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第1.5章 レベリング

第040話 幽霊船

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 難破船の中へと足を踏み入れると、中は想像通りとても薄気味悪い。

「薄気味悪いところだな。」

「いつが出てきてもおかしくはないな。」

「ご、ゴーストだって!?」

「む?」

 ゴーストってつまり……幽霊ってことだよな!?覚悟はしていたが、最悪だ。

 思わず嫌な顔を浮かべていると、ラピスが何かに気がつき、にやにやと笑いながら話しかけてきた。

「お~?むふふふ、カオル……もしやおぬし、ゴーストは苦手か?」

「逆に好きなやつなんていないだろ?」

……ネクロマンサーはゴーストが欠かせない存在なのだぞ?」

「俺はお断りだ。」

 あいにく昔からそういう類いのものは嫌いでな。ホラー映画とかろくに見れたもんじゃない。

 薄気味悪いこの場所を恐る恐る歩いていると、目の前に魔物が現れた。

「オォォォォォォッ…………。」

「で、出やがった。」

 現れた魔物はまさにという名が相応しい風貌をしていた。白いオーラのようなものが体を構成しており、下半身がない。

 固まっている俺を置いて、ラピスは現れたゴーストへと向かって走り出す。

「ほれっ!!」

 そして瑠璃色の鱗を纏わせた拳を叩きつけると、ゴーストは青い粒子となって消えていった。その光景を間近で見た俺は思わず口からこぼれた。

「ご、ゴーストって倒せるのか?」

「ん?もちろんだ。ゴーストとはいえ、ただの魔物に過ぎん。攻撃を与えれば倒せる。」

「そ、そうなのか……。」

「とはいっても、ゴーストはパッシブスキルで物理攻撃無効を持っている。故に魔力を纏わせた攻撃でないと倒せん。」

 魔力を纏わせた攻撃なら俺にもできる。ついさっき取得したものがな。

「倒せるなら問題ない。」

 取りつかれたり、呪いをかけてきたり、驚かせてきたり……そういうことをされなければ問題はない。倒せるのなら……ただの魔物と同じだ。

「本当にそうか~?我にはまだ怯えておるようにも見えるが?」

「なら次出てきたら俺がやるよ。」

「頼もしいことだの~。期待しておこう。」

 そう口にしたのは良いものの、最初に一匹ゴーストが出て来て以降、一匹もゴーストに遭遇しない。
 そのお陰でだいぶ船内の調査は捗ったのだが……どうも釈然としない思いがある。

「あと調べてないのはこの部屋だけだな。」

 そして遂に……調べる場所も残り一部屋となってしまう。最後に調べるのは船長室だ。

「またゲートガーディアンがおるやもしれん。気を付けるのだ。」

「あぁ。」

 警戒しながらボロボロの扉を開けると、真っ先に目に入ったのは、部屋の中心に置かれている豪華絢爛な宝箱だった。

「……ラピスあれは――――――。」

「十中八九、であろうな。」

 まぁ流石にただ宝箱があるなんて、そんなうまい話は無いか。だが、宝箱の下敷きになるように次の階層へと続く階段が見えている。なんにせよ、この宝箱を退かさないと先には進めないらしい。

「ラピス、どうする?」

「どうするもなにも……あれを退かさねば先には進めんのだろう?ならこうするまでよ。」

 ラピスは一階層で魔物の包囲網を破った時と同じように構えると、彼女の前に空気が渦巻き始めた。

暴風ボルテックス。」

 そして放たれた暴風ボルテックスは宝箱を飲み込む。あっさりと破壊してしまったと思ったのだが、暴風ボルテックスに飲み込まれた宝箱は無傷でその場に佇んでいた。

「むぅ……破壊はできぬか。」

 顔をしかめたラピスはゆっくりと宝箱に近づいていく。そして手をかけると、勢い良く宝箱を開け放った。

「なっ!?ラピス、罠じゃなかったのか!?」

「罠だろうがなんだろうが、破壊できぬのなら仕方あるまい?それに中身も気になるしの。」

 主な理由は絶対最後に語った、中身が気になるだろうな……。まぁ、こんな宝箱が置いてあったら中身が気にならない方がおかしい。

「さてさて、何が入っておるのやら……。」

 ラピスとともに宝箱のなかを覗き込むと、そこには細い布で包まれた何かが入っていた。

「む?なんだこれは。」

 それを手に取ったラピスは、スルスルと布をほどいていく。すると、吸い込まれるような真っ黒な刀身の小さな小刀が姿を現した。

「アーティファクトでは無さそうだの。我にはこんなもの要らん。」

 予想していたものと違うものが入っていたせいで大きなため息を吐き出したラピスだったが、俺はそれに妙に目を惹かれていた。 

「ラピス。それ……いらないなら俺がもらってもいいか?」

「良いぞ、我には必要ないものだからな。」

 彼女からそれを受けとり、握ってみると……不思議なことに長年使っている包丁のように手に吸い付いてくるような感触を感じた。
 そして同時にコレがただの刃物でないことも伝わってくる。具体的には上手く説明できないが……とにかく普通ではないのだ。

(後でカーラに見てもらったら何かわかるか?あれだけ魔法に精通してるのなら、こういうもののこともわかるかもしれない。)

 そう確信すると、俺はその黒い小刀を収納袋へとしまいこんだ。

 その間にラピスは空になった宝箱を階段の上から退かしてしまっていた。

「宝箱を開けても、退かしても何の変化もないということは、罠ではなかったようだの。」

「どうやらな。」

「まぁ、それはここまで来た者への報酬として受け取っておこうではないか。さぁ、次だ!!」

 そしてラピスは一人ずかずかと階段を下っていく。それに着いていこうとした時、収納袋が突然ドクンと脈打ったような気がした。

「…………??気のせい……か?」

「カオル~!!置いていくぞ~!!」

「あ、あぁ今いく。」

 その時は先を急いでいたため特に気に止めなかったが……確かに何かがドクンと脈打ったような気がした。

 それが何なのかはわからないが……。

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