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第1.5章 レベリング
第020話 新たな始まり
しおりを挟むアルマ様が一つ成長した次の日、俺のもとにある知らせが届く。
コツコツ……コツコツ。
「ん?」
窓を何かがつつくような音で目が覚め、気になって窓を開けてみると、そこには一枚の紙を咥えた鳥が待っていた。
この鳥は号外鳥と言って、この世界で大きな出来事があると様々な人のもとへ号外を持って配ってくれるとても賢い鳥だ。
「号外か。今度は何があったんだ?」
鳥の咥えていた号外を手に取ると、号外鳥はまたどこかへと飛んでいってしまった。
「なになに…………キノコの森で火事だって!?」
号外に大々的に書かれていたのはキノコの森で大規模な火事が起きている。というものだった。
「どうなってるんだいったい。」
記事を読み進めていると、原因は何者かが強力な炎の魔法を使ったことによる人為的なもの。だと書いてある。
「人為的なものか。」
つまりは放火。意図的にキノコの森を燃やしたということになる。
「とんでもないことをする輩もいるんだな。」
キノコの森が火事ってなると、しばらく立ち入るのは無理そうだな。
近いうちにまた行きたいと思っていたのだが、こうなってしまっては仕方がない。諦めよう。
号外を丸めてゴミ箱に放り込むと、バン!!と音を立てて勢いよく部屋のドアが開けられた。
「カオル!!朝飯の時間だ!!」
そう朝っぱらから喧しい大声を上げながら入ってきたのはラピスだった。
バタバタと俺のベッドへと走ってくると、ぴょんとジャンプし俺の腹の上へとのし掛かってきた。
「うぐっ……お、重っ。」
「むっ!?失礼なヤツだの。乙女に重いという言葉は言ってはいけないのだぞ?」
「だったらもっと乙女らしくしろよっ!!」
「むおっ!?」
ラピスをポイと放り投げるようにすると、彼女は背中から翼を生やして、クルリと一回転しながら床に足をつけた。
「全く、相変わらずの馬鹿力だな。それよりも、早く我の飯を作るのだ!!」
「待ってくれよ、アルマ様の朝食の時間までまだ時間が……。」
バン!!
「カオル~!!朝ごは………あっ!!」
「むっ?」
なんというタイミングだろうか、意気揚々と俺の部屋に入ってきたアルマ様。必然的にラピスとアルマ様はちょうど視線が合ってしまう。
「あれ~?ラピスも起きてたんだ。」
「悪いかの?」
「うぅん、ぜ~んぜん?」
とてとてとアルマ様が俺の近くに小走りで近付いてくる。
「カオル、今日も朝ごはんはオムライスがいいな~。あ、今日はケチャップでお願い!!」
「わかりました。ではその様に。」
「ちょっと待つのだ!!」
今日の朝食のメニューが決まり、すっかりその気になっていたアルマ様と俺にラピスが待ったをかけてきた。
「ラピスなに~?」
「そのおむらいすとはなんだ!!」
「え、オムライス知らないの?」
「知らん!!」
ばん!!と胸を張ってラピスはそう答えた。特に胸を張って言えることではないと思うが……。
「オムライスはね~、トロットロでフワフワで美味しいんだよ~?」
「トロトロでフワフワとな?」
「えへへ~、まぁ食べてみればわかるよきっと。」
「そ、そうなのか?」
ちらりとこちらにラピスは確認の視線を送ってきた。その視線に俺は一つ頷く。
「アルマ様の言うとおりだ。初めて食べる料理ってのは食べてみないとわからないものさ。」
「じゃあアルマは行ってるからね~。ラピスも一緒に行こ?」
「のわっ!?おい、ひ、引っ張るでない!!」
そしてアルマ様はラピスのことを引っ張って行ってしまった。
「さて、待たせるわけにもいかないし早く準備して行くか。」
調理服に身を包み、俺はアルマ様達が待つ厨房へと足を運ぶのだった。
アルマ様たちに朝食を振る舞ったあと、俺はジャックに呼び出され、彼の部屋へと足を運んでいた。
「よく来てくださいましたカオル様。」
「いえいえ、それで今回はどんな用件です?」
「今回お呼び立てしたのは、他でもありません。魔王様のことでございます。」
「アルマ様の?」
「はい、恐らく次にアルマ様が欲すモノは相当に準備が必要だと思いまして。」
アルマ様が次に欲するもの?つまりは魔王としての成長に必要な食材ってことか。
「次に魔王様が欲する食材は、獄鳥の肉でございます。」
「獄鳥?」
「黄金林檎とは違い、今度は魔物でございます。」
「なるほど。」
つまり、今度はしっかりとターゲットの魔物を仕留めないといけないということだ。採取ではなく狩猟……まるっきりジャンルが変わる。
「獄鳥というのはここから北に行った大地にある雪山の頂上に住む魔物でございます。雪山という過酷な地ということもあり、キノコの森に住むドラゴンよりも強い魔物がたくさん住み着いております。獄鳥はその中の頂点に立つ魔物です。」
「えぇ……じゃあもっとレベルを上げないといけないってことですか?」
「まぁ、単純に言えばそうですな。」
「ちなみに目標としてはどのぐらい……。」
「だいたいレベル50と言ったところでしょうか。」
「50!?」
今のレベルから約30も上げないといけないのか。遠い道のりだ。
「はい、私や魔王様とお手合わせすればレベルが上がりやすいのは間違いありません。ですが、それでは恐らく間に合わないでしょう。」
「じゃあどうすれば?」
「なので、カオル様には魔物ハンターのギルドへと登録していただきたいのです。」
魔物ハンターと言えば、レッドキャップ達を引き渡した人達のことだよな。
「魔物ハンターのギルドでは様々な魔物の討伐依頼を取り扱っております。魔物を討伐することほど経験値を獲得するのに適したものはありません。」
「なるほど……。」
「ギルドの長は私の知り合いですので、こちらから話を通しておきます。良ければ行ってみてはどうですかな?」
「わかりました。」
チラリと時計を見ると、アルマ様の昼食までまだ時間がある。行って話を聞いてくるぐらいなら問題ないだろう。
「じゃあ早速いってきます。」
「本来は私が手伝うことができれば良いのですが、掟がありますので……。」
「大丈夫です。毎日お世話してもらってるので、それだけでもありがたいです。」
そして俺は席を立つと、ジャックに一礼して件の魔物ハンター達が集まるというギルドへと向かった。
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