしながら舞台の上へと上がる。

「さぁ、まだ諦めちゃいけませんよ~?お次は~……2024番の方っ!!」

「あっ!!アルマだっ!!はいはいっ!!は~い!!」

「おおっとぉ!!ここでなんと我らが魔王様……アルマ様の登場です!!」

 司会の人がそう言った瞬間に、辺りから大きな声援が上がった。

「むぅ、我よりも先におぬしが呼ばれるとは……。」

『アルマちゃんすごい。』

「えへへ、それじゃ行ってくるね!!」

 アルマもカナンとラピス、そしてジャックに手を振って舞台の上へと上がっていった。

「うむむ……これはこれでなかなか緊張感があるな。」

『さっきまだ諦めちゃいけませんよって言ってたので、まだチャンスはあると思うんですけど……。』

「ホッホッホ、カナン様の言うとおりです。今はゆるりと番号が呼ばれるのを待つべきかと。」

「むぅ……。」

 不安がるラピスだったが、その不安もすぐに払拭されることになる。

「それではお次は~っ……2025番の方っ!!」

「おぉっ!!我だっ!!」

 自分の番号を呼ばれたラピスは喜びながら舞台の上へと上がっていく。すると、リルとアルマの二人に声をかけた。

「むっふふ、我もここに登り詰めてやったぞ。」

「あはっ、キミもたくさん釣ってたもんね~。」

「後はカナンだけだね。」

 そしてアルマはカナンのことをじっと見つめた。

「さぁ、残すは二人……四人目の番号を発表します!!四人目は~2026番の方っ!!」

「っ!!」

 カナンは呼ばれた数字と自分の持っていた番号札を照らし合わせ、それが自分であることを確信すると、番号札を掲げながらピョンピョンと跳ねてアピールした。

 そんな彼女を見つけた司会の女性は舞台に上がるようにに促した。

「さぁさぁ、あなたもこの舞台へどうぞっ!!」

 その言葉に引き寄せられるようにカナンはとてとてと歩いて舞台の上へと登った。

「おぬしも来たか。」

「カナンも呼ばれて、アルマ達はみんな呼ばれたねっ!!」

 二人の言葉にカナンはコクコクと頷いた。

 そして司会の女性はいよいよ最後の番号を読み上げる。

「さぁ、いよいよ最後です!!この舞台に上がることのできる最後の方は~…………2400番の方っ!!」

 彼女がそう大きな声で読み上げたのだが、会場に詰めかけている大量の人達は誰も手を挙げない。

「あ、あれ?2400番の方~?いらっしゃいませんか~?」

 再び呼び掛けるが、会場がざわめくだけで手を挙げる人物は一向に現れない。

「あれれれ……い、いらっしゃいませんかぁ。」

 呼んだ番号の人がいないことに少し司会の女性は頭を抱えるが、すぐに切り換えて進行を始めた。

「で、ではいらっしゃらないようなので、今回はここにいらっしゃる四方で順位発表を行いたいと思います!!」

 彼女の進行に再び大きな声援が上がった。

「それではまず、第4位から発表します!!釣ったバルンフィッシュの数はなんと65匹!!大会記録にあと一歩及びませんでした……。それでは今大会第4位は…………番号1864番!!前回王者リルさんです!!」

「あちゃ~……4位かぁ~。残念。」

 前回大会の王者であるリルが4位という結果になり、大波乱の予感を感じ取った観客達は大きくどよめいた。

「4位の方への景品はこちらで~す!!」

 そう言って司会の女性がリルに手渡したのは、一升瓶に入ったお酒だった。

「あれ、これ……お酒?」

「その通りです!!北の大地で作られた穀物を原料に作られた希少な発酵酒です!!」

「へぇ~、これは飲んだことないや。これが景品なら、なんだかんだ4位で良かったかも。」

 そう言ってリルは笑った。

「それではではでは~、第3位の発表に移ります!!映えある第3位は~……釣った数67匹!!大会記録と並ぶ釣果を見せた……2025番の方っ!!」

「くぁ~っ……我か。」

 3位という結果に少し残念そうにするラピス。

「3位の方への景品は~……こちらです!!」

 そして司会の女性が持ってきたのは何やら大きな緑色に澄んだ宝石がはめこまれているブレスレットだった。

「これはなんだ?」

「こちらは翡翠という宝石を加工して作ったブレスレットになります!!」

「ほぅ……宝石か。まぁ煌めくものは嫌いではない。これはこれで悪くはないな。」

 なんだかんだ嬉しそうな表情を浮かべるラピス。

 そしていよいよ、1位と2位の発表が……。

「さぁでは、いよいよ映えある大会優勝者、並びに準優勝者の発表に移ります!!」

 アルマとカナンは二人して両手で祈りを捧げるようにしてその瞬間を待ちわびていた。

 果たして優勝はどちらの手に渡るのだろうか?

 会場の熱気もクライマックスに近づく中、司会の女性はアルマとカナンの手を取った。

「今年の優勝は~……。」

 そして勢いよく司会の女性はアルマとカナン二人の手を上へと上げた。

「なんとお二人とも釣果70匹!!史上初の同率1位です!!」

 司会の女性のその言葉と共に二人に大きな拍手が送られる。一方、アルマとカナンはポカンとした表情を浮かべていた。

「え、え?アルマもカナンも優勝ってこと?」

『そう……みたい?』

 状況についていけずにいる二人に司会の女性はあることを告げた。

「まさかまさか、こんな事態は我々運営も予想していなかったので、優勝賞品は後程2つ揃えてお送りいたしま~す!!それではこれにて結果発表を終了します!!お集りの皆様、もう一度盛大な拍手をお願いしま~す!!」

 舞台の上に上った4人に再び大きな声援と拍手が送られ、今回のお祭りの幕は下りたのだった。









 そして結果発表も終わり、運営の人たちが後片付けに勤しんでいる最中、司会者だった女性がぽつりとつぶやいた。

「それにしても、あの2400番の人どこ行っちゃったんでしょうね?」

 そのつぶやきに、周りの人が答える。

「その2400番って、本当は優勝するはずだったんだろ?」

「うんうん、数えた限りだと120匹?とかだったみたいだよ。」

「120って、ぶっちぎりで優勝じゃねぇかよ。もったいねぇな。」

「まぁでもその人が来なかった代わりに魔王様が優勝したんだし、お祭りとしては成功だったんじゃない?」

「うん、そうだね!!終わり良ければ総て良しっ!!あの人にはまた来年期待しよっ!!」



 祭りが終わるころ、自室で仮眠をとっていたカオルのポケットからはらりと1枚の紙が床に落ちた。その紙には番号が書いてあり、2400と書いてあったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

処理中です...