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第1.5章 レベリング
第037話 ダンジョン
しおりを挟むいよいよダンジョンへと出発するこの日がやってきた。今日のためにしっかりと準備は整えてきた。アルマ様の食事のストックを作ったり、ダンジョンの中で過ごすためのさまざまな道具も買いそろえた。
いざダンジョンへと向かおうとラピスとともに歩いていると街の入り口でリルが俺たちのことを待っていた。
「やぁ、今から向かうんだね?」
「うむ!!行ってくるのだ。」
「キミたち二人なら大丈夫だとは思うけど、とにかく無理はしないようにね。この子なんか特にやらかしそうだから、キミがしっかり目を光らせておくんだよ?」
「おぬしは我を何だと思っておるのだぁッ!!」
「あはは♪ま、気を付けるんだよ。」
いつものようにリルはラピスのことをおちょくって遊んでいる。
「ラピス、そろそろ行くぞ?」
「ぐぐぐ、帰ってきたら覚えておくのだ!!」
最後までリルに噛みつくラピスを引きずって俺達は街を出た。
街道に出てからもラピスはグチグチ言っている。
「あやつめ……我の半分も生きておらぬくせにおちょくってきおって。」
「仕方ないだろ?ラピスが弄られやすいのが悪い。」
「我が悪いというのか!?」
「まぁ、長いときを生きてるって言っても威厳がな~……。」
「むぐぐぐ、この姿では威厳も何も出すことはできんのだ。元の姿に戻ればもしかするか?」
「頼むから今ここで元の姿に戻るのはやめてくれよ?まだ人通りが多いんだからな。」
こんな人通りの多い街道でラピスが本来の姿のドラゴンなんかに戻ってしまえば、騒動になるのは必至。
ダンジョンに向かっている途中での面倒事は避けたい。
「わかっておる。それで?ダンジョンはここからどのぐらいのところにあるのだ?」
「ここから少し行ったら街道を外れて、一時間位歩くみたいだ。」
「ふむ、少し暇な道程になりそうだの。」
「まぁそう言うなよ。」
まさかダンジョンへと直通する馬車なんて出ているわけがないし、歩いていくしかないのだ。
そして地図を頼りに人通りの多い街道を外れて、ダンジョンのある方向へと歩みを進めていると、俺達の前に立ち入り禁止の規制線が張り巡らされていた。
「この規制線の先がダンジョンらしい。」
リル曰く、あまりに危険だから人が入れないようにこうしてダンジョンの回りに規制線を張り巡らせているらしい。
「ようやくお出ましか。さて、通らせてもらおうかの。」
俺よりも先に規制線をくぐり、先へと進んでいくラピス。彼女を見失わないように俺もすぐに後ろについていく。
少し進むと視線の向こうに、突然地下へと続く入り口が現れた。
「カオル、コレがダンジョンの入口だ。」
「こんな風に地下に続く階段なんだな。」
「入口はこれ以外にもいくつか種類があるが、一番多いのがこの造りだの。」
ということはこれを下っていけば……ダンジョンに入る事ができるというわけか。
「さぁカオル!!こんなダンジョンとっとと攻略して、あやつを見返してやるのだ!!」
「あっ!?お、おいラピス!!」
俺の制止も聞かずにラピスは目にも止まらぬ早さで、真っ先にダンジョンへと続く階段を下っていってしまう。
「まったく……少しは警戒ぐらいしろっての!!」
一つため息を吐き出して彼女の後を追おうとしたその時だった。
ズンッ…………。
「っ!?下からだっ!!」
突然地面を揺らすほど大きな衝撃波が下から響いてきたのだ。嫌な予感を感じざるをえなかった俺は、急いで薄暗い階段を下っていく。
そして階段の先にあった大きな扉を抜けると、地下とは思えない景色の真ん中に両手両足を瑠璃色の鱗で覆ったラピスが立っていた。
どうやら……無事だったらしい。
彼女は降りてきた俺に気が付くと、笑みを浮かべ手を振った。
「む?やっと来たかカオルよ。」
手を振る彼女の背後には顔面が大きく陥没した魔物が倒れている。その魔物は青い粒子となってラピスの体に吸収されていた。
「お、お前なぁ……もう少し慎重に行くってことはできないのか!?」
「なんだ、我を心配してくれたのか?」
「当たり前だろ、一人で走っていったと思ったら衝撃波が響いてきたし、何かあったって思うのが普通だろうがっ!!」
「むぅ、そんなに怒られるとは思わなんだ……次からは気を付けよう。」
「……まぁ無事だったから今回は大目に見る。ホントに次からは気を付けるんだぞ?」
「うむ。」
「ふぅ……にしてもここがダンジョンの中なのか?」
俺達が今いる場所には、地下ではあり得ない景色が広がっていた。それは地下なのに、俺達の上には青空が広がっているのだ。
「地下なのに空がある……。いったいどうなってるんだ。」
「ダンジョンは色々な空間を繋ぎ合わせた空間なのだ。故に空があることもあれば、海があることもある。」
「なるほどな。」
「まぁ、ダンジョンの中は予想もできない異空間が広がっていると思っておけば良い。」
知れば知るほど、ますます不思議な空間だな。
「して、カオルよ。」
「ん?」
「ここの魔物はなかなかに歯応えがあるぞ。戦うときは気を付けるのだ。」
「わかった。」
レベル100を越えてるラピスがそう言うのだ。かなり強い魔物がこのダンジョンの中を蔓延っているのだろう。
俺からしたら好都合だ。強い魔物であればあるほど経験値も多いに違いない。そしてダンジョンの性質をプラスすれば……これ以上ないぐらいレベルアップが期待できる。
そう期待で胸を膨らませていると、突然何もなかった筈の空間に歪みができて、大量の魔物が俺とラピスの周りに現れた。
「言い忘れておったが、ダンジョンの魔物はこんな感じで何もないところから急に現れるからの。」
「もっと早くそれは聞きたかったな。」
「知ったところで対処できるものでもあるまい?ならば片っ端から倒していた方が気が楽だろうと思ってな。」
「ごもっともで……。」
俺が拳を構えると、背中を合わせてきたラピスがニヤリと笑いながらある提案をしてきた。
「カオルよ、この魔物……どちらが多く倒せるか勝負しようではないか。」
「別に良いぞ?」
「むっふっふ♪ならば報酬は、自分の分の菓子を少し相手に分けることだ!!」
「乗った。」
ラピスの提案に笑って答えると、魔物達が一斉に襲いかかってきた。
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