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二節 対吸血鬼専門部隊
3-2-10
しおりを挟むヴラドに引きずられ、廃ビルの中へと足を踏み入れることになったエリー。
「離せってぇのッ!!」
強引にヴラドの手から逃れたエリーは、乱れた服を整えながら彼のことを睨みつけた。
「テメェ、この前はよくも会計をアタシに押し付けやがったなぁ?」
「クハハッ!!有益な情報を教えてやったのだ、その駄賃を頂いたまで。」
「ぜってぇあん時のツケは払わしてやるからな!!」
と、エリーが今にもヴラドにかみつきそうになる、険悪な雰囲気のまま廃ビルを登っていくと、三階に到達した瞬間、雰囲気が一気に変わったことをエリーは肌で感じた。
「雰囲気が変わりやがった。」
「うむ、どうやらここで我らのことを待ち構えているようだ。」
ヴラドは服のポケットから赤い液体の入った瓶を取り出すと、それを砕いた。そして零れた液体から赤い槍を作り出した。
「ったく、何がどうなってやがるんだ。」
状況を呑み込めないまま、エリーも右手にパイルバンカーを装着する。
「我輩の心臓をうがったその兵器……前回とは少し形が違うな?」
「テメェの弱点を残らずぶっ潰せるように改良したんだよ。」
エリーはパールバンカーの矛先をヴラドの頭のほうへとむける。
「次ぃ、殺しあうときはその頭もぶち抜いてやっからな。」
「クク、楽しみにしておこう。」
そんな会話をしていると、二人の横にあった壁にビキリとひびが入る。
「ッ!!」
咄嗟にエリーとヴラドは各々バックステップで下がると、その次の瞬間壁が突き破られ、そこから人影がゆらりと現れた。
「ぐぅぅぅぅぅ……。」
「なんだコイツ。」
明らかに正気を失っているその男はエリーをその瞳にとらえると、ビキビキと腕を刃物のような形状に変化させて彼女へと襲い掛かってくる。
「がぁっ!!」
「ちっ。」
薙ぎ払われたその攻撃を屈んで躱すと、左手に装備していたブレードで男の足を切り裂いた。
「グガァッ!!」
足の腱を切り裂かれた男は血を溢れさせながら膝をつく。その隙にエリーはすぐさま男にとどめを刺しにかかるが、エリーがとどめを刺そうとした刹那男の血がバチバチと電気を発し始めたのだ。
「なんっ……だ!?」
危険を感じたエリーは即座にバックステップを踏む。そんな彼女へと向かって勝手に蠢きだした血液が電気を纏いながら放たれる。
「チッ!!」
一瞬の判断でエリーは持っていたブレードをそれにぶつけて相殺した。
「二つの能力……こいつただの吸血鬼じゃねぇのか?」
冷静に分析するエリー。そんな彼女へと再び襲い掛かろうとする男……。しかし、そんな男の心臓を赤い槍が貫いた。
「正確にはこいつは吸血鬼ではない。」
そう言ってヴラドは一瞬で男の全身を槍で貫いた。すると力なく男は地面に倒れ伏した。
「人間に体をいじくりまわされた挙句、ここに捨てられた……モルモットだ。」
「吸血鬼じゃねぇっていう割にはテメェらと同じ能力使ってやがったが?」
「言い方が少し悪かったな。こいつらは言わば……人間によって人為的に作られた人造吸血鬼だ。」
そう説明していると、二人のもとへたくさんの足音が近づいてくる。
「おっと、悠長に話している時間はなさそうだ。」
「チッ、後でちゃんと説明しやがれよ。」
エリーは武器を拾いなおして再び構えると、二人のもとへ大量の人造吸血鬼がなだれ込んできたのだった。
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