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二節 対吸血鬼専門部隊
3ー2-12
しおりを挟むビル全体を揺るがすような轟音とともに、銀の杭が坂本の心臓を穿った。
しかし、エリーはすぐにパイルバンカーを引き抜くと、今度は坂本の額に標準を合わせた。
「あばよ。」
そして今一度轟音が響くと、坂本の頭が弾け飛んだ。
ビリビリと反動で痺れる腕をダランと垂らすエリーに、ヴラドが拍手を送る。
「素晴らしい、我輩との戦闘で得た知識をよく活かしている。抜かりのない攻撃だった。」
「へ~へ~、そりゃどうも。」
スタスタとエリーはヴラドに歩み寄ると、未だ反動の残る腕でパイルバンカーを持ち上げ、ヴラドの心臓へと向けた。
「いつかはテメェにもぶっ込んでやるよ。」
「クク、それは楽しみだ。だが、少なくとも……今がその時ではなさそうだな。」
ヴラドがそう言うと同時に、エリーのパイルバンカーの銀の杭がポロリと抜け落ちた。
「げっ……。」
「改良をした結果、2発が今のところの限界か。まぁあれだけの威力を人間が携帯できる武器で発揮できるのであれば、破格の性能だ。」
クツクツとヴラドは笑うと、坂本の死体を持ち上げた。
「さて、コイツは我輩がもらっていこう。」
「そんな死体何に使うんだよ。」
「決まっている、研究だ。」
「ハッ、研究ねぇ……それ、やってること政府の奴らと変わんねぇぜ?」
「そんなことは百も承知。だが、必要なことだ。」
「…………勝手にしろよ。」
そして二人が廃ビルから出ると、そこには対吸血鬼専門部隊と思わしき一団が二人を待ち構えていた。
「はぁ~、随分な歓迎だぜ。もうこっちはクタクタだってのによ。」
「クク、歓迎ならば受けるまでのこと。」
担いでいた坂本の死体を地面に下ろすと、ヴラドは坂本の血を使って槍を作り出した。
「こういうのはよ、ありがた迷惑ってもんだぜ。」
エリーは壊れたパイルバンカーの入ったアタッシュケースを地面に置くと、腰からハンドガンを二丁抜いた。
「さっきみてぇな気配はねぇ。コイツらは全員人間だろ?」
「恐らくはな。」
「ほんじゃパッパと片付けちまうか。」
そして戦いの火蓋が切り落とされる寸前……目前の一団の足元に巨大な眼が現れた。
「ん、あれは……。」
「どうやら我々にも援軍のようだ。」
その足元の眼が一つ瞬きをすると同時、一団はまるで風船のように膨らみ、体の内側から破裂してしまった。
「グロすぎだろ。」
「クク、待ったか?」
ヴラドがそうポツリとこぼすと、血溜まりの中から眼の吸血鬼がゆっくりと姿を現した。
「待ちましたよぉ、ヴラド公~。まぁ、目標が達成できたのならいいんですがぁ~。」
パチャパチャと血溜まりを歩いてくる眼の吸血鬼は、エリーの姿を捉えると、薄ら笑みを浮かべた。
「おやおやぁ~。本当に縁がありますねぇ~。まさか本当に今一度お会いできるとはぁ~。」
「こっちは会いたくなかったっての。」
「まぁ~そう言わず。ヴラド公とも仲良くやられているようじゃないですかぁ~?」
「武器があったら今すぐにでも殺してやるっつうの。」
「クク、吠えろ吠えろ。」
エリーの強がりをヴラドは嘲笑う。そんなやり取りを眺めていた眼の吸血鬼は一つため息を吐くと、口を開く。
「さぁヴラド公~帰りますよぉ~。やることはまだまだ山積みなんですからぁ~。」
「うむ。」
眼の吸血鬼はヴラドと自分の足元に眼を出現させると、ゆっくりと体を沈ませていく。
「傭兵エリー、またどこかで会おう。」
「二度とゴメンだぜ。」
そうヴラドに辛口で言い放つと、二人はエリーの前から消えた。
「……アタシも帰るか。」
メイに無線で帰ることを告げ、エリーはラボへと引き返すのだった。
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