腐りかけの果実

しゃむしぇる

文字の大きさ
上 下
84 / 88
二節 開花

4-2-6

しおりを挟む

 ロシアンマフィア達が車で去っていき、ある程度の情報収集を終えたエリーが現場から離脱しようとしたとき……彼女は背後からねっとりとした視線を感じた。

「はぁ、な~んでこんなとこでまたテメェと鉢合うんだよ。」

「偶然……いえ、これは必然だったのでしょうかねぇ~。」

 暗闇からゆらりと姿を現したのは眼の吸血鬼。

「ロシアンマフィアに変な薬流したのはテメェらか?」

「いいえ~、違います。」

「だが、あいつ等の仲間にゃ明らかに人間離れしてるやつがいたぜ?それこそ吸血鬼に近ぇヤツだった。」

「その調査に私も赴いているというわけですよぉ~。」

「ヴラドの野郎がとっととロシアンマフィアを壊滅させりゃ、アタシが動かなくてもいいんだがなぁ~。」

「残念ながら、ヴラド公は海外出張中ですねぇ~。」

「海外出張ね。なに企んでんだか。」

 エリーはポケットから煙草を取り出すと、口に咥えて火をつけた。

「この際ですし、あなたに少し私達のことをお話しておきましょうかぁ~。」

「あん?」

 すると、眼の吸血鬼は話し始める。

「この世界には4箇所……私達吸血鬼の支部があるんですがぁ。一つはご存知、この国日本……続いてアメリカ、フランスときて最後にロシアにもあるんです。」

「とっくに海外進出してたのかよ。その割に戦地じゃ見なかったな。」

「まぁ、海外の支部は主に研究に力を置いていますから。実働部隊が私達みたいなものなんですよぉ~。」

「ほぉん……で?そんな話をするからにゃ何かあんだろ?」

「流石に鋭いですねぇ。えぇ、4つの支部の一つ……ロシア支部と連絡がとれなくなったのですよぉ。」

「なるほどな。話は読めた、テメェらはそれにロシアンマフィアが絡んでんじゃねぇかって睨んでるわけだ。」

 エリーの言葉に眼の吸血鬼は一つ頷いた。

「そういうことです。それで、今の話を聞いてもらった上で一つ相談があるのですがぁ~。良ければ、この際手を組みませんかぁ?利害も一致していますし、悪い話じゃないと思うんですがねぇ。」

 眼の吸血鬼のその提案に、エリーは一瞬間をおいて首を縦に振った。

「別にいいぜ。こっちにしても悪い話じゃねぇからな。」

「賢明な判断です、素晴らしいですねぇ。」

「ケッ、今回はたまたま利害が一致してたってだけだ。」

「それでは……今後お互いに情報共有するためにコレを使いましょうかぁ。」

 エリーへとむかって眼の吸血鬼が手を翳すと、彼女の手の甲にギョロリと不気味な眼が現れた。

「またコレつけんのかよ。」

「もちろん普段は閉じておきますよぉ。それにこの1件が片付いたら回収もしっかりとしますからご安心を。」

「ん、わかった。」

「もしそちらから何か連絡があれば、眼に触れて頂ければ開きますのでぇ。」

 試しにエリーが眼のあった手の甲に触れてみると、再びギョロリと瞼が開いた。そしてそこから声が聞こえてくる。

『それでは、また何か情報があればこれを通して共有しまょうねぇ。』

「ずいぶん万能なもんだな。」

 チラリとエリーが先程まで眼の吸血鬼が立っていた場所に目を向けると、既にそこに眼の吸血鬼はいなかった。

『それではまたよろしくお願いしますよぉ。』

 その言葉を最後に、エリーの手の甲の眼は閉じる。

「……吸血鬼の世界も色々あんだな。」

 そしてエリーはその場から離脱し、今回得た情報をラボへと持ち帰るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

処理中です...