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第四章 一節 人と吸血鬼と
4-1-8
しおりを挟む「はぁ……はぁ……これで最後だッ!!」
最後の一人の被験者へエリーはブレードを突き刺した。そして息を切らしながらメイに声を掛ける。
「メイ、タイムリミットは……後何分だ?」
「後一時間ジャストね。」
「こっから脱出してギリか。走んぞ!!」
そして三人は走って脱出を始めた。メイの端末に登録した車のGPSを目指して樹海の中をひた走る。
「ホントにこっちで合ってんだな!?」
「えぇ!!このまま真っ直ぐよ!!」
時間も忘れて走り続けると、やっと検問所が見えてきた。
「はぁ、はぁっ……やっと着きやがったぜ。バリー、運転頼んだ。」
「あいよ!!」
車に乗り込み、バリーがエンジンをかけた。その瞬間……エリーの背筋に悪寒が走る。
「っ!!伏せろバリー!!」
エリーがバリーの頭を鷲掴みにして無理矢理頭を下げさせると、その次の刹那防弾仕様のフロントガラスを何かが突き破り、運転席に突き刺さる。
「な、なんだァ!?」
「一筋縄じゃ逃がしてくれねぇってか。」
エリーの眼前には、検問所のライトに照らされた一人の男が立っていた。
「よぉ、久しぶりだな。黒井。」
「経験の勘は信じるものだな。本部強襲に合わせてお前達も動いていたか。」
黒井とエリーが顔を合わせると、先程車を貫いた触手がズルズルと黒井の体へと戻っていく。
「テメェ、その触手みてぇなやつは……一ノ瀬と同じやつか?」
「一ノ瀬くんに会ったのか?」
「あぁ、随分可哀想な姿に変わっちまってやがったぜ。」
「そうか、たがまぁ彼女の犠牲があって俺にはこの力が宿った。大きな力には犠牲がつきものとはよく言うだろう……彼女もこの力の犠牲になったのだ。」
「ハッ、くだらねぇ……。テメェらはホントにくだらねぇよ。」
エリーは右手に再びパイルバンカーを装着する。
「何が犠牲だ馬鹿野郎。テメェらのやってることは単なる人殺しと変わらねぇよ。」
「それをお前が言うのか?傭兵エリー。」
「まとめてんじゃねぇぜ。テメェらほどアタシは腐ってねぇ!!」
その言葉と同時にエリーは腰からハンドガンを引き抜くと、黒井へと向かって速射する。弾丸は正確無比に黒井の眼球へと目掛けて飛んでいくが、目前で黒井から生えた触手に叩き落されてしまう。
「流石の腕前だな。」
ポツリとそう呟く黒井の懐には既に銃を捨て、銀色のブレードを握っているエリーがいた。
「褒められても嬉しかねぇよ!!」
そしてエリーは、心臓目掛けてブレードを突き立てようとする。しかし、すぐに触手がその行く手を阻んだ。
「読めているぞ。」
「あぁ、そうかよ。」
エリーはブレードが触手に突き刺さる寸前で体を極端に屈ませる。その体勢から黒井の両足の腱を切り裂いた。
「なっ!?」
ガクリと崩れる黒井の心臓にエリーはパイルバンカーを密着させる。
「読めたのはテメェが死ぬ未来か?」
冷徹にエリーは黒井を見下しながらパイルバンカーのトリガーを引いた。すると、銀の杭が黒井の心臓を穿った。
「ガハァッ!!」
それとほぼ同時、大量に吐血する黒井。絶命する一撃を受けたはずの彼だが、杭に貫かれたままギロリと背後にいるエリーへと鋭い眼光を向ける。
「残念だったな、俺の弱点は…………あ?」
そして体から触手を伸ばしエリーを貫こうとした黒井だったが、突如として視界が下へと落ちていく。
「弱点がどうしたって?」
エリーのその言葉を聞きながら、黒井の視界は地面まで落ちる。そこでやっと、黒井は自分の首と胴体が寸断されていたことに気が付いた。
「ばか…な。」
「確か政府は吸血鬼の処理を決定したって一ノ瀬が言ってたよなぁ?」
そう言ってエリーは、銀のブレードの剣先を黒井へと向ける。
「待…て!!」
「ならテメェはここで処理しとかねぇとなぁ!!」
そしてエリーは黒井の頭部を真っ二つに切り裂いた。
ブレードに付着した血液を振り払うと、エリーは口に煙草を咥え、車の陰に身を隠していた二人の元へ歩み寄る。
「エンジンはイカれてねぇだろ?さっさと帰ろうぜ。」
「お、おう!!」
エリー達が車に乗り込み、走り出すと同時に背後で大きな爆発が起こった。
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