腐りかけの果実

しゃむしぇる

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二節 開花

4-2-9

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 不敵に笑うエリーは、男の前で拳を構えた。

「肉弾戦……得意なんだろ?お前の土俵でやってやるよ。」

「生意気な女……殺すゥ!!」

 簡単にエリーの挑発に乗ってきた男は、人間離れしたパワーとスピードで拳を振るう。

「流石に速ぇな。」

 しかし、その拳を簡単にエリーは躱すと、男の顔面に軽いジャブを叩き込んだ。

「ブグッ!!」

 その一撃で鼻が折れ、男から鼻血が吹き出す。だが、目に見えてわかるほどすぐにその怪我も治ってしまった。

「ん~、やっぱり治っちまうか。」

 男の様子を淡々と考察していると、一瞬怯んだ男の眼光がギロリと再びエリーを捉える。

「オォッ!!」

「おっ!!」

 伸びた男の手がエリーの頭を鷲掴みにする。そして尋常ではない力を込め、彼女の首をへし折ろうと試みる。

 しかし……。

 ボクッ…………。

「ガアァァァッ!?」

 嫌な音を立てて、エリーの頭を掴んでいた男の手首が折れ曲がる。

「なるほどな。今のでテメェのことがある程度わかったぜ。」

 パッと頭を掴んでいた手を払うと、エリーは男の股間を容赦なく蹴り上げた。

「カッ……ハッ…………。」

 大きく目を見開き、男は股間を押さえて膝から崩れ落ちる。

「効くだろ?傷が早く治るとは言え、完全に痛みに耐性があるわけじゃねぇ。」

「ぐぅぁぅぁ……。」

「フン!!」

 悶絶する男をエリーは蹴り飛ばす。そして転がった男の顔面を踏みつけると、徐々に足に力を込めていく。

「ががッ……ア。」

 ミシミシと鈍い音を立てて、少しずつエリーの足が男の顔面にめり込んでいく。

 当然男は藻掻き抜け出そうとするが、尋常ならざるエリーの力にはどうすることもできず……。

 バキャッ!!

 最終的には顔面を踏み砕かれてしまう。

 硬直し、ピン……と伸びた男の手足。普通の人間なら即死しているような一撃だが……エリーの踏み抜いた頭は徐々に元の形に戻ろうと再生を始めていた。

「やっぱり心臓が弱点……か。ならまぁ、こっちとしても。」

 腰から銀のブレードを抜くと、エリーは男の首の根元を叩き切った。

 そして自分の手の甲へと向かって話しかける。

「持ってけよ。」

 そう語りかけると、男の体の下に眼が現れ次の瞬間には男を完全に飲み込んだ。

「さてと、ほんじゃ残りを片付けるとするか。」

 すでにカラスによって半壊状態にあるロシアンマフィアの集団へと向かって、エリーは歩みを進めるのだった。
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