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二節 対吸血鬼専門部隊
3ー2-11
しおりを挟む「はっ、はっ……全部やったか?」
肩で息をしながらエリーは仰向けに地面に転がった。その横で、汗一つかくこともなく、息も切らしていないヴラドがエリーへと向けて言った。
「ここに蔓延っていた気配は全て消えた。これで打ち止めのようだ。」
「あ゛~……流石に疲れたぜ。」
血濡れたブレードを床に落とし、エリーは胸元からタバコを一本取り出して火をつける。
「ふぅ~、で?結局コイツらは何なんだよ。」
エリーはそこかしこに転がっている、先程ヴラドが人造吸血鬼と呼んでいた者たちへと目を向けて問いかける。
「お前も我々の弱点がここにあることは知っているな?」
ヴラドはトントンと自分の心臓の位置を指差す。
「あぁ、テメェらが再生したりするときに使う変な臓器のことだろ?」
「うむ、簡潔に核と我々は呼んでいる。この核の一部分をこのように……。」
ヴラドは転がっていた一体の死体を鷲掴みにすると、服を切り裂いて背中を丸出しにした。
すると、その背中には何やら歪な移植手術の痕がくっきりと残っている。
「人間に無理矢理移植してできた者……それがこの者らだ。」
「ハッ、政府の研究者共の考えることはわかんねぇな。こんな理性もねぇ、使い物にならねぇ化け物を作ってどうすんだか……。」
「補足しておくが、この者らは失敗作だ。にわかには信じられんが、成功例もいると……………む。」
ヴラドが何かを感じ取ると同時、エリーも不穏な気配を感じ取る。
「おいおい、さっき打ち止めとか言ってなかったかぁ?」
「どうやら我輩らが死んだかどうか……その確認に来たようだな。」
二人が気配のする階段へと視線を向けていると、そこからエリーが知っている人物が現れた。
「失敗作は全滅、作戦は失敗だ。」
「テメェは……確か坂本だったか?」
現れたのは初回のブリーフィングの際に、エリーを襲おうとして返り討ちにあった坂本。
「名前もうろ覚えか、流石汚い傭兵は育ちも悪い分、頭も悪いんだなぁ?」
「言ってくれるじゃねぇか、アタシにボコボコにされたくせによ。」
エリーの言葉に坂本の額に青筋が浮かぶ。
「口を慎めよ、俺はもう前とは違う。」
そう言って坂本は何やらペットボトルに入った赤い液体を、グビグビと飲み始める。
そしてそれをすべて飲み干すと、彼の背中から真っ赤で歪な翼が飛び出したのだ。
「俺は人間を……超越したんだ!!」
高らかにそう言った坂本に対して、エリーはケラケラと笑いながら言い返す。
「テメェもここに転がってる奴らと変わんねぇだろ。所詮は政府のモルモットだぜ。」
「ほざけッ!!」
更に神経を逆撫でするエリーの言葉に、激昂した坂本は背中の翼を広げると、そこから高速で何かを発射する。
「いよっと!」
それに対してエリーは近くにあった柱に身を隠すことで被弾を避けた。
一方でヴラドは飛んでくる何かを全て槍で弾き落としていた。
「なるほど、肉体変化と放射……二つの核を体に移植したか。」
「余裕こいてんじゃ……ねェッ!!」
ヴラドへと向かって坂本は自分の腕を剣のような形へと変え、襲いかかる。
「オラよ!!」
「ふむ。」
坂本が剣のように変化した腕を振り下ろすと、そこから赤い斬撃が放たれるという二段攻撃。
それとともに放たれる翼からの発射物……。三段にも重なったその坂本の猛攻をヴラドは涼しい顔で凌いでいる。
「なるほど、貴様が傭兵エリーに蹴散らされたというのも頷ける。」
「アァッ!?」
「確かに攻撃は強力で多彩であるが……視野が狭い。」
ヴラドがそう言った直後、坂本の背後にエリーはスッと回り込むと、パイルバンカーを構えた。
「あんとき言ったよな?次はねぇってよ。」
「なっ……。」
そして坂本の心臓へと目掛けて、パイルバンカーの銀の杭が放たれるのだった。
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