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第1.5章 レベリング

第030話 大人買い

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 いよいよ俺たちは目的の大型ショッピングセンターの前へとやってきた。俺はすでに何度もお世話になっているから見慣れている場所だが、アルマ様やラピスにとってはかなり目を惹く建物だったらしい。二人は遠目で見ながらもいったいどんな建物なのかと期待を膨らませていた。

「お~っ!!おっきい!!アルマこんなの見たことない!!」

「我もこのような建築物は初めて見たな。」

「カオルあの中に何があるの?」

「あの中では食料品や衣服などなど日用品が多数売られています。」

「へぇ~!!面白そう。」

「衣服には興味なんぞはないが、食料品には興味がそそられるのだ。」

 二人がそわそわし始めたので、早速中へと入ることにした。

 中に入ると、目の前には巨大な食料品売り場が広がっていた。俺が求めている調味料もこの売り場にあるはずだ。

「ふわぁぁぁぁっ……すごいいろんなのがあるねカオル!!」

「お、おいカオルよ!!そこに置いてある果物のようなものは食っても良いのか?」

「ダメに決まってるだろ。」

 ラピスは今にも陳列されている果物に飛び付きそうになっているが、なんとかそれを抑えつける。流石に買ってもいないものを食われたらたまったものではないからな。

「その代わり、食べたいと思ったものは…………まぁ10個位までなら買ってやる。」

「おぉ!!太っ腹だの!!」

 喜ぶラピス。一方アルマ様は指を咥えながらおずおずと問いかけてきた。

「カオル、アルマもいい?」

「もちろんです。お好きなものを……。」

「えへへ、やった~!!」

 すると、パタパタと走ってアルマ様はスーパーマーケットの中へと飛び込んでいってしまった。

「あっ!?アルマ様!!」

「カオル様、魔王様は私めが……。」

 アルマ様の後ろをジャックがついていく。彼がついているのなら安心だろう。

 ホッと一安心していると、両手いっぱいにいろんなものを抱えたラピスがやって来た。

「ラピス……10個までって言ったよな?」

「10個なんて小さい数字では収まりきらなかったのだ。」

 しょぼんとしながらラピスは言った。

「はぁ……まぁいいや。」

 まぁラピスの気持ちはわからんでもない。見たこともない物を大量に目の前にすれば、欲しくなるのは必然のことだからな。

 そして俺はラピスが持っていた果物や野菜、肉、お菓子の中からいくつか手にとって買い物かごに放り込んだ。すると、ちょうどラピスの手に持っているものが約10個ほどまで減った。

「これはもともと買おうと思ってたからな。残ったそれで10個ってことにしてやるよ。」

「ホントか!?」

「あぁ。」

「むふふふふふっ♪やったのだ。」

 ひどく上機嫌になったラピスを連れて調味料売り場へと向かう。そして様々な調味料を買い物かごに放り込んでいると、アルマ様とジャックがカートを押してやって来た。

「カオル!!ここすごいいっぱい美味しそうなものあるんだね。ついいっぱい持ってきちゃった。」

 そう口にしたアルマ様が押していたカートにはぎっちりとお菓子等々が詰められていた。そしてとなりにいたジャックが申し訳なさそうに頭を下げた。

「申し訳ありませんカオル様……。」

 ジャックは立場上、アルマ様に物申すことが難しい。だから彼がアルマ様を止められなかったのも容易く想像がつく。

「大丈夫ですよ。」

 俺がそう了承すると、ラピスが驚きながらこちらを向いた。

「あれはよいのか!?」

「なんだかんだラピスだっていっぱい持ってきただろ?」

「むぐぐぐ、確かにそうだが……。」

「ま、お互い様ってことで文句は無しだ。」

「うぐぐ……わかったのだ。」

 渋々ラピスも納得させたところで俺は会計へと向かった。

 そして店員の口から告げられた金額は……。

「合計で3万4千2百円になります。」

 おおぅ……俺の買った調味料とかだけで一万いくかいかないかのところだったと思うが、それ以外でけっこう出費が嵩んだな。
 まぁ、今ではこのぐらいの出費はどうってことはない。何せ貯金はまだまだあるからな。

 ちなみにどうやってあちらの世界のお金をこちらの世界のお金に変えているかというと、ジャックがというもので変えてくれている。
 あちらの世界の金貨を対価として捧げると、こちらの世界の一万円札に交換されるという仕組みらしい。

 なんとも便利な技だよな。

 会計も終えたところでショッピングセンターを後にして帰路についた。

「カオル、こんなにいっぱいありがと~。」

「大丈夫ですよ。」

「ホントは我ももう少し欲しかったのだがの~。」

「また次に来たときに買ってくれ。ただし、今度は自分のお金で買えるようにな。」

 そんな会話を挟みながら歩いていて、いよいよジャックの屋敷が見えてきたところで異変が起こった。

「ん!?」

 突如として俺以外の全ての時が止まったのだ。どうやらこの世界でもパッシブスキルの危険予知は有効らしい。

「この世界で危険予知が発動するのか。」

 まぁこのウイルスのせいで犯罪率は著しく上昇していたし……この世界も前ほど安全じゃなくなっているってことだな。
 さてとまぁ、そんなことは置いといてどうしてこんなところで危険予知が発動したんだ? 

 キョロキョロと辺りを見渡してみるが、特にこれといって危険そうなものは見当たらない。

「危険予知はこれから先の未来を予測して発動している。ってことは……もしかして。」

 みんなよりも先に少し進んでみると、細い十字路の左右の道に鉄パイプや角材等を手にしている集団が待ち構えているのが見えた。

「なるほどこいつらか。」

 いかにも野蛮な格好をしたそいつらの腕には蠍の刺青のようなものが……。

「蠍の刺青?確か……前にニュースで見たな。」

 この世界にウイルスが蔓延し始めて、問題を起こし始めた半グレ集団がいる……って確かニュースで報道していたのを見たことがある。そしてその半グレ集団の特徴は体のどこかに蠍の刺青を彫っているということも……。

 恐らくさっき買い物をしているときに目をつけられたか。あれだけ大人買いをしていたからな。俺達を金持ちだと思って待ち構えていたのか。

「厄介なのに目をつけられたな。」

 まぁ、厄介なのに目をつけられたからといってもやることは変わらない。

 パキパキと指を鳴らすと、俺は両方の拳を軽く握った。

「全力でやったら死ぬかもしれないからな。この最初の一回だけは手加減してやるよ。」

 二度目も襲ってきたら……その時は手加減しないかもしれないがな。そして俺は半グレ集団の中へと歩いていくのだった。
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