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第四章 一節 人と吸血鬼と
4-1-3
しおりを挟むヴラドが去ってからすぐに、メイの端末に情報をまとめたファイルが届く。
「エリー、これ……。」
「あぁ、なんでかわかんねぇが……お袋の気まぐれで吸血鬼どもに協力することになっちまった。そいつはその依頼の情報だ。」
「日時は明々後日、時間は夜22時……。場所は青木ヶ原樹海!?」
驚き戸惑うメイにエリーは首を傾げた。
「その青木なんたらってどこのことだ?聞いたことねぇぜ。」
「山梨県にある富士の樹海のことよ。たしか数年前に立入禁止になってたはず……。」
富士の樹海という言葉にピンと来た様子のエリーは口を開く。
「富士の樹海って言やぁ、よく行方不明になる……とかそういう噂のある場所だろ?」
「えぇ、こんなところにいったい何があるっていうの?」
「な~んか、政府の奴らの実験施設があるらしいぜ。そこを跡形もなく破壊すんのがアタシへの依頼ってことらしい。」
煙草を取り出し、火をつけて吹かしながらエリーは言った。
「だが、今回ばっかりはメイ。お前の力も必要だ。」
「私?」
「あぁ、今回の依頼……ただ破壊するだけが依頼じゃねぇ。研究記録も何もかも全部消さねぇといけねぇんだ。」
「なるほどね、確かにそういうことなら……私も一緒に行かないといけないわね。でも、私戦闘はからっきしだけど、大丈夫かしら?」
「問題ねぇ。死ぬ気でアタシが守ってやるさ。メイは大船に乗ったつもりでいりゃあいい。」
「ふふふ、それもそうね。それじゃあちゃんと私のことは守ってね王子様?」
「誰が王子様だよ。」
そうして二人が笑いあっていると、そこにリースがやってきた。
「仲がいいようで何よりだね二人とも?」
「あ、リースさん!」
「話は聞いたよ、そういうことならバリーも一緒に連れていくといい。」
「バリーのやつも?こっちとしちゃあ、ありがてぇが……お袋は大丈夫なのかよ?」
「あらあら、だ~れの心配してるのかな?一応これでもここに居る誰よりも強い自信あるんだけどなぁ~。」
にやにやと薄ら笑みを浮かべながらリースは言う。
「けっ、言ってろい。すぐに追い越してやるよ。」
「あはは何十年後になるかな~?ま、楽しみにしとくよエリー?」
くつくつと笑うリースの背後にバリーが現れた。
「それじゃあそういうことだから。バリー、メイちゃんのことは頼んだよ?」
「了解しました姉さん。」
そして現れたバリーに向かってエリーは問いかける。
「なまってねぇだろうなぁバリー?」
「この前のみたいな不覚は取らないさ。エリーは知らないだろうが、あの後姉さんにみっちりしごかれたんだからな?」
「はっ、お袋にしごかれたんなら安心だな。」
エリーはそれが一体どういうことなのかを理解しているため、苦笑いすると同時に少し安心する。
「ほんじゃま、頼むわバリー。」
「おぅ、任せろ!!とは言っても、化け物と戦うのはエリーの任せるぞ?俺はそっちは専門外だからな。」
「あんだよ、そっちも手伝ってくれりゃあもっと助かんのによ。」
「そいつは冗談きついぜエリー。」
そして三人はヴラドたちの作戦決行日まで、綿密なブリーフィングを行い当日に備えるのだった。
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