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二節 開花
4-2-6
しおりを挟むロシアンマフィア達が車で去っていき、ある程度の情報収集を終えたエリーが現場から離脱しようとしたとき……彼女は背後からねっとりとした視線を感じた。
「はぁ、な~んでこんなとこでまたテメェと鉢合うんだよ。」
「偶然……いえ、これは必然だったのでしょうかねぇ~。」
暗闇からゆらりと姿を現したのは眼の吸血鬼。
「ロシアンマフィアに変な薬流したのはテメェらか?」
「いいえ~、違います。」
「だが、あいつ等の仲間にゃ明らかに人間離れしてるやつがいたぜ?それこそ吸血鬼に近ぇヤツだった。」
「その調査に私も赴いているというわけですよぉ~。」
「ヴラドの野郎がとっととロシアンマフィアを壊滅させりゃ、アタシが動かなくてもいいんだがなぁ~。」
「残念ながら、ヴラド公は海外出張中ですねぇ~。」
「海外出張ね。なに企んでんだか。」
エリーはポケットから煙草を取り出すと、口に咥えて火をつけた。
「この際ですし、あなたに少し私達のことをお話しておきましょうかぁ~。」
「あん?」
すると、眼の吸血鬼は話し始める。
「この世界には4箇所……私達吸血鬼の支部があるんですがぁ。一つはご存知、この国日本……続いてアメリカ、フランスときて最後にロシアにもあるんです。」
「とっくに海外進出してたのかよ。その割に戦地じゃ見なかったな。」
「まぁ、海外の支部は主に研究に力を置いていますから。実働部隊が私達みたいなものなんですよぉ~。」
「ほぉん……で?そんな話をするからにゃ何かあんだろ?」
「流石に鋭いですねぇ。えぇ、4つの支部の一つ……ロシア支部と連絡がとれなくなったのですよぉ。」
「なるほどな。話は読めた、テメェらはそれにロシアンマフィアが絡んでんじゃねぇかって睨んでるわけだ。」
エリーの言葉に眼の吸血鬼は一つ頷いた。
「そういうことです。それで、今の話を聞いてもらった上で一つ相談があるのですがぁ~。良ければ、この際手を組みませんかぁ?利害も一致していますし、悪い話じゃないと思うんですがねぇ。」
眼の吸血鬼のその提案に、エリーは一瞬間をおいて首を縦に振った。
「別にいいぜ。こっちにしても悪い話じゃねぇからな。」
「賢明な判断です、素晴らしいですねぇ。」
「ケッ、今回はたまたま利害が一致してたってだけだ。」
「それでは……今後お互いに情報共有するためにコレを使いましょうかぁ。」
エリーへとむかって眼の吸血鬼が手を翳すと、彼女の手の甲にギョロリと不気味な眼が現れた。
「またコレつけんのかよ。」
「もちろん普段は閉じておきますよぉ。それにこの1件が片付いたら回収もしっかりとしますからご安心を。」
「ん、わかった。」
「もしそちらから何か連絡があれば、眼に触れて頂ければ開きますのでぇ。」
試しにエリーが眼のあった手の甲に触れてみると、再びギョロリと瞼が開いた。そしてそこから声が聞こえてくる。
『それでは、また何か情報があればこれを通して共有しまょうねぇ。』
「ずいぶん万能なもんだな。」
チラリとエリーが先程まで眼の吸血鬼が立っていた場所に目を向けると、既にそこに眼の吸血鬼はいなかった。
『それではまたよろしくお願いしますよぉ。』
その言葉を最後に、エリーの手の甲の眼は閉じる。
「……吸血鬼の世界も色々あんだな。」
そしてエリーはその場から離脱し、今回得た情報をラボへと持ち帰るのだった。
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