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第四章 一節 人と吸血鬼と
4-1-7
しおりを挟む地下へ地下へと突き進み、最深部へとたどり着くとそこには巨大なスーパーコンピューターが鎮座していた。
「これがブレインね。」
「ちょっとメイはそこで待ってな。」
先にエリーが付近に罠がないか確認すると、メイとバリーの二人にオーケーサインを出した。
「大丈夫だ。」
「オッケー、それじゃあここからは私の仕事ね!」
「任せたぜメイ。バリー、アタシらは後続の警戒だ。」
「了解。」
そして二人が警戒している間に、メイは持参したUSBメモリーをブレインに突き刺した。
「よし、後はこれを……。」
USBの中に保存されていたハッキングウイルスを起動すると、すさまじい勢いで様々な権限が塗り替えられていく。
「さすがにこの規模のコンピューターってなるとプロテクトも厳重ね。でも……これぐらいは想定内よ。」
ウイルスをブロックするためのプログラムを、メイは手動で無力化していく。
「あともう少し……。」
メイが向き合っている最中、エリーの耳が下に降りてくる足音を捉える。
「バリー、構えな。お客さんだぜ。」
「おぅよ。」
降りてくる階段へと銃口を向ける二人。すると近くまで来ていた足音がぴたりと止まった。それと同時に、ピン……という甲高い音とともに階段からグレネードが投げ込まれる。
「っ!!グレかよっ!!」
「ビビんなバリー!!」
転がってきたグレネードに一瞬固まってしまうバリーだが、エリーは構わずグレネードへと向かって走ると、爆発する直前のそれを投げてきた者たちへと蹴り返した。
勢いよく階段の方へと蹴り返されたグレネードは、壁に反射して爆発する。
「ハッ、これで一網打尽だろ。」
「エリー、お前どんだけ肝が据わってんだよ。普通グレネードに向かって行くなんて無理だぜ?」
「グレネードで吹き飛ぶのは運の悪ぃやつと、ビビったやつだ。あと二秒待ってから投げりゃあ良かったのによ。」
けらけらとエリーは嘲るように笑う。そんな彼女にバリーはドン引きしていた。そんな二人にメイが声をかける。
「二人とも、こっちもオッケーよ。」
「もう終わったのか?」
「えぇ、記録は跡形もなく消したわ。それとちょうどいいプログラムがあったから、それも利用させてもらうことにしたわ。」
そしてニヤリと笑ってメイはスマートフォンを取り出すと、そこには何かのタイマーが設定されていた。
「おいおい、そいつはまさか……。」
「この施設の自爆プログラム起動までのタイマーよ♪さ、早く逃げましょ?」
「まったく、派手なことしてくれるぜ!!」
メイの起動させた自爆プログラムのタイマーがゼロになる前に、三人は急いで研究施設からの離脱を始める。
しかし三人が入口にある牢獄のような場所にたどり着くと、そこで事件が発生した。
「っ!!おいおい、どうなってんだこりゃあ。」
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「もしかして施設のシステムを消去しちゃったから……かも?」
「しゃあねぇ、最速で片付けるしかねぇな。」
エリーは両手に銀のブレードを装備すると、一人先頭に立って歩いていく。
「テメェらに恨みはなかったが……悪ぃな。」
そしてエリーは障害になる彼らの排除を始めたのだった。
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