腐りかけの果実

しゃむしぇる

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第四章 一節 人と吸血鬼と

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 ヴラドが去ってからすぐに、メイの端末に情報をまとめたファイルが届く。

「エリー、これ……。」

「あぁ、なんでかわかんねぇが……お袋の気まぐれで吸血鬼どもに協力することになっちまった。そいつはその依頼の情報だ。」

「日時は明々後日、時間は夜22時……。場所は!?」

 驚き戸惑うメイにエリーは首を傾げた。

「その青木なんたらってどこのことだ?聞いたことねぇぜ。」

「山梨県にある富士の樹海のことよ。たしか数年前に立入禁止になってたはず……。」

 富士の樹海という言葉にピンと来た様子のエリーは口を開く。

「富士の樹海って言やぁ、よく行方不明になる……とかそういう噂のある場所だろ?」

「えぇ、こんなところにいったい何があるっていうの?」

「な~んか、政府の奴らの実験施設があるらしいぜ。そこを跡形もなく破壊すんのがアタシへの依頼ってことらしい。」

 煙草を取り出し、火をつけて吹かしながらエリーは言った。

「だが、今回ばっかりはメイ。お前の力も必要だ。」

「私?」

「あぁ、今回の依頼……ただ破壊するだけが依頼じゃねぇ。研究記録も何もかも全部消さねぇといけねぇんだ。」

「なるほどね、確かにそういうことなら……私も一緒に行かないといけないわね。でも、私戦闘はからっきしだけど、大丈夫かしら?」

「問題ねぇ。死ぬ気でアタシが守ってやるさ。メイは大船に乗ったつもりでいりゃあいい。」

「ふふふ、それもそうね。それじゃあちゃんと私のことは守ってね?」

「誰が王子様だよ。」

 そうして二人が笑いあっていると、そこにリースがやってきた。

「仲がいいようで何よりだね二人とも?」

「あ、リースさん!」

「話は聞いたよ、そういうことならバリーも一緒に連れていくといい。」

「バリーのやつも?こっちとしちゃあ、ありがてぇが……お袋は大丈夫なのかよ?」

「あらあら、だ~れの心配してるのかな?一応これでもここに居る誰よりも強い自信あるんだけどなぁ~。」

 にやにやと薄ら笑みを浮かべながらリースは言う。

「けっ、言ってろい。すぐに追い越してやるよ。」

「あはは何十年後になるかな~?ま、楽しみにしとくよエリー?」

 くつくつと笑うリースの背後にバリーが現れた。

「それじゃあそういうことだから。バリー、メイちゃんのことは頼んだよ?」

「了解しました姉さん。」

 そして現れたバリーに向かってエリーは問いかける。

「なまってねぇだろうなぁバリー?」

「この前のみたいな不覚は取らないさ。エリーは知らないだろうが、あの後姉さんにみっちりしごかれたんだからな?」

「はっ、お袋にしごかれたんなら安心だな。」

 エリーはそれが一体どういうことなのかを理解しているため、苦笑いすると同時に少し安心する。

「ほんじゃま、頼むわバリー。」

「おぅ、任せろ!!とは言っても、化け物と戦うのはエリーの任せるぞ?俺はそっちは専門外だからな。」

「あんだよ、そっちも手伝ってくれりゃあもっと助かんのによ。」

「そいつは冗談きついぜエリー。」

 そして三人はヴラドたちの作戦決行日まで、綿密なブリーフィングを行い当日に備えるのだった。 
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